2025/12/22
防水性能の頂点:深海探査機と化した、極限のダイバーズウォッチ
「300m防水で十分」と思うのはまだ早い。豪利時(オリス)が放ったこの1本を見れば、あなたは「人間は果たして海へ潜るのか、それとも地殻の奥深くへ向かうつもりなのか」と錯覚してしまうだろう。その防水性能は、公称4000メートル(400bar)。オフィスとカフェを往復する日常からすれば、これは明らかに「性能過剰」の域。しかし、 именно その「必要以上の余力」こそが、機械式時計の真の魅力なのではないでしょうか。
4000m防水とは何か?
豪利時は1904年にスイス・ヘアシュタインで創業した、典型的な独立系時計メーカーです。近年の主力である「アクイス」シリーズは、現代的なダイバーとしての基本スペック(セラミックベゼル、300m防水など)をしっかり押さえています。
しかし、今回ご紹介する 「アクイス・プロ 4000m」 は、その概念を遥かに超えた存在です。これは単なるスポーツウォッチではなく、「深海探査機」として設計された、同ブランド史上最強の防水性能を持つ機械式時計なのです。
外観:過剰なまでの「合理性」
この時計のサイズは、まさに圧巻です。
サイズ: 直径約49.5mm × 厚さ約23.4mm
重量: 195g
49.5mmという巨大なケースと4000m防水という極限の強度を両立させるため、ケース素材にはチタン合金が採用されています。強度が高く、耐食性に優れ、何よりステンレスよりも軽量という特性が、この大型ウォッチに唯一合理的な選択肢です。
1. ベゼル:RSSシステム
外観の特徴は、青いセラミックインサートを備えたベゼル。その外側を囲む黒いゴム状の部分は、「RSS(ローティング・セイフティ・システム)」と呼ばれる操作部です。
動作原理: 回転させる前に、まずこのゴム部分を「上に引き上げる」必要があります。これによりベゼルがロック解除され、回転可能になります。
目的: 専門的な潜水作業中に、意図せずベゼルを触れてしまう(誤作動)ことを防ぐための、極めて合理的な機構です。
2. 文字盤:ブルー・グラデーション
文字盤は青みがかったグラデーションを採用し、波模様のテクスチャーが施されています。これはまさに「深海」を象徴する配色。
視認性: 太陽光が届かない深海でも読めるよう、大型の棒状インデックスと太い針には、たっぷりとルミネッセンス(発光材)が充填されています。
外周: 分刻みのスケールがくっきりと刻まれ、正確な計時が可能です。
3. 機能配置
3時位置: ロック式リューズ(プロテクタ付き)。
9時位置: ヘリウムエスケープバルブ(ヘリウム排出弁)。
4. ブレスレット
専用の青いラバーベルトはケースと一体化した流線型デザイン。チタン製のフォールディングバックル(折り畳み式バックル)には、ダイビング用の延長機構が標準装備されています。これにより、厚手のダイビングスーツの上からでも簡単に着脱・調整が可能です。
機械式時計:Cal. 400
裏蓋は、強度と防水性を重視したシールドバック(密底)。23mmを超える厚みを持つケースと相まって、外部からの衝撃や水圧を完全にシャットアウトします。
しかし、その中身は非常に近代的な自社製ムーブメントです。
表格
項目
詳細
型番
Calibre 400
構造
自動巻き(オートマチック)
振動数
28,800振動/時間(4Hz)
動力
120時間(5日間)
耐磁性
シリコン製エスケープフォーク採用
Cal. 400 は、オリスが長年培った技術の結晶です。シリコン製部品や非磁性素材を多用しているため、耐磁性能は伝統的な時計をはるかに凌ぎます。
編集部のひとこと
正直な話、人間がダイビングで到達できる深度は、この4000mという数字よりもはるかに浅いものです。
しかし、エンジニアリングの世界にはこのような考え方があります。
「専門的なダイバーズウォッチを作るのならば、その使用シーンをはるかに超えた、ケースの強度と防水の信頼性を追求すべきだ。」
これが Oris Aquis Pro 4000m が伝えるメッセージです。
税抜価格は 47,500円。独立系ブランドがダイバーの分野でどこまで極限に迫れるかを示した、まさに「リアリティ」の結晶。もし今、あなたが「頼れる相棒」を探しているのなら、この深海の巨匠は、間違いなくその名乗りを上げる資格があります。