2025年08月

タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ × ポルシェ963限定モデルが登場

腕時計とクルマはピーナッツバター&ジェリーのようなもの(編注;つまりアメリカ人の国民食であるピーナッツバター&ジェリーのように、アメリカ人にとって切っても切れない関係にあるもの)です。どちらがどちらかはあなたが決めてください。私の比喩とこの特別なサンドイッチの目的のために言うと、タグ・ホイヤーがピーナッツバターであるとすると、対するジェリーは、スポーツカーレース史上最も象徴的な名前のひとつであるポルシェです。両ブランドが独立して同じ自動車レース、カレラ・パナメリカーナにインスピレーションを受けていることを考えれば、驚くことではありません。この象徴的なデュオを祝うために両者がコラボレーションし、自動車メーカーの耐久レースの成功とポルシェ 963における“卓越性のあくなき追求”を記念する、シリアルナンバー入りリミテッドエディションのカレラ クロノグラフを提供することになりました。

タグ・ホイヤースーパーコピーカレラ クロノグラフ × ポルシェ963は、ポルシェのレーシングカーから多くのヒントを得たカレラコレクションの大胆なアレンジです。鍛造カーボンファイバー製のベゼルが夜光塗料を施したスケルトンダイヤルを囲んでおり、ル・マンといった有名な耐久レースの昼夜を想起させます。ダイヤル形状はポルシェのレーシングカーのチューブ構造を模しており、その下にある内部構造を垣間見ることができます。タグはさらにクロノグラフのインダイヤルにもスーパールミノバインデックスを配置。それは963の走行用ライトと同じく、4つの角度が付いたフォーメーションとしています。

内部には、かつてホイヤー02ムーブメントとして知られていたタグ・ホイヤー最新Cal.TH20-00を搭載。同ムーブメントは最新世代のグラスボックスカレラやモナコにも見られます。(なお名称の更新だけでなく、素材面でも改善されており)改良されたムーブメントは両方向に巻き上げることができ、H02の片方向巻き上げよりも効率的かつ静かです。また、タグは保証期間を従来の2年から5年へと大幅に延長すると発表。タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ × ポルシェ963の価格は115万5000円(税込)に設定されており、当然ながら生産数はわずか963本に限定されています。

我々の考え
間違いなく、これはレーシングカーにインスパイアされた時計です。タグ・ホイヤーは明確なアイデンティティを持つ、ひと目でそれとわかる時計を顧客が求めていることを理解しており、カレラ クロノグラフ × ポルシェ963はその正体を明確にしています。ディテールも考慮されており、保守的な基準からすると少々大げさかもしれませんが、裏蓋に小さな刻印がある以外に記念モデルの痕跡を残さないという非常に思慮深いものとなっています。さらに4時位置を赤く塗ったル・マンのスタート/フィニッシュタイム、ストラップのNACAダクト(レーシングカーのポルシェに採用される低ドラッグのNACAエアインテークのこと)、ステアリングホイール型のローターなどもその好例です。これらの要素はほかの部分よりもやや強調されている感じがあります(これはカーボンファイバーの要素をもじったものです)。それでも、この時計はロケット船のような外観を持つクルマに基づいており、そのデザインコンセプトにふさわしいものでなければなりません。私たちはその忠実なコンセプトを受け入れています。

昼のポルシェ。

そして夜のポルシェ。
ダイヤルの構造は、深い奥行きと開放感を与えます。さまざまなテクスチャーと素材の使用により、視覚的に簡単に区別でき、時刻の読み取りを邪魔することなく多くの興味を抱かせます。スーパールミノバの使用も間違いなく役立っています。44mm径×15.1mm厚と決して小さい時計ではありませんが、ケース、リューズ、プッシャーの側面に施されたエングレービングやPVDコーティングにより視覚的な重量をうまく軽減しています。この大きなフォルムは造形やコントラストを用いることで手っ取り早くスリム化できます。これは車両設計においても一般的な手法です。安全規制や製造上の制約などの大きな力が、特定の形状やサイズを決定する場合に特に有用なのです。

エキゾチックな素材と仕上げの広範な使用に加えて、自社製ムーブメントTH20-00はコラムホイール式クロノグラフに垂直クラッチを採用したことは、技術革新という全体テーマにぴったり合っています。このレベルと価格帯では、これ以下のものはありえません。100万円近くの価格はどの時計にとっても高額ですが、タグ・ホイヤーはホイヤー02の時よりも長い保証を提供し、クロノグラフという基軸となる製品を確実にするための漸進的な改善を行っています。これらすべてがシリアルナンバー入りで提供されるため、タグ・ホイヤー、ポルシェ、そして耐久レースのファンにとって非常に魅力的なものとなるでしょう。


さて、最終的な評価に移ります。タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ × ポルシェ963はカリカリのピーナッツバター&ジェリーサンドイッチです。すべての人に合うわけではありませんが、それを愛する人にはたまらない逸品となるのです。

基本情報
ブランド: タグ・ホイヤー(TAG Heuer)
モデル名: カレラ クロノグラフ × ポルシェ963(Carrera Chronograph × Porsche 963)
型番: CBU2010.FT6267

直径: 44mm
厚さ: 15.1mm
ケース素材: ステンレススティール、ケースサイドにブラックPVD加工
文字盤: NAC仕上げ、管状のオープンワーク
インデックス: ホワイトのスーパールミノバブロック(4時位置のレッドインデックスを除く)
夜光: あり、インデックスおよび時・分インダイヤルにある4個のスーパールミノバ、ベゼルにある“PORSCHE”の文字
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ブラックの一体型ラバーストラップ、サテン仕上げのセンターリンク

タグ・ホイヤーのCal.TH20-00。

プレスリリースによると、4時位置が赤く表示されているのはレーススタートに向けた期待と興奮を示すためです。タコメーターのような雰囲気を感じますね。

ムーブメント情報
キャリバー: TH20-00
機能: 時・分・スモールセコンド、日付表示、クロノグラフ(4分の1秒計、30分計、12時間計)
パワーリザーブ: 約80時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 33
クロノメーター: なし

価格 & 発売時期
価格: 115万5000円(税込)
発売時期: 2024年6月予定
限定: あり、世界限定963本(シリアルナンバー入り)

関連商品:https://www.jpan007.com/brands-category-b-19.html

バンドまでをカラフルに染め上げたカラーバリエーションが一斉に発表されている。

1988年生まれの僕と同世代の人なら、カシオ スタンダードという名前のほうが聞きなじみがあるかもしれない。現在まで続くロングセラーである1987年のMQ-24、1989年のF-91Wをはじめとし、バリューな価格に高い性能を備えたカシオ スタンダードは2021年7月に「カシオ コレクション」と名前を変えた。そして、それ以降積極的にラインナップを拡充してきている。昨今のカタログを見ると、トレンドを汲んだ爽やかなアイスブルーや鮮やかなグリーンダイヤルのアナログモデルもあったり、G-SHOCKを思わせるタフな外装の多機能モデルもあったりと、バリエーションも豊かだ。本日7月16日(火)にもダイヤルにケース、バンドまでをカラフルに染め上げたカラーバリエーションが一斉に発表されている。

そして同じタイミングで、このABL-100もリリースされた。一見すると往年のカシオウォッチのようだが、6時位置には見慣れない“Bluetooth”の文字がある。そう、ABL-100はモバイルリンクを可能にしたモデルなのだ。

デザインを見てみると、1995年に登場したA168の面影が強い。液晶の外周をぐるりと囲むブルー&ホワイトのラインに、各ボタンの機能を示す表示、色こそ変わったが“ILLUMINATOR”や“WATER RESIST”(とWRのアイコン)なども共通している。そのうえでさりげなく、右上にあった“ALARM CHRONO”が“STEP TRACKER”に置き換わっているのも面白い。トノー型のケース形状に変わりはないが、現行のA168と比較するとサイズは横幅が41.6mmと3mm増、縦が37.9mmで1.6mm増、しかし厚さに関しては8.2mmと1.4mmもシェイプされている。モバイルリンクに加えて歩数計測、デュアルタイムと機能的には大きく拡充しつつ、薄型化を実現している点は素晴らしい。オシアナス、G-SHOCKで培われた高密度実装技術の恩恵を受けているように思う。重さも60gと、10gのみの増加にとどまっている。

 歩数表示やBluetoothのアイコンなど表示内容は増えてはいるものの、デジタル数字のフォントやアンバーな液晶は1989年のA159W(そしてカシオのデジタルウォッチにおいてアイコン的な存在であるF-91W)から続く雰囲気を踏襲している。また、ブレスレットのデザインも、1980年代前半のT-1500やCFX-200など当時のメタルモデルによく見られたフラットな多列ブレスを想起させるものになっている。しかも、作りも昔懐かしい巻きブレスだ。総じてルックスはとことんクラシックに寄せられている。

 今回のリリースではシルバーカラーのABL-100WEに加え、全面にゴールドIPが施されたABL-100WEGも用意された。価格はABL-100WEが1万1000円、ABL-100WEGが1万3750円(ともに税込)で、今年8月に発売を予定している。



ファースト・インプレッション
古きよきカシオファンのツボをつく1970〜80年代のデザインを踏まえながら、現代的な機能を搭載。このギャップに僕はすっかりやられてしまった。現在ではG-SHOCKでもほとんどのモデルにも搭載されるようになったモバイルリンク機能だが、まさかカシオ コレクションの見た目でライフログがとれるようになるとは思ってもいなかった。あえてスマートフォンと接続できる新モデルとしてではなく、なじみ深いデザインに同機能を載せたところにカシオの遊び心が感じられる。価格こそカシオ コレクションでは珍しく1万円を超えているが、機能を拡充しながらも極力キープされたケースサイズ、クラシックながら着用感に優れるブレスと、細部に目を向けると値ごろ感さえある。動力がタフソーラーではなく電池式になっている点だけ惜しくはあるが、その結果ダイヤルの質感が変化したり、G-SHOCKのプライスレンジに突入してしまったりするのならこのままでもいいと僕は思う。あくまでこの時計はカシオ コレクションであり、気軽に手が出せる存在であるほうがしっくりとくる。


 昨年、G-SHOCK初代モデルが立体商標を取得したことがニュースになった。G-SHOCKというプロダクトが長い時間をかけて僕たちの生活の一部となった結果だが、ABL-100で採用されたこのフォルムもまた、カシオのデジタルウオッチにおけるスタンダードだと思う。今日では、SNS上でも国境を超えてA168、A159といった名機が愛されている様子が日々アップされている。それだけ認知された存在だからこそ、ハイテクな“チプカシ”という今回の新作はシャレが効いていて思わずニヤリとしてしまう。僕はひと目でそれとわかる、シルバーのABL-100WEを手に入れるつもりだ。このクラシックな液晶でワールドタイムを操作してみるのが、今から楽しみでならない。


基本情報
ブランド: カシオ コレクション(CASIO Collection)
型番: ABL-100WE-1AJF(シルバー)、ABL-100WEG-9AJF(ゴールド)

直径: 41.6mm
厚さ: 8.2mm
ケース素材: メッキ加工を施した樹脂素材
文字盤色: ブラック(ABL-100WE)、ゴールド(ABL-100WEG)
夜光: LEDライト
防水性能: 日常生活防水
ストラップ/ブレスレット: ステンレススティール
追加情報: モバイルリンク機能(自動時刻修正、ライフログデータ、簡単時計設定、タイム&プレイス、ワールドタム、携帯電話探索)、デュアルタイム、歩数計測機能、100分の1秒ストップウォッチ、タイマー、時刻アラーム(5本)

価格 & 発売時期
価格: ABL-100WE 1万1000円、ABL-100WEG 1万3750円(ともに税込)

“オメガがスポーツ計時”というイメージとは、正直まったく違った次元の技術と研究がされていたことに驚いた。

今大会のタイムキーピングにまつわる数字。前回大会からタイムキーパーは20名ほど増員されつつも、導入された機材の総重量は減少させた。
 まず今大会から導入された新技術についてだが、これはもはや時計で時間を正確に計測するという次元の内容ではない。スキャンオービジョンアルティメートとコンピュータービジョンカメラというふたつの最先端機器が新たに登場、前者は秒間で最大4万枚のデジタル画像を記録でき(従来品は秒間1万枚)、後者はひとつ、ないしは複数のカメラシステムを組み合わせて継続的に記録した選手などの動きを、競技ごとにトレーニングされたAIモデルに取り込むことができる、というものだ。

 この説明だけではあまりに想像が難しいのだが、オメガは例えば陸上競技のゴール判定のために、従来は秒間1万枚の写真を撮影・合成し接戦時における審判の判定を助けてきた。また、我々が普段スポーツ中継を見ている際、例えば競泳で世界記録のラインやレーンごとに選手のラップタイムが表示されるのを目にしているはずだ。実はああしたグラフィックもオメガタイミングがリアルタイムで計測、製作して各放送局に配信している。今回技術がアップデートされたことにより、より正確な判定とより良い視聴体験が実現したというわけだ。

スキャンオービジョンアルティメート。主に陸上競技と自転車トラックレースにおいて、ゴールラインを通過するすべての選手の合成写真を作成して、公式結果を判定する。

コンピューター ビジョンカメラ。競技が行われているあいだのパフォーマンスを複数のカメラで追うことで、どんな動きが優れていたのかなどのデータを抽出可能。今回の進化で、選手にタグを取り付けることなく追跡可能となった。

次世代グラフィックテクノロジー”ヴィオナード”。4K HUDの超高精細なグラフィックをリアルタイムで生成し、種目ごとに結果や選手のパフォーマンスをよりわかりやすく、臨場感たっぷりに表現している。
 回を追うごとにオメガが追跡することのできるデータは増え続けているのだが、日本でも人気の高い体操競技、競泳、テニスなどでは以下のような情報がリアルタイムに提供されている(それが映像に反映されているかどうかは、各放送局の判断に委ねられる)。

【ゆか競技】

ラインを超えているか
ジャンプの高さ
滞空時間
ジャンプ回転中の詳細情報(足の角度など)
【競泳】

ライブポジション
ライブスピード
ストローク数
【テニス】

サーブリターンの反応時間
サーブリターン方向
ラケットの正確な位置
 オリンピックで実施されている32競技、329種目では目に見える単純な記録以外にも選手ごとに細かな情報がトラッキングされているのが分かる。これによって、競技の採点の正確さが向上しており、さらに僕らは、注目している選手の今回のパフォーマンスがどうだったのか知ることもできる。


1932年以来、オメガが発展させてきた計時の歴史
手動計測から始まり1940年代には自動計測を模索、デジタル計測へ積極的に移行した1960年代
  「10分の1秒」。これは1932年当時、オメガが世界最高水準で実現したストップウォッチの計測精度である。多くの精度コンクールで高い成績を収めていたオメガは、この機械式クロノグラフで初めての大型スポーツイベントにおけるタイムキーパーという大役を全うした。当然、このポケットウォッチ型のクロノグラフは手動で操作されていたわけだが、デジタル化の流れは腕時計の何倍も早く、1964年にはコンピューター技術が導入され、1968年には電子計時技術がすべての競技で使用された。特に競泳ではタイムキーパーが手動でタイムを測るのではなく、選手自らがタイマーをストップする仕組みが導入されていくのである。これはいまでこそ一般的だが、画期的かつ正確性も担保されたものであった。オメガが競泳でタッチパッドによる計測を実用化したのは、1967年のパンアメリカン競技大会である。

 なお、それ以外に普及した技術に写真判定があるが、これは1948年から導入され始めていたという。フォトセル(光電子装置:選手がフィニッシュラインを通過した正確な瞬間を記録する装置で、ゴールテープの代わりに用いられた)の発明と合わせて接戦時の判定に寄与した。もっとも、当時はそうした判定には2時間がかかったようで、すべてのレースで実施できるような代物でもなかったが、現在では競技と同時進行でライブ判定が可能なまでに技術が発達している。

オメガがオリンピックの計時用に初めて開発した、スプリットセコンドクロノグラフ。1932年のロサンゼルス大会で使用された30個のクロノグラフにまつわるお話はこちらの記事でご確認を。

1932年、初めてタイムキーパーを務めた大会での計時の様子。8つのストップウォッチを収めた器具で、同時に最大8名の選手の記録を行っていた。ちなみにすべて手動。

マジックアイ(1948年)。フォトセルと合わせて、集団で選手がフィニッシュラインを超えたとしても正確な順位付けができるように導入された。

競泳では1956年より半自動計測が始まり、1968年大会ではタッチパッドが導入されていた。

1984年大会、陸上でのゴール判定の画像。
1960年代から発達したブロードキャストプログラム
 その後もオメガは多種多様な競技において、タイム以外の要素を計測するためにトラッキング技術を向上させていくのだが、同時に発達したものがブロードキャストプログラムである。これは、1961年ごろにはすでに着手され、1964年大会で初めて導入された。計測技術とブロードキャストプログラムは別々に生まれたものではなく、競技からリアルタイムで得られる情報が年々増え続けたことで、審判や視聴者を含めて見ている人々にいかに伝えるかを考えた末に生みだされたのが本当のところだろう。

 2018年にはポジションマッピングが実用化され、アスリートの動きに追従した映像を生み出せるようになった。これは次世代型のブロードキャストプログラムにつけた先鞭とも言えるが、その背景でオメガが開発しているものは多岐にわたる。その大きな要素として、タイムキーパーの存在がある。今大会では550名ものタイムキーパーが導入されたということだが、最新機器は計測とブロードキャストを同時に処理するものがほとんどであり、種目ごとにカスタマイズされている。そのため1人のタイムキーパーが複数種目を兼ねるということが難しく、それぞれに特化してトレーニングされているのだ。スポーツイベント、特にオリンピックにおいてタイムキーパーは“どんなミスも許されない”わけで、複雑化した計器類を完璧に使いこなすことが求めれている。

 なお、550名のうちスコアリングを担当する人はスイスタイミング社に属しており、射撃など特殊な競技については、オリンピックのためにエキスパートを社外から雇い入れるそうだ。

2010年から導入されたスタートガン。スタートの合図が聞こえる時差をなくすために考案されたもので、引き金が引かれると先端が光り選手の背後で音がなるように装置が配置されている。

陸上競技で目にするスターティングブロックにはスピーカーが組み込まれており、スタートの合図が聞こえるタイムラグをなくしている。スタート時に選手がかける圧力を検知しその荷重の情報を会場内のコンピューターに送信。フライングを視覚的に確認する装置としての役割も果たす。

競泳でおなじみのタッチパッド。選手が1.5〜2.5kgの圧力をかけるとタイマーがストップするシステムだ。プール内の波でタイマーが止まらないよう、この圧力値に設定されている。

競泳のスタート台に配置されたライトは、ひとつのライトで1位の選手、2つのライトで2位の選手、3つのライトで3位の選手を示す。

スイスタイミングの内部へ

スイスタイミングはスウォッチ・グループ内の独立企業。グループ内他社で開発したものも含めて、ひとつの技術へと結実させる
 スイス(オメガ)タイミングが拠点を構えるのは、ジュネーブからクルマで約2時間ほどの場所でオメガもあるビエンヌから近しいコルジェモン(Corgémont)という地域だ。現在のヘッドクォーターは、かつてETAがあった建物の隣に2010年に設立。この社屋には約200名の社員が勤務しており、そのうち150名ほどが研究開発を行うR&D部門に属しているエンジニアだという。スイスタイミングは元々オメガとロンジンによって設立された、タイムキーピングに特化した企業であり、現在はスウォッチ・グループに属するひとつの独立企業である。オリンピックのオフィシャルタイムキーパーを務める親会社のために計時を担当することからオメガタイミングという特別なブランドが認知されているが、実際はスウォッチ・グループの他のブランドがタイムキーパーを務めるオリンピック以外のスポーツイベントにも多く参画している。スイスタイミングが担当しないものも合わせると、大きなスポーツイベントは年に500以上も実施されているということで、彼らが発展させてきた技術は多くの場面で目に触れる機会がありそうだ。

 さて、スイスタイミングで僕が見たものはパリオリンピックで導入予定となっていた、最新の計測システムであるスキャン オー ビジョン アルティメートとコンピューター ビジョンカメラ、そしてブロードキャストプログラムの根幹を担う“ヴィオナード”の操作方法だ。僕が訪れた4月上旬のタイミングは、これらのシステムを用いてスムーズにブロードキャストに進めるかどうか、訓練とテストが繰り返されている時期だった。冒頭に550名のタイムキーパーが今大会に参加していると書いたが、新導入されるシステムを含めて完璧に操作し、選手の情報やレースの記録、パフォーマンスの詳細やリプレイ、グラフィックによる再現などに至るまで、世界中の放送局に作成したグラフィックをリアルタイムでミスなく渡せるよう、手順を隈なくチェックしていたのだ。

関連商品:https://www.hicopy.jp/brand-copy-IP-2.html

カルティエはミニサイズのタンク ルイ カルティエを発表した。

ワンサイズで全員に合うわけではない。これはラージ、スモール、ミニのサイズ展開で提供される。

小柄な手首はもちろん、大柄で毛深い手首にもよく似合うミニはInstagramで華々しく紹介され、一躍話題となった。実はこのミニLCには年上のいとこが存在する。それが今回新たにイエローゴールドで登場したタンク アメリカン ミニだ。このミニモデルはスモールとラージサイズが同時にリリースされた。そこでスモールとミニを実際に手に取って、よりわかりやすい比較を行うことにした。

タンク アメリカンは1989年に初めて発表され、当時の大き目な時計に対する現代的な需要に応える形で登場した。YGでつくられ、タンク サントレにインスパイアされたカーブを描くケースが特徴だったが、よりコンパクトでがっしりとしたシェイプを持っていた。そのあとアメリカンはデイト機能やクロノグラフなど、さまざまな機能を備えた多彩なバージョンが展開された。昨年、カルティエはタンク アメリカンのラインを控えめながらも視覚的に分かりやすいデザイン変更を加えて刷新し、ステンレススティールやローズゴールドの新作モデルを、ダイヤモンドやブレスレットのバリエーションとともに発表した。アメリカンはより薄く、よりスリムで、より洗練されたデザインとなり、タンク サントレのオリジナルモデルに1歩近づいたといえる。
現在、時計愛好家たちは小さな時計に夢中になっている。だが同じ愛好家たちが巨大なタンク サントレに熱狂している姿も見受けられる。だからこそ、カルティエが最新モデルで過去のデザインを繰り返すのも理解できる。2017年にA Week On The Wristで試したミディアムサイズのアメリカンは廃止され、今残っているのは44.4mm×24.4mmのラージサイズ(ヴィンテージのジャンボサントレに近い9リーニュ、約2cm)、35.4mm×19.4mmのスモールサイズ(ミドルサイズのヴィンテージ サントレに近い8リーニュ、約1.8cm)、そしてヴィンテージの“レディース”サントレに近い28mm×15.2mmのミニサイズだ。

新しいアメリカンのYG製ケースは、サテン仕上げの側面、レール部分にはポリッシュ仕上げが施されており、エッジの輪郭がより際立っている。このケースはスモールやミニサイズであっても建築的な印象である。表面はまるでミース・ファン・デル・ローエのブルーノチェア フラットバーのように滑らかだ。ケース裏側にはカーブした裏蓋が採用されており、タンク サントレのような劇的なカーブではないものの、十分に曲線的に見えるデザインだ。結果技術的に製造しやすくなりながら、湾曲しているように見える時計が誕生した。
ミニとスモールのダイヤルはどちらもいたってシンプルだ。両モデルともシルバーのバーティカルサテン仕上げが施され、すべてのアメリカン同様、チャプターリングの両端がケースのカーブに合わせて湾曲している。そのためダイヤルには多くの余白が生まれ、ローマ数字がより際立つデザインとした。サントス ドゥ カルティエやタンク フランセーズ、1950年代以降のタンク サントレと同様、八角形のサファイア製リューズはフラットでファセット加工が施されている。スモールとミニモデルはともにクォーツで動き、30mの防水性を備えている。

再びスモールウォッチの話題に戻ろう(これは至るところで話されている)。ときに、まるで“ワンサイズで全員に合う”ような時代に生きているように感じることがある。そして個人的な好みを内に秘めておくプレッシャーが重くのしかかる。“その小振りな時計、君にも僕にも…そして、この部屋で試着したすべての人に似合っているね”と、明らかにつくり笑いを浮かべながら言うのだ。なぜなら、時計愛好家の選ぶ権利を否定してはならないのだから!
このような状況では、誰もが持っていた何がよいかという感覚が政治的な空気のなか消え去ったように思える。そんなときこそ、カルティエのようなブランドに解決策を求めるべきだ。彼らは3つのサイズでアメリカンを提供しており、いずれも見た目はほぼ同じ(ケースのサイズの違いを除いて)である。ラージ、スモール、ミニから選べるというのは、2024年における時計界の民主主義といえるだろう。時計のサイズやミニモデルが話題になる今日だが、カルティエは100年近く前からさまざまなサイズの時計を提供してきた。またどのモデルの最小サイズが真に“女性向け”としてつくられたものなのか、実際にはよく分からない。

はっきり言っておくが、誰でも好きな時計を自由につけられるべきだという考えをこれからもずっと貫くつもりだ。ただスモールウォッチを推奨する風潮を押し付けないでほしい。自分の意志で選ぶことはできるから…もしそうする気になればの話だが。そして私は実際、YGのタンク アメリカン ミニ(そしてWatches & Wondersで見たミニLC)を手に入れた
 YGモデルが登場するまで、自分がタンク アメリカン好きだとは言えなかった。ずっとタンク サントレ派だったし、正直アメリカンは今のところサントレに手が届かないけれど、アメリカンならというサントレ派向けの時計だ。スモールのYGは1万1600ドル(日本円で約165万円)、そしてミニのYGは122万7600円(税込)だ。

ヴィンテージノルマル、シノワーズ、サントレに対する執着以外で、より商業的に流通しているタンクに引かれることはあまりなかった。しかしタンクをつけると何かたまらない(いい言葉が見つからない)、控えめでありながらも抗えない魅力がある。仕立てのいい黒いパンツとパリッとした白シャツというシンプルなスタイルに、袖口からタンクがちらりと見える女性になりたいと憧れているのだ。もしかするとこのYG製アメリカンは、ミニマルな美学を最大限に表現するための切符なのかもしれない。アメリカンは控えめでありながらも、太めのブランカード(フランス語で担架の意。タンクのケース側面が担架のハンドルに似ていることからその名がついた)が手首で存在感を示している。そのカーブにより手首のラインに自然にフィットし、肌に完全に平らに乗るのではなく、より個性的で官能的な印象を与えてくれる。

ミニとスモールのあいだでしばらく悩んだ結果、スモールのほうが自分にしっくりくると感じた。ただクロコダイルストラップは外して、シンプルなカーフレザーに付け替えたいと思った。そこにいつものレイヤーやカラフルな服、たくさんのジュエリーと一緒にこの時計をつけるだろう。なぜならミニマルやミニというスタイルは、自分らしくないからだ。

関連商品:https://www.hicopy.jp/brand-copy-IP-19.html

魅力的な機能だが、もう少し洗練されたデザインが必要だろう。

フォーメックスは技術革新において確固たる評判を築いている。同社の姉妹会社であるデクセルは、数多くのスイスブランドにパーツを製造・供給するサプライヤーだ。厄介な秘密保持契約(NDA)があるため、どのブランドが何を作っているのか明らかにされないことが多いが、デクセルのウェブサイトには、ジラール・ペルゴやモンブランのブレスレット、ウブロのケースなどが掲載されている。これらの技術の多くは、デクセルのインハウスブランドとも言えるフォーメックスにも生かされている。主にブレスレットやクラスプ、ケースの技術で知られるフォーメックスだが、最近GMT機能に挑戦すると決意したようだ。その結果がフォーメックス ストラトス UTCであり、フライヤーGMTとして機能的なパイロットウォッチに仕上がっている。デザインは少し粗いものの、ストラトス UTCはリーズナブルな価格ながら斬新なGMT機能を提供した。

 ストラトス UTCは“フライヤー”GMT機能を備えているが、通常のリューズ操作ではなく、2時位置と4時位置にあるプッシャーで現地時間の時針を操作できる仕様になっている。リューズを引き出すことなく(またテンプの動作を止めることすらせず)、ローカルアワーを1時間進めたり戻したりすることができるのだ。
 フォーメックスは、ETA 2892にデュボア・デプラ社製のカスタムモジュールを組み合わせることでこの機能を実現している。日付はローカルタイムの時針と連動しているが、ミドルケースの左側には、独立した日付修正機構が隠されている。日付は6時位置のインダイヤルに表示され、9時位置には小さな昼夜表示が配置されている。また見返しリングに24時間表示があり、さらに双方向回転ベゼルにも24時間スケールが付いている。このため、同時に3つのタイムゾーンを追跡できるが、そのぶんデザインはかなり賑やかである。フォーメックスはムーブメントを日差±7秒の精度に調整しており、サファイア製シースルーバックをとおしてムーブメントを見ることができる。


 フォーメックスはこれらすべての機能を41mmのコンパクトなステンレススティールケースに収めている。ラグからラグまでは47mm、厚さは快適な11.8mmで、100mの防水性能を備えている。ストラトス UTCはストラップまたはブレスレット(ラグ幅20mm)で提供されるが、私はブレスレットを強くおすすめする。ブレスレットには工具不要のマイクロアジャスト機能とクイックリリースが完備。フォーメックスはケースとブレスレットの製造や仕上げにおいて優れており、ストラトス UTCも例外ではない。ブレスレットは頑丈でありながら薄く、手首にしっかりとフィットした。

 さらにダイヤルにはサンレイ仕上げ、インダイヤルとアウターリングには異なる質感のグレイン加工を施している。ダイヤルのカラーオプションはブルー、グレー、グリーンの3種類で、すべてに鮮やかなオレンジのアクセントが加えられている。ブレスレット仕様のフォーメックス ストラトス UTCは3990ドル(日本円で約60万円)で、ストラップ仕様は3850ドル(日本円で約58万円)。現在予約注文受け付け中だ。



我々の考え
フォーメックスの実用的なGMTアプローチは気に入っているが、この時計は技術仕様や複雑機構を優先して、デザインが後回しにされた印象を受ける。ダイヤルは情報量が多く、さらにベゼルがごちゃついた感じだ。それにストラトス UTCにはフォントが多すぎる。それでもケースの装着感はとてもよく、厚さわずか11.8mmのGMTというのは軽視できないポイントだ。またポリッシュ仕上げ、サテン仕上げ、マット仕上げが混在しており、仕上げもきちんとしている。

 プッシャーでGMTを操作するのは目新しいわけではない。たとえばパテックの5164やブルガリのオクト フィニッシモ クロノグラフ GMTがその例だ。しかしフォーメックスがETAのムーブメントにモジュールを追加し、この機能を比較的手ごろな価格に抑えたことは評価に値する。
 フォーメックスがこの機能を別のモデルに採用するか、ストラトス UTCのデザインを洗練させてくれることを期待している。というのも、このアイデアには大きな可能性があるからだ。ストラトス UTCのデザインは自分には合わないかもしれないが、フォーメックスの技術力、エンジニアリング、製造に関しては誰もが評価できるものだ。
フォーメックス ストラトス UTC。316Lステンレススティールケース、41mm × 11.8mm(ラグからラグまで47mm)、100m防水。48クリックの双方向回転SS製ベゼル。ストラトス UTCは、カスタムされたデュボア・デプラモジュールを搭載した自動巻きETA 2892ムーブメント(日差±7秒)を使用した“フライヤー”GMT機能、サファイア製シースルーバックからムーブメントを鑑賞できる。6時位置に日付表示。サンレイ仕上げのダイヤルはグリーン、ブルー、グレーの3色展開。ブレスレットは工具不要のマイクロアジャストとクイックリリースの付いたスクリューリンク。メーカー希望小売価格はブレスレット仕様が3990ドル(日本円で約60万円)、ストラップ仕様が3850ドル(日本円で約58万円)。