バーゼルフェアで3つのプロトタイプ・シンプリシティを発表した。

3本のうち、ふたつはギヨシェダイヤルのホワイトゴールドモデル。ひとつはデュフォー氏本人が個人的に所有し、もうひとつはのちにフィリップ・デュフォーの日本代理店であるシェルマンの、当時の社長だった磯貝吉秀氏に贈られたという。そして残る1本が、ホワイトラッカーダイヤルのピンクゴールドモデルだ。これらの時計(デュフォー氏所有のもの以外)は2000年のバーゼルフェア後、フィリップ・デュフォーの時計を求める顧客に見せるための展示ピースとしてシェルマンに預けられたのだという。オークションに出品されたのは、ホワイトラッカーダイヤルのPGモデルだった。そしてオーナーは、その時計をデュフォー氏本人とシェルマンの許可を得て出品したようだった。

磯貝氏に贈られたという、もうひとつのプロトタイプ・シンプリシティはいまも彼が所有していた。別件で磯貝氏にコントタクトを取る最中、筆者は彼が所有するというプロトタイプ・シンプリシティを見せてもらう機会を得た。時計はもちろん素晴らしいものであったが、それ以上に興味深いこの時計にまつわるバックストーリーを知ることができた。

「コロナ禍もあって僕が仙人みたいな生活をしているあいだに、あのプロトタイプのシンプリシティはそんなことになっていたんですね」

ご存じの方も少なくないと思うが、磯貝氏は2018年にシェルマンの代表取締役を退任した。その後はどうやら時計業界とは積極的に関わることなく過ごしていたらしく、プロトタイプ・シンプリシティのひとつがオークションに出品されていたことは今回の取材があるまで知らなかったようだ。そもそも2本のプロトタイプ・シンプリシティはどのような経緯で磯貝氏に、シェルマンに贈られたのだろうか。彼は快くその詳細を語ってくれたが、その全貌を知るには、デュフォー氏と磯貝氏の関係についても少し知っておく必要がある。

時計師たちが嬉々としてこだわりの時計を作り発表していたアカデミー黎明期
 1980年代終わり頃からバーゼルフェアを訪れるようになった磯貝氏は、当時スヴェン・アンデルセン、フォルジェという独立時計師ブランドを扱っていた関係で、1987年から出展していた独立時計師アカデミー(通称はアカデミー。1985年に設立)のブースへも当初から通っていた。当時の独立時計師たちの評価はいまとは異なるもので、それほど注目されることもなく、メインホールから離れた倉庫のような会場(ホール5)の片隅で自身のこだわり満載の作品をひっそりと展示・発表しているような状況だったという。

 1990年代になると、日本では時計ブームが起こり時計専門誌が次々に創刊されたが、超絶技巧が光るアカデミーメンバーたちの作品は日本の時計愛好家たちの嗜好にマッチ。アカデミーと懇意にしていた磯貝氏が協力して日本のメディアが取材に訪れ、独立時計師の作品が日本に紹介されるようになり、次第に日本以外でも名声を得るようになっていった。そのなかで磯貝氏と付き合いを深めていった独立時計師のひとりがフィリップ・デュフォー氏だった。

 「グラン&プチソヌリ ミニッツリピーター(1992年発表。83年にデュフォー氏が作り上げた懐中時計版ムーブメントを腕時計サイズに縮小して完成)、デュアリティー(1996年発表)と、ユニークな時計を作っていることはもちろん知っていましたが、実はデュフォーさんとのお付き合いが本格的に始まったのは2000年からでした。その年のバーゼルフェアで新作として発表されたシンプリシティにひと目惚れして、ぜひ取り扱わせて欲しいとオファーをしたのがすべての始まりです。そして会場で展示されていたのが、プロトタイプのシンプリシティでした」(磯貝氏)

 当時のデュフォー氏は孤高の人という印象だったらしく、代理店を望まず、直接エンドユーザーに自身の時計について説明し、本当にその時計を理解できた人にしか売らない、というようなスタンスだったそうだ。デカ厚時計が全盛のなか、34mm(37mmモデルも当初から作られていた)という小さなサイズで、ヴィンテージのパテック フィリップのような最高の職人の手で丹精込めて徹底的に作りこまれた、繊細でありながら力強く美しいシンプリシティに感銘を受けた磯貝氏は、自身の時計に対する考え方や、日本の時計愛好家のことなどさまざまなことを熱心に彼に伝え、デュフォー氏の作品を取り扱わせて欲しいとお願いした。それに対し、デュフォー氏は磯貝氏の考え方を高く評価し、その提案を喜んで受け入れてくれたという。

自身の工房から窓越しに外を眺めた様子を再現したバーゼルフェアでフィリップ・デュフォー氏の展示ブース。2000年。写真は磯貝氏の提供。
 シンプリシティの価格は、当時の価格で3万4000スイスフラン(当時の日本での販売価格は約280万円)。いまの感覚からすると破格の印象だが、当時のデュフォー氏は一部の好事家だけが知るような存在で、しかもシンプリシティに比肩する素晴らしい作りを持つパテック フィリップのRef.3796が100万円前後で手に入った時代だ。シンプリシティに関心を持つ人はいても、その価格に尻込みする人は少なくなかった。

 そんな心配をよそに、2000年10月に当時のシェルマン銀座店を会場に開催されたフィリップ・デュフォーのフェアは大成功。そこにはバーゼルフェアの会場で展示されていた2本のプロトタイプ・シンプリシティが日本へ持ち込まれたが、それを見た多くの時計愛好家たちから好評を得たほか、なかでも意外だったのが時計職人たちまでシンプリシティに惚れ込んでいたということだ。

「フェアも成功して、注文も入りました。対してデュフォーさんは当初、1年かけて50本製作すると言ってくれたのですが、結局10数本しかできなかったんです。彼はこだわりの強い人ですからね。ほとんどの作業を自分でやることにこだわるし、作っているうちにここはこうしたい、ああしたい…となって。そうすると3万4000スイスフランという価格設定では成り立たず価格を上げざるを得なくなったり、最初の3年ほどは赤字で時計づくりも大変だったようでした」(磯貝氏)

 注文数は順調に延びていきビジネスとしては順調だったが、時計づくりのほうはスムーズにいかなかったようだ。シンプリシティは200本(当初は100本、その後追加で100本が製作されることになった)製作したらを販売終了としていたが、最後の時計が製作されたのは2013年。2000年の発表から13年もかかったことは、時計好きの方ならご存じだろう。2005年には予約も埋まり、納品は1年、2年と伸びていき、なんと最終的には8年待ちという状況に。そのあいだも、磯貝氏はデュフォー氏の工房をたびたび訪問して彼の時計づくりの状況を伝えたほか、心待ちにしている顧客のためにデュフォー氏からグリーティングカードを送ってもらえるように依頼するなど、心を砕き苦心したという。

「販売が終了したので本来ならプロトタイプは返却しないといけないわけですけど、それこそ何千人という方に紹介してきた時計ですからね。名残り惜しいというか、思い入れが強くなって返すのが惜しくなってしまったんですよ。そこで彼にプロトタイプを売って欲しいと言ったところ、それまでの僕の活動に感謝を込めてプレゼントするよと。どっちがいいかと彼に言われたんですが、デュフォーさんとお揃いになるねということでギヨシェダイヤルのホワイトゴールドモデルをいただくことにしました。そしてもう一方のピンクゴールドモデルも譲り受け、会社に保管しておくことにしたんです」
 そうして磯貝氏の手にやってきた2本のプロトタイプ・シンプリシティ。実は製品版とは異なるところがいくつか存在していた。もっとも大きな違いはテンプ。製品版はチラネジテンプ仕様だったが、なんとプロトタイプはジャイロマックステンプを載せていたのだ。また、通常はシリアルナンバーが刻印されるプレート部分はプロトタイプでは数字がなく、ブランク状態になっていた。

「時計を譲ってもらう際に、製品版と同じように入れ替えて渡そうかとデュフォーさんから言われたんですが、この時計に思い入れがあるから、そのままでいいと伝えました。ただ、もう13年以上も経っている時計でしたからね。じゃあオーバーホールだけはしておこうかということでデュフォーさんに時計を戻したんですが、そのときにシリアルナンバーが刻印されるプレート部分にホワイトゴールドモデルのほうは“Yoshi”、 ピンクゴールドモデルのほうには“000”と彼自ら刻印してくれたんです」

 そして冒頭のPGモデルのプロトタイプ・シンプリシティである。本来であればこの時計はシェルマンに保管されているべき時計のはずだが、磯貝氏のもとに熱心に通っていたあるコレクターの方にどうしても譲って欲しいと頼まれ根負けし、絶対に手放さないことを条件に譲ることになったのだという。
 

ジャガー・ルクルトはふたつの独立した輪列によって構成される革新的なモデル。

ジャガー・ルクルトが2007年に発表したデュオメトルコレクションは、計時用とコンプリケーション用にふたつの香箱と独立した輪列を備えた斬新なものだった。今年、ジャガー・ルクルトはデュオメトル・クロノグラフ・ムーンを筆頭に、新たなデュオメトル3型をリリースした。プラチナケースにコッパーダイヤル、またはローズゴールドのケースにシルバーオパーリンダイヤルのモデルが用意されたクロノグラフ・ムーンは、従来のデュオメトルをベースに、クロノグラフ、ムーンフェイズ、デイナイトインジケーター、6分の1秒計を搭載した新しいジャガー・ルクルト製Cal.391を搭載している。

また、デュオメトル・クロノグラフ・ムーンに加え、デュオメトルのラインナップに2型の時計が投入される。カンティエーム・ルネールの新型と、ヘリオトゥールビヨン・パーペチュアルだ。

プラチナ製のデュオメトル・クロノグラフ・ムーン。
さて、デュオメトル・クロノ・ムーンにフォーカスしてみよう。Cal.391はこれまでのデュオメトルをベースに、ムーンフェイズとデイナイトを組み合わせたモノプッシャークロノグラフであり、ふたつのパワーリザーブ表示とフロドワイヤント(1秒で1回転、6分の1秒刻みでジャンプするクロノグラフ針)を備えている。デュオメトルの革新的な特徴はそのままだ。ふたつの香箱と独立した主ゼンマイが計時とコンプリケーションを司っているが、それらはひとつのキャリバーと脱進機に集約されている。フロドワイヤントはクロノグラフが作動すると同時に回転を始め、6分の1秒単位の計測を可能とする。


Cal.391は、部分的にオープンワークが施されたダイヤルから確認することができ、サファイアのシースルーバックからはその全貌を見ることができる。ムーブメントの一部は透かし彫りになっており、これにより組み立てが容易になっているとジャガー・ルクルトは説明している。ムーブメントには、サンレイパターンのジュネーブ・ストライプなどさまざまな仕上げが施されているように見える。この手巻き式ムーブメントは(各香箱で)50時間のパワーリザーブを備え、振動数は2万1600振動/時だ。

ローズゴールド製のデュオメトル・クロノグラフ・ムーン。
デュオメトル・クロノグラフ・ムーンのケースサイズは直径42.5mm×厚さ14.2mmで、ケースにねじ込まれたラグを含む34個の部品で構成されている。ケース表面にはポリッシュ、サテン、マイクロブラスト仕上げが混在し、防水性能は50mとなっている。

プラチナ製のデュオメトル・クロノグラフ・ムーンの希望小売価格は1425万6000円(税込)、ピンクゴールド製のモデルは1161万6000円(税込)だ。
そして、これだけでは終わらない! デュオメトル・クロノグラフ・ムーンとタイミングを同じくし、ジャガー・ルクルトはカンティエーム・ルネールにもアップデートを施した。従来のものと同様にCal.381を搭載しながらも、今作ではクロノグラフ・ムーンのケースに合わせてリニューアルされたスティール製のケースを採用しており、ブルーのオパーリンダイヤルを備えている。

最後になるが、ジャガー・ルクルトはデュオメトル・ヘリオトゥールビヨン・パーペチュアルカレンダーも発表する。ヘリオトゥールビヨンは、あらゆるポジションで重力の影響を補正するように設計されたジャイロトゥールビヨンの独創的なアイデアを極限まで発展させたものだ。円筒形のヒゲゼンマイを備え、3つのチタン製ケージが3軸で回転する。最初のケージはテンプに対して90°の角度にセットされ、テンプから見て垂直に回転している。ふたつ目のケージはひとつ目のケージと90°の角度をなし、3つ目のケージはさらにふたつ目のケージと垂直に設置されていて60秒ごとに1回転する。これらはすべてセラミック製のベアリングによって支えられており、163個の部品で構成されている。デュオメトル・ヘリオトゥールビヨン・パーペチュアルは20本限定で、希望小売価格は40万ユーロ(日本での価格は要問い合わせ)となっている。

我々の考え

SS製に刷新されたカンティエーム・ルネール。
今年のジャガー・ルクルトは、さながら2007年のときのような盛り上がりを見せている。私は同ブランドを愛しており、昨年のレベルソ・クロノグラフはWatches & Wondersで発表された時計のなかでも特に気に入っている。デュオメトル・クロノグラフ・ムーンのような時計は、時計愛好家たちをそれほど興奮させるものではないかもしれない。だが、卓越したウォッチメイキングによって、このように魅力的な時計が誕生したのだ。Cal.391は、Cal.381(今年ラインナップに加わったものも含め、既存のカンティエーム・ルネールに採用されている)をベースに、クロノグラフとムーンフェイズの複雑機構をその他の要素とともに組み合わせたものである。


デュオメトルは、レベルソともポラリスともマスターコレクションとも異なるものだ。しかし、それでいい。それはそれで素晴らしいのだ。デュオプランムーブメントを生み出した1925年であれ2024年であれ、ジャガー・ルクルトほど複雑で素晴らしい時計づくりをしているビッグブランドはそうそうないだろう。

基本情報
ブランド: ジャガー・ルクルト(Jaeger-LeCoultre)
モデル名: デュオメトル・クロノグラフ・ムーン
型番: Q622252J(ピンクゴールド)、Q622656J(プラチナ)

直径: 42.5mm
厚さ: 14.2mm
ケース素材: プラチナ、もしくはピンクゴールド
文字盤色: コッパーオパーリン(プラチナ)、シルバーオパーリン(ピンクゴールド)
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: アリゲーター

ムーブメント情報
キャリバー: 391
機能: クロノグラフ、12時間積算計、60分積算計、1/6秒表示、ムーンフェイズ、デイナイトインジケーター、ふたつのパワーリザーブインジケーター
パワーリザーブ: 50時間(各香箱ごと)
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 47
追加情報: デュオメトルに使用されているムーブメントはふたつの香箱とふたつの独立した輪列を持ち、時計の計時とコンプリケーションを別個に制御している

価格 & 発売時期
価格: ピンクゴールドは1161万6000円、プラチナは1425万6000円(ともに税込)

タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ × ポルシェ963限定モデルが登場

腕時計とクルマはピーナッツバター&ジェリーのようなもの(編注;つまりアメリカ人の国民食であるピーナッツバター&ジェリーのように、アメリカ人にとって切っても切れない関係にあるもの)です。どちらがどちらかはあなたが決めてください。私の比喩とこの特別なサンドイッチの目的のために言うと、タグ・ホイヤーがピーナッツバターであるとすると、対するジェリーは、スポーツカーレース史上最も象徴的な名前のひとつであるポルシェです。両ブランドが独立して同じ自動車レース、カレラ・パナメリカーナにインスピレーションを受けていることを考えれば、驚くことではありません。この象徴的なデュオを祝うために両者がコラボレーションし、自動車メーカーの耐久レースの成功とポルシェ 963における“卓越性のあくなき追求”を記念する、シリアルナンバー入りリミテッドエディションのカレラ クロノグラフを提供することになりました。

タグ・ホイヤースーパーコピーカレラ クロノグラフ × ポルシェ963は、ポルシェのレーシングカーから多くのヒントを得たカレラコレクションの大胆なアレンジです。鍛造カーボンファイバー製のベゼルが夜光塗料を施したスケルトンダイヤルを囲んでおり、ル・マンといった有名な耐久レースの昼夜を想起させます。ダイヤル形状はポルシェのレーシングカーのチューブ構造を模しており、その下にある内部構造を垣間見ることができます。タグはさらにクロノグラフのインダイヤルにもスーパールミノバインデックスを配置。それは963の走行用ライトと同じく、4つの角度が付いたフォーメーションとしています。

内部には、かつてホイヤー02ムーブメントとして知られていたタグ・ホイヤー最新Cal.TH20-00を搭載。同ムーブメントは最新世代のグラスボックスカレラやモナコにも見られます。(なお名称の更新だけでなく、素材面でも改善されており)改良されたムーブメントは両方向に巻き上げることができ、H02の片方向巻き上げよりも効率的かつ静かです。また、タグは保証期間を従来の2年から5年へと大幅に延長すると発表。タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ × ポルシェ963の価格は115万5000円(税込)に設定されており、当然ながら生産数はわずか963本に限定されています。

我々の考え
間違いなく、これはレーシングカーにインスパイアされた時計です。タグ・ホイヤーは明確なアイデンティティを持つ、ひと目でそれとわかる時計を顧客が求めていることを理解しており、カレラ クロノグラフ × ポルシェ963はその正体を明確にしています。ディテールも考慮されており、保守的な基準からすると少々大げさかもしれませんが、裏蓋に小さな刻印がある以外に記念モデルの痕跡を残さないという非常に思慮深いものとなっています。さらに4時位置を赤く塗ったル・マンのスタート/フィニッシュタイム、ストラップのNACAダクト(レーシングカーのポルシェに採用される低ドラッグのNACAエアインテークのこと)、ステアリングホイール型のローターなどもその好例です。これらの要素はほかの部分よりもやや強調されている感じがあります(これはカーボンファイバーの要素をもじったものです)。それでも、この時計はロケット船のような外観を持つクルマに基づいており、そのデザインコンセプトにふさわしいものでなければなりません。私たちはその忠実なコンセプトを受け入れています。

昼のポルシェ。

そして夜のポルシェ。
ダイヤルの構造は、深い奥行きと開放感を与えます。さまざまなテクスチャーと素材の使用により、視覚的に簡単に区別でき、時刻の読み取りを邪魔することなく多くの興味を抱かせます。スーパールミノバの使用も間違いなく役立っています。44mm径×15.1mm厚と決して小さい時計ではありませんが、ケース、リューズ、プッシャーの側面に施されたエングレービングやPVDコーティングにより視覚的な重量をうまく軽減しています。この大きなフォルムは造形やコントラストを用いることで手っ取り早くスリム化できます。これは車両設計においても一般的な手法です。安全規制や製造上の制約などの大きな力が、特定の形状やサイズを決定する場合に特に有用なのです。

エキゾチックな素材と仕上げの広範な使用に加えて、自社製ムーブメントTH20-00はコラムホイール式クロノグラフに垂直クラッチを採用したことは、技術革新という全体テーマにぴったり合っています。このレベルと価格帯では、これ以下のものはありえません。100万円近くの価格はどの時計にとっても高額ですが、タグ・ホイヤーはホイヤー02の時よりも長い保証を提供し、クロノグラフという基軸となる製品を確実にするための漸進的な改善を行っています。これらすべてがシリアルナンバー入りで提供されるため、タグ・ホイヤー、ポルシェ、そして耐久レースのファンにとって非常に魅力的なものとなるでしょう。


さて、最終的な評価に移ります。タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ × ポルシェ963はカリカリのピーナッツバター&ジェリーサンドイッチです。すべての人に合うわけではありませんが、それを愛する人にはたまらない逸品となるのです。

基本情報
ブランド: タグ・ホイヤー(TAG Heuer)
モデル名: カレラ クロノグラフ × ポルシェ963(Carrera Chronograph × Porsche 963)
型番: CBU2010.FT6267

直径: 44mm
厚さ: 15.1mm
ケース素材: ステンレススティール、ケースサイドにブラックPVD加工
文字盤: NAC仕上げ、管状のオープンワーク
インデックス: ホワイトのスーパールミノバブロック(4時位置のレッドインデックスを除く)
夜光: あり、インデックスおよび時・分インダイヤルにある4個のスーパールミノバ、ベゼルにある“PORSCHE”の文字
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ブラックの一体型ラバーストラップ、サテン仕上げのセンターリンク

タグ・ホイヤーのCal.TH20-00。

プレスリリースによると、4時位置が赤く表示されているのはレーススタートに向けた期待と興奮を示すためです。タコメーターのような雰囲気を感じますね。

ムーブメント情報
キャリバー: TH20-00
機能: 時・分・スモールセコンド、日付表示、クロノグラフ(4分の1秒計、30分計、12時間計)
パワーリザーブ: 約80時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 33
クロノメーター: なし

価格 & 発売時期
価格: 115万5000円(税込)
発売時期: 2024年6月予定
限定: あり、世界限定963本(シリアルナンバー入り)

関連商品:https://www.jpan007.com/brands-category-b-19.html

バンドまでをカラフルに染め上げたカラーバリエーションが一斉に発表されている。

1988年生まれの僕と同世代の人なら、カシオ スタンダードという名前のほうが聞きなじみがあるかもしれない。現在まで続くロングセラーである1987年のMQ-24、1989年のF-91Wをはじめとし、バリューな価格に高い性能を備えたカシオ スタンダードは2021年7月に「カシオ コレクション」と名前を変えた。そして、それ以降積極的にラインナップを拡充してきている。昨今のカタログを見ると、トレンドを汲んだ爽やかなアイスブルーや鮮やかなグリーンダイヤルのアナログモデルもあったり、G-SHOCKを思わせるタフな外装の多機能モデルもあったりと、バリエーションも豊かだ。本日7月16日(火)にもダイヤルにケース、バンドまでをカラフルに染め上げたカラーバリエーションが一斉に発表されている。

そして同じタイミングで、このABL-100もリリースされた。一見すると往年のカシオウォッチのようだが、6時位置には見慣れない“Bluetooth”の文字がある。そう、ABL-100はモバイルリンクを可能にしたモデルなのだ。

デザインを見てみると、1995年に登場したA168の面影が強い。液晶の外周をぐるりと囲むブルー&ホワイトのラインに、各ボタンの機能を示す表示、色こそ変わったが“ILLUMINATOR”や“WATER RESIST”(とWRのアイコン)なども共通している。そのうえでさりげなく、右上にあった“ALARM CHRONO”が“STEP TRACKER”に置き換わっているのも面白い。トノー型のケース形状に変わりはないが、現行のA168と比較するとサイズは横幅が41.6mmと3mm増、縦が37.9mmで1.6mm増、しかし厚さに関しては8.2mmと1.4mmもシェイプされている。モバイルリンクに加えて歩数計測、デュアルタイムと機能的には大きく拡充しつつ、薄型化を実現している点は素晴らしい。オシアナス、G-SHOCKで培われた高密度実装技術の恩恵を受けているように思う。重さも60gと、10gのみの増加にとどまっている。

 歩数表示やBluetoothのアイコンなど表示内容は増えてはいるものの、デジタル数字のフォントやアンバーな液晶は1989年のA159W(そしてカシオのデジタルウォッチにおいてアイコン的な存在であるF-91W)から続く雰囲気を踏襲している。また、ブレスレットのデザインも、1980年代前半のT-1500やCFX-200など当時のメタルモデルによく見られたフラットな多列ブレスを想起させるものになっている。しかも、作りも昔懐かしい巻きブレスだ。総じてルックスはとことんクラシックに寄せられている。

 今回のリリースではシルバーカラーのABL-100WEに加え、全面にゴールドIPが施されたABL-100WEGも用意された。価格はABL-100WEが1万1000円、ABL-100WEGが1万3750円(ともに税込)で、今年8月に発売を予定している。



ファースト・インプレッション
古きよきカシオファンのツボをつく1970〜80年代のデザインを踏まえながら、現代的な機能を搭載。このギャップに僕はすっかりやられてしまった。現在ではG-SHOCKでもほとんどのモデルにも搭載されるようになったモバイルリンク機能だが、まさかカシオ コレクションの見た目でライフログがとれるようになるとは思ってもいなかった。あえてスマートフォンと接続できる新モデルとしてではなく、なじみ深いデザインに同機能を載せたところにカシオの遊び心が感じられる。価格こそカシオ コレクションでは珍しく1万円を超えているが、機能を拡充しながらも極力キープされたケースサイズ、クラシックながら着用感に優れるブレスと、細部に目を向けると値ごろ感さえある。動力がタフソーラーではなく電池式になっている点だけ惜しくはあるが、その結果ダイヤルの質感が変化したり、G-SHOCKのプライスレンジに突入してしまったりするのならこのままでもいいと僕は思う。あくまでこの時計はカシオ コレクションであり、気軽に手が出せる存在であるほうがしっくりとくる。


 昨年、G-SHOCK初代モデルが立体商標を取得したことがニュースになった。G-SHOCKというプロダクトが長い時間をかけて僕たちの生活の一部となった結果だが、ABL-100で採用されたこのフォルムもまた、カシオのデジタルウオッチにおけるスタンダードだと思う。今日では、SNS上でも国境を超えてA168、A159といった名機が愛されている様子が日々アップされている。それだけ認知された存在だからこそ、ハイテクな“チプカシ”という今回の新作はシャレが効いていて思わずニヤリとしてしまう。僕はひと目でそれとわかる、シルバーのABL-100WEを手に入れるつもりだ。このクラシックな液晶でワールドタイムを操作してみるのが、今から楽しみでならない。


基本情報
ブランド: カシオ コレクション(CASIO Collection)
型番: ABL-100WE-1AJF(シルバー)、ABL-100WEG-9AJF(ゴールド)

直径: 41.6mm
厚さ: 8.2mm
ケース素材: メッキ加工を施した樹脂素材
文字盤色: ブラック(ABL-100WE)、ゴールド(ABL-100WEG)
夜光: LEDライト
防水性能: 日常生活防水
ストラップ/ブレスレット: ステンレススティール
追加情報: モバイルリンク機能(自動時刻修正、ライフログデータ、簡単時計設定、タイム&プレイス、ワールドタム、携帯電話探索)、デュアルタイム、歩数計測機能、100分の1秒ストップウォッチ、タイマー、時刻アラーム(5本)

価格 & 発売時期
価格: ABL-100WE 1万1000円、ABL-100WEG 1万3750円(ともに税込)

“オメガがスポーツ計時”というイメージとは、正直まったく違った次元の技術と研究がされていたことに驚いた。

今大会のタイムキーピングにまつわる数字。前回大会からタイムキーパーは20名ほど増員されつつも、導入された機材の総重量は減少させた。
 まず今大会から導入された新技術についてだが、これはもはや時計で時間を正確に計測するという次元の内容ではない。スキャンオービジョンアルティメートとコンピュータービジョンカメラというふたつの最先端機器が新たに登場、前者は秒間で最大4万枚のデジタル画像を記録でき(従来品は秒間1万枚)、後者はひとつ、ないしは複数のカメラシステムを組み合わせて継続的に記録した選手などの動きを、競技ごとにトレーニングされたAIモデルに取り込むことができる、というものだ。

 この説明だけではあまりに想像が難しいのだが、オメガは例えば陸上競技のゴール判定のために、従来は秒間1万枚の写真を撮影・合成し接戦時における審判の判定を助けてきた。また、我々が普段スポーツ中継を見ている際、例えば競泳で世界記録のラインやレーンごとに選手のラップタイムが表示されるのを目にしているはずだ。実はああしたグラフィックもオメガタイミングがリアルタイムで計測、製作して各放送局に配信している。今回技術がアップデートされたことにより、より正確な判定とより良い視聴体験が実現したというわけだ。

スキャンオービジョンアルティメート。主に陸上競技と自転車トラックレースにおいて、ゴールラインを通過するすべての選手の合成写真を作成して、公式結果を判定する。

コンピューター ビジョンカメラ。競技が行われているあいだのパフォーマンスを複数のカメラで追うことで、どんな動きが優れていたのかなどのデータを抽出可能。今回の進化で、選手にタグを取り付けることなく追跡可能となった。

次世代グラフィックテクノロジー”ヴィオナード”。4K HUDの超高精細なグラフィックをリアルタイムで生成し、種目ごとに結果や選手のパフォーマンスをよりわかりやすく、臨場感たっぷりに表現している。
 回を追うごとにオメガが追跡することのできるデータは増え続けているのだが、日本でも人気の高い体操競技、競泳、テニスなどでは以下のような情報がリアルタイムに提供されている(それが映像に反映されているかどうかは、各放送局の判断に委ねられる)。

【ゆか競技】

ラインを超えているか
ジャンプの高さ
滞空時間
ジャンプ回転中の詳細情報(足の角度など)
【競泳】

ライブポジション
ライブスピード
ストローク数
【テニス】

サーブリターンの反応時間
サーブリターン方向
ラケットの正確な位置
 オリンピックで実施されている32競技、329種目では目に見える単純な記録以外にも選手ごとに細かな情報がトラッキングされているのが分かる。これによって、競技の採点の正確さが向上しており、さらに僕らは、注目している選手の今回のパフォーマンスがどうだったのか知ることもできる。


1932年以来、オメガが発展させてきた計時の歴史
手動計測から始まり1940年代には自動計測を模索、デジタル計測へ積極的に移行した1960年代
  「10分の1秒」。これは1932年当時、オメガが世界最高水準で実現したストップウォッチの計測精度である。多くの精度コンクールで高い成績を収めていたオメガは、この機械式クロノグラフで初めての大型スポーツイベントにおけるタイムキーパーという大役を全うした。当然、このポケットウォッチ型のクロノグラフは手動で操作されていたわけだが、デジタル化の流れは腕時計の何倍も早く、1964年にはコンピューター技術が導入され、1968年には電子計時技術がすべての競技で使用された。特に競泳ではタイムキーパーが手動でタイムを測るのではなく、選手自らがタイマーをストップする仕組みが導入されていくのである。これはいまでこそ一般的だが、画期的かつ正確性も担保されたものであった。オメガが競泳でタッチパッドによる計測を実用化したのは、1967年のパンアメリカン競技大会である。

 なお、それ以外に普及した技術に写真判定があるが、これは1948年から導入され始めていたという。フォトセル(光電子装置:選手がフィニッシュラインを通過した正確な瞬間を記録する装置で、ゴールテープの代わりに用いられた)の発明と合わせて接戦時の判定に寄与した。もっとも、当時はそうした判定には2時間がかかったようで、すべてのレースで実施できるような代物でもなかったが、現在では競技と同時進行でライブ判定が可能なまでに技術が発達している。

オメガがオリンピックの計時用に初めて開発した、スプリットセコンドクロノグラフ。1932年のロサンゼルス大会で使用された30個のクロノグラフにまつわるお話はこちらの記事でご確認を。

1932年、初めてタイムキーパーを務めた大会での計時の様子。8つのストップウォッチを収めた器具で、同時に最大8名の選手の記録を行っていた。ちなみにすべて手動。

マジックアイ(1948年)。フォトセルと合わせて、集団で選手がフィニッシュラインを超えたとしても正確な順位付けができるように導入された。

競泳では1956年より半自動計測が始まり、1968年大会ではタッチパッドが導入されていた。

1984年大会、陸上でのゴール判定の画像。
1960年代から発達したブロードキャストプログラム
 その後もオメガは多種多様な競技において、タイム以外の要素を計測するためにトラッキング技術を向上させていくのだが、同時に発達したものがブロードキャストプログラムである。これは、1961年ごろにはすでに着手され、1964年大会で初めて導入された。計測技術とブロードキャストプログラムは別々に生まれたものではなく、競技からリアルタイムで得られる情報が年々増え続けたことで、審判や視聴者を含めて見ている人々にいかに伝えるかを考えた末に生みだされたのが本当のところだろう。

 2018年にはポジションマッピングが実用化され、アスリートの動きに追従した映像を生み出せるようになった。これは次世代型のブロードキャストプログラムにつけた先鞭とも言えるが、その背景でオメガが開発しているものは多岐にわたる。その大きな要素として、タイムキーパーの存在がある。今大会では550名ものタイムキーパーが導入されたということだが、最新機器は計測とブロードキャストを同時に処理するものがほとんどであり、種目ごとにカスタマイズされている。そのため1人のタイムキーパーが複数種目を兼ねるということが難しく、それぞれに特化してトレーニングされているのだ。スポーツイベント、特にオリンピックにおいてタイムキーパーは“どんなミスも許されない”わけで、複雑化した計器類を完璧に使いこなすことが求めれている。

 なお、550名のうちスコアリングを担当する人はスイスタイミング社に属しており、射撃など特殊な競技については、オリンピックのためにエキスパートを社外から雇い入れるそうだ。

2010年から導入されたスタートガン。スタートの合図が聞こえる時差をなくすために考案されたもので、引き金が引かれると先端が光り選手の背後で音がなるように装置が配置されている。

陸上競技で目にするスターティングブロックにはスピーカーが組み込まれており、スタートの合図が聞こえるタイムラグをなくしている。スタート時に選手がかける圧力を検知しその荷重の情報を会場内のコンピューターに送信。フライングを視覚的に確認する装置としての役割も果たす。

競泳でおなじみのタッチパッド。選手が1.5〜2.5kgの圧力をかけるとタイマーがストップするシステムだ。プール内の波でタイマーが止まらないよう、この圧力値に設定されている。

競泳のスタート台に配置されたライトは、ひとつのライトで1位の選手、2つのライトで2位の選手、3つのライトで3位の選手を示す。

スイスタイミングの内部へ

スイスタイミングはスウォッチ・グループ内の独立企業。グループ内他社で開発したものも含めて、ひとつの技術へと結実させる
 スイス(オメガ)タイミングが拠点を構えるのは、ジュネーブからクルマで約2時間ほどの場所でオメガもあるビエンヌから近しいコルジェモン(Corgémont)という地域だ。現在のヘッドクォーターは、かつてETAがあった建物の隣に2010年に設立。この社屋には約200名の社員が勤務しており、そのうち150名ほどが研究開発を行うR&D部門に属しているエンジニアだという。スイスタイミングは元々オメガとロンジンによって設立された、タイムキーピングに特化した企業であり、現在はスウォッチ・グループに属するひとつの独立企業である。オリンピックのオフィシャルタイムキーパーを務める親会社のために計時を担当することからオメガタイミングという特別なブランドが認知されているが、実際はスウォッチ・グループの他のブランドがタイムキーパーを務めるオリンピック以外のスポーツイベントにも多く参画している。スイスタイミングが担当しないものも合わせると、大きなスポーツイベントは年に500以上も実施されているということで、彼らが発展させてきた技術は多くの場面で目に触れる機会がありそうだ。

 さて、スイスタイミングで僕が見たものはパリオリンピックで導入予定となっていた、最新の計測システムであるスキャン オー ビジョン アルティメートとコンピューター ビジョンカメラ、そしてブロードキャストプログラムの根幹を担う“ヴィオナード”の操作方法だ。僕が訪れた4月上旬のタイミングは、これらのシステムを用いてスムーズにブロードキャストに進めるかどうか、訓練とテストが繰り返されている時期だった。冒頭に550名のタイムキーパーが今大会に参加していると書いたが、新導入されるシステムを含めて完璧に操作し、選手の情報やレースの記録、パフォーマンスの詳細やリプレイ、グラフィックによる再現などに至るまで、世界中の放送局に作成したグラフィックをリアルタイムでミスなく渡せるよう、手順を隈なくチェックしていたのだ。

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