“オメガがスポーツ計時”というイメージとは、正直まったく違った次元の技術と研究がされていたことに驚いた。

今大会のタイムキーピングにまつわる数字。前回大会からタイムキーパーは20名ほど増員されつつも、導入された機材の総重量は減少させた。
 まず今大会から導入された新技術についてだが、これはもはや時計で時間を正確に計測するという次元の内容ではない。スキャンオービジョンアルティメートとコンピュータービジョンカメラというふたつの最先端機器が新たに登場、前者は秒間で最大4万枚のデジタル画像を記録でき(従来品は秒間1万枚)、後者はひとつ、ないしは複数のカメラシステムを組み合わせて継続的に記録した選手などの動きを、競技ごとにトレーニングされたAIモデルに取り込むことができる、というものだ。

 この説明だけではあまりに想像が難しいのだが、オメガは例えば陸上競技のゴール判定のために、従来は秒間1万枚の写真を撮影・合成し接戦時における審判の判定を助けてきた。また、我々が普段スポーツ中継を見ている際、例えば競泳で世界記録のラインやレーンごとに選手のラップタイムが表示されるのを目にしているはずだ。実はああしたグラフィックもオメガタイミングがリアルタイムで計測、製作して各放送局に配信している。今回技術がアップデートされたことにより、より正確な判定とより良い視聴体験が実現したというわけだ。

スキャンオービジョンアルティメート。主に陸上競技と自転車トラックレースにおいて、ゴールラインを通過するすべての選手の合成写真を作成して、公式結果を判定する。

コンピューター ビジョンカメラ。競技が行われているあいだのパフォーマンスを複数のカメラで追うことで、どんな動きが優れていたのかなどのデータを抽出可能。今回の進化で、選手にタグを取り付けることなく追跡可能となった。

次世代グラフィックテクノロジー”ヴィオナード”。4K HUDの超高精細なグラフィックをリアルタイムで生成し、種目ごとに結果や選手のパフォーマンスをよりわかりやすく、臨場感たっぷりに表現している。
 回を追うごとにオメガが追跡することのできるデータは増え続けているのだが、日本でも人気の高い体操競技、競泳、テニスなどでは以下のような情報がリアルタイムに提供されている(それが映像に反映されているかどうかは、各放送局の判断に委ねられる)。

【ゆか競技】

ラインを超えているか
ジャンプの高さ
滞空時間
ジャンプ回転中の詳細情報(足の角度など)
【競泳】

ライブポジション
ライブスピード
ストローク数
【テニス】

サーブリターンの反応時間
サーブリターン方向
ラケットの正確な位置
 オリンピックで実施されている32競技、329種目では目に見える単純な記録以外にも選手ごとに細かな情報がトラッキングされているのが分かる。これによって、競技の採点の正確さが向上しており、さらに僕らは、注目している選手の今回のパフォーマンスがどうだったのか知ることもできる。


1932年以来、オメガが発展させてきた計時の歴史
手動計測から始まり1940年代には自動計測を模索、デジタル計測へ積極的に移行した1960年代
  「10分の1秒」。これは1932年当時、オメガが世界最高水準で実現したストップウォッチの計測精度である。多くの精度コンクールで高い成績を収めていたオメガは、この機械式クロノグラフで初めての大型スポーツイベントにおけるタイムキーパーという大役を全うした。当然、このポケットウォッチ型のクロノグラフは手動で操作されていたわけだが、デジタル化の流れは腕時計の何倍も早く、1964年にはコンピューター技術が導入され、1968年には電子計時技術がすべての競技で使用された。特に競泳ではタイムキーパーが手動でタイムを測るのではなく、選手自らがタイマーをストップする仕組みが導入されていくのである。これはいまでこそ一般的だが、画期的かつ正確性も担保されたものであった。オメガが競泳でタッチパッドによる計測を実用化したのは、1967年のパンアメリカン競技大会である。

 なお、それ以外に普及した技術に写真判定があるが、これは1948年から導入され始めていたという。フォトセル(光電子装置:選手がフィニッシュラインを通過した正確な瞬間を記録する装置で、ゴールテープの代わりに用いられた)の発明と合わせて接戦時の判定に寄与した。もっとも、当時はそうした判定には2時間がかかったようで、すべてのレースで実施できるような代物でもなかったが、現在では競技と同時進行でライブ判定が可能なまでに技術が発達している。

オメガがオリンピックの計時用に初めて開発した、スプリットセコンドクロノグラフ。1932年のロサンゼルス大会で使用された30個のクロノグラフにまつわるお話はこちらの記事でご確認を。

1932年、初めてタイムキーパーを務めた大会での計時の様子。8つのストップウォッチを収めた器具で、同時に最大8名の選手の記録を行っていた。ちなみにすべて手動。

マジックアイ(1948年)。フォトセルと合わせて、集団で選手がフィニッシュラインを超えたとしても正確な順位付けができるように導入された。

競泳では1956年より半自動計測が始まり、1968年大会ではタッチパッドが導入されていた。

1984年大会、陸上でのゴール判定の画像。
1960年代から発達したブロードキャストプログラム
 その後もオメガは多種多様な競技において、タイム以外の要素を計測するためにトラッキング技術を向上させていくのだが、同時に発達したものがブロードキャストプログラムである。これは、1961年ごろにはすでに着手され、1964年大会で初めて導入された。計測技術とブロードキャストプログラムは別々に生まれたものではなく、競技からリアルタイムで得られる情報が年々増え続けたことで、審判や視聴者を含めて見ている人々にいかに伝えるかを考えた末に生みだされたのが本当のところだろう。

 2018年にはポジションマッピングが実用化され、アスリートの動きに追従した映像を生み出せるようになった。これは次世代型のブロードキャストプログラムにつけた先鞭とも言えるが、その背景でオメガが開発しているものは多岐にわたる。その大きな要素として、タイムキーパーの存在がある。今大会では550名ものタイムキーパーが導入されたということだが、最新機器は計測とブロードキャストを同時に処理するものがほとんどであり、種目ごとにカスタマイズされている。そのため1人のタイムキーパーが複数種目を兼ねるということが難しく、それぞれに特化してトレーニングされているのだ。スポーツイベント、特にオリンピックにおいてタイムキーパーは“どんなミスも許されない”わけで、複雑化した計器類を完璧に使いこなすことが求めれている。

 なお、550名のうちスコアリングを担当する人はスイスタイミング社に属しており、射撃など特殊な競技については、オリンピックのためにエキスパートを社外から雇い入れるそうだ。

2010年から導入されたスタートガン。スタートの合図が聞こえる時差をなくすために考案されたもので、引き金が引かれると先端が光り選手の背後で音がなるように装置が配置されている。

陸上競技で目にするスターティングブロックにはスピーカーが組み込まれており、スタートの合図が聞こえるタイムラグをなくしている。スタート時に選手がかける圧力を検知しその荷重の情報を会場内のコンピューターに送信。フライングを視覚的に確認する装置としての役割も果たす。

競泳でおなじみのタッチパッド。選手が1.5〜2.5kgの圧力をかけるとタイマーがストップするシステムだ。プール内の波でタイマーが止まらないよう、この圧力値に設定されている。

競泳のスタート台に配置されたライトは、ひとつのライトで1位の選手、2つのライトで2位の選手、3つのライトで3位の選手を示す。

スイスタイミングの内部へ

スイスタイミングはスウォッチ・グループ内の独立企業。グループ内他社で開発したものも含めて、ひとつの技術へと結実させる
 スイス(オメガ)タイミングが拠点を構えるのは、ジュネーブからクルマで約2時間ほどの場所でオメガもあるビエンヌから近しいコルジェモン(Corgémont)という地域だ。現在のヘッドクォーターは、かつてETAがあった建物の隣に2010年に設立。この社屋には約200名の社員が勤務しており、そのうち150名ほどが研究開発を行うR&D部門に属しているエンジニアだという。スイスタイミングは元々オメガとロンジンによって設立された、タイムキーピングに特化した企業であり、現在はスウォッチ・グループに属するひとつの独立企業である。オリンピックのオフィシャルタイムキーパーを務める親会社のために計時を担当することからオメガタイミングという特別なブランドが認知されているが、実際はスウォッチ・グループの他のブランドがタイムキーパーを務めるオリンピック以外のスポーツイベントにも多く参画している。スイスタイミングが担当しないものも合わせると、大きなスポーツイベントは年に500以上も実施されているということで、彼らが発展させてきた技術は多くの場面で目に触れる機会がありそうだ。

 さて、スイスタイミングで僕が見たものはパリオリンピックで導入予定となっていた、最新の計測システムであるスキャン オー ビジョン アルティメートとコンピューター ビジョンカメラ、そしてブロードキャストプログラムの根幹を担う“ヴィオナード”の操作方法だ。僕が訪れた4月上旬のタイミングは、これらのシステムを用いてスムーズにブロードキャストに進めるかどうか、訓練とテストが繰り返されている時期だった。冒頭に550名のタイムキーパーが今大会に参加していると書いたが、新導入されるシステムを含めて完璧に操作し、選手の情報やレースの記録、パフォーマンスの詳細やリプレイ、グラフィックによる再現などに至るまで、世界中の放送局に作成したグラフィックをリアルタイムでミスなく渡せるよう、手順を隈なくチェックしていたのだ。

カルティエはミニサイズのタンク ルイ カルティエを発表した。

ワンサイズで全員に合うわけではない。これはラージ、スモール、ミニのサイズ展開で提供される。

小柄な手首はもちろん、大柄で毛深い手首にもよく似合うミニはInstagramで華々しく紹介され、一躍話題となった。実はこのミニLCには年上のいとこが存在する。それが今回新たにイエローゴールドで登場したタンク アメリカン ミニだ。このミニモデルはスモールとラージサイズが同時にリリースされた。そこでスモールとミニを実際に手に取って、よりわかりやすい比較を行うことにした。

タンク アメリカンは1989年に初めて発表され、当時の大き目な時計に対する現代的な需要に応える形で登場した。YGでつくられ、タンク サントレにインスパイアされたカーブを描くケースが特徴だったが、よりコンパクトでがっしりとしたシェイプを持っていた。そのあとアメリカンはデイト機能やクロノグラフなど、さまざまな機能を備えた多彩なバージョンが展開された。昨年、カルティエはタンク アメリカンのラインを控えめながらも視覚的に分かりやすいデザイン変更を加えて刷新し、ステンレススティールやローズゴールドの新作モデルを、ダイヤモンドやブレスレットのバリエーションとともに発表した。アメリカンはより薄く、よりスリムで、より洗練されたデザインとなり、タンク サントレのオリジナルモデルに1歩近づいたといえる。
現在、時計愛好家たちは小さな時計に夢中になっている。だが同じ愛好家たちが巨大なタンク サントレに熱狂している姿も見受けられる。だからこそ、カルティエが最新モデルで過去のデザインを繰り返すのも理解できる。2017年にA Week On The Wristで試したミディアムサイズのアメリカンは廃止され、今残っているのは44.4mm×24.4mmのラージサイズ(ヴィンテージのジャンボサントレに近い9リーニュ、約2cm)、35.4mm×19.4mmのスモールサイズ(ミドルサイズのヴィンテージ サントレに近い8リーニュ、約1.8cm)、そしてヴィンテージの“レディース”サントレに近い28mm×15.2mmのミニサイズだ。

新しいアメリカンのYG製ケースは、サテン仕上げの側面、レール部分にはポリッシュ仕上げが施されており、エッジの輪郭がより際立っている。このケースはスモールやミニサイズであっても建築的な印象である。表面はまるでミース・ファン・デル・ローエのブルーノチェア フラットバーのように滑らかだ。ケース裏側にはカーブした裏蓋が採用されており、タンク サントレのような劇的なカーブではないものの、十分に曲線的に見えるデザインだ。結果技術的に製造しやすくなりながら、湾曲しているように見える時計が誕生した。
ミニとスモールのダイヤルはどちらもいたってシンプルだ。両モデルともシルバーのバーティカルサテン仕上げが施され、すべてのアメリカン同様、チャプターリングの両端がケースのカーブに合わせて湾曲している。そのためダイヤルには多くの余白が生まれ、ローマ数字がより際立つデザインとした。サントス ドゥ カルティエやタンク フランセーズ、1950年代以降のタンク サントレと同様、八角形のサファイア製リューズはフラットでファセット加工が施されている。スモールとミニモデルはともにクォーツで動き、30mの防水性を備えている。

再びスモールウォッチの話題に戻ろう(これは至るところで話されている)。ときに、まるで“ワンサイズで全員に合う”ような時代に生きているように感じることがある。そして個人的な好みを内に秘めておくプレッシャーが重くのしかかる。“その小振りな時計、君にも僕にも…そして、この部屋で試着したすべての人に似合っているね”と、明らかにつくり笑いを浮かべながら言うのだ。なぜなら、時計愛好家の選ぶ権利を否定してはならないのだから!
このような状況では、誰もが持っていた何がよいかという感覚が政治的な空気のなか消え去ったように思える。そんなときこそ、カルティエのようなブランドに解決策を求めるべきだ。彼らは3つのサイズでアメリカンを提供しており、いずれも見た目はほぼ同じ(ケースのサイズの違いを除いて)である。ラージ、スモール、ミニから選べるというのは、2024年における時計界の民主主義といえるだろう。時計のサイズやミニモデルが話題になる今日だが、カルティエは100年近く前からさまざまなサイズの時計を提供してきた。またどのモデルの最小サイズが真に“女性向け”としてつくられたものなのか、実際にはよく分からない。

はっきり言っておくが、誰でも好きな時計を自由につけられるべきだという考えをこれからもずっと貫くつもりだ。ただスモールウォッチを推奨する風潮を押し付けないでほしい。自分の意志で選ぶことはできるから…もしそうする気になればの話だが。そして私は実際、YGのタンク アメリカン ミニ(そしてWatches & Wondersで見たミニLC)を手に入れた
 YGモデルが登場するまで、自分がタンク アメリカン好きだとは言えなかった。ずっとタンク サントレ派だったし、正直アメリカンは今のところサントレに手が届かないけれど、アメリカンならというサントレ派向けの時計だ。スモールのYGは1万1600ドル(日本円で約165万円)、そしてミニのYGは122万7600円(税込)だ。

ヴィンテージノルマル、シノワーズ、サントレに対する執着以外で、より商業的に流通しているタンクに引かれることはあまりなかった。しかしタンクをつけると何かたまらない(いい言葉が見つからない)、控えめでありながらも抗えない魅力がある。仕立てのいい黒いパンツとパリッとした白シャツというシンプルなスタイルに、袖口からタンクがちらりと見える女性になりたいと憧れているのだ。もしかするとこのYG製アメリカンは、ミニマルな美学を最大限に表現するための切符なのかもしれない。アメリカンは控えめでありながらも、太めのブランカード(フランス語で担架の意。タンクのケース側面が担架のハンドルに似ていることからその名がついた)が手首で存在感を示している。そのカーブにより手首のラインに自然にフィットし、肌に完全に平らに乗るのではなく、より個性的で官能的な印象を与えてくれる。

ミニとスモールのあいだでしばらく悩んだ結果、スモールのほうが自分にしっくりくると感じた。ただクロコダイルストラップは外して、シンプルなカーフレザーに付け替えたいと思った。そこにいつものレイヤーやカラフルな服、たくさんのジュエリーと一緒にこの時計をつけるだろう。なぜならミニマルやミニというスタイルは、自分らしくないからだ。

魅力的な機能だが、もう少し洗練されたデザインが必要だろう。

フォーメックスは技術革新において確固たる評判を築いている。同社の姉妹会社であるデクセルは、数多くのスイスブランドにパーツを製造・供給するサプライヤーだ。厄介な秘密保持契約(NDA)があるため、どのブランドが何を作っているのか明らかにされないことが多いが、デクセルのウェブサイトには、ジラール・ペルゴやモンブランのブレスレット、ウブロのケースなどが掲載されている。これらの技術の多くは、デクセルのインハウスブランドとも言えるフォーメックスにも生かされている。主にブレスレットやクラスプ、ケースの技術で知られるフォーメックスだが、最近GMT機能に挑戦すると決意したようだ。その結果がフォーメックス ストラトス UTCであり、フライヤーGMTとして機能的なパイロットウォッチに仕上がっている。デザインは少し粗いものの、ストラトス UTCはリーズナブルな価格ながら斬新なGMT機能を提供した。

 ストラトス UTCは“フライヤー”GMT機能を備えているが、通常のリューズ操作ではなく、2時位置と4時位置にあるプッシャーで現地時間の時針を操作できる仕様になっている。リューズを引き出すことなく(またテンプの動作を止めることすらせず)、ローカルアワーを1時間進めたり戻したりすることができるのだ。
 フォーメックスは、ETA 2892にデュボア・デプラ社製のカスタムモジュールを組み合わせることでこの機能を実現している。日付はローカルタイムの時針と連動しているが、ミドルケースの左側には、独立した日付修正機構が隠されている。日付は6時位置のインダイヤルに表示され、9時位置には小さな昼夜表示が配置されている。また見返しリングに24時間表示があり、さらに双方向回転ベゼルにも24時間スケールが付いている。このため、同時に3つのタイムゾーンを追跡できるが、そのぶんデザインはかなり賑やかである。フォーメックスはムーブメントを日差±7秒の精度に調整しており、サファイア製シースルーバックをとおしてムーブメントを見ることができる。


 フォーメックスはこれらすべての機能を41mmのコンパクトなステンレススティールケースに収めている。ラグからラグまでは47mm、厚さは快適な11.8mmで、100mの防水性能を備えている。ストラトス UTCはストラップまたはブレスレット(ラグ幅20mm)で提供されるが、私はブレスレットを強くおすすめする。ブレスレットには工具不要のマイクロアジャスト機能とクイックリリースが完備。フォーメックスはケースとブレスレットの製造や仕上げにおいて優れており、ストラトス UTCも例外ではない。ブレスレットは頑丈でありながら薄く、手首にしっかりとフィットした。

 さらにダイヤルにはサンレイ仕上げ、インダイヤルとアウターリングには異なる質感のグレイン加工を施している。ダイヤルのカラーオプションはブルー、グレー、グリーンの3種類で、すべてに鮮やかなオレンジのアクセントが加えられている。ブレスレット仕様のフォーメックス ストラトス UTCは3990ドル(日本円で約60万円)で、ストラップ仕様は3850ドル(日本円で約58万円)。現在予約注文受け付け中だ。



我々の考え
フォーメックスの実用的なGMTアプローチは気に入っているが、この時計は技術仕様や複雑機構を優先して、デザインが後回しにされた印象を受ける。ダイヤルは情報量が多く、さらにベゼルがごちゃついた感じだ。それにストラトス UTCにはフォントが多すぎる。それでもケースの装着感はとてもよく、厚さわずか11.8mmのGMTというのは軽視できないポイントだ。またポリッシュ仕上げ、サテン仕上げ、マット仕上げが混在しており、仕上げもきちんとしている。

 プッシャーでGMTを操作するのは目新しいわけではない。たとえばパテックの5164やブルガリのオクト フィニッシモ クロノグラフ GMTがその例だ。しかしフォーメックスがETAのムーブメントにモジュールを追加し、この機能を比較的手ごろな価格に抑えたことは評価に値する。
 フォーメックスがこの機能を別のモデルに採用するか、ストラトス UTCのデザインを洗練させてくれることを期待している。というのも、このアイデアには大きな可能性があるからだ。ストラトス UTCのデザインは自分には合わないかもしれないが、フォーメックスの技術力、エンジニアリング、製造に関しては誰もが評価できるものだ。
フォーメックス ストラトス UTC。316Lステンレススティールケース、41mm × 11.8mm(ラグからラグまで47mm)、100m防水。48クリックの双方向回転SS製ベゼル。ストラトス UTCは、カスタムされたデュボア・デプラモジュールを搭載した自動巻きETA 2892ムーブメント(日差±7秒)を使用した“フライヤー”GMT機能、サファイア製シースルーバックからムーブメントを鑑賞できる。6時位置に日付表示。サンレイ仕上げのダイヤルはグリーン、ブルー、グレーの3色展開。ブレスレットは工具不要のマイクロアジャストとクイックリリースの付いたスクリューリンク。メーカー希望小売価格はブレスレット仕様が3990ドル(日本円で約60万円)、ストラップ仕様が3850ドル(日本円で約58万円)。

これは業界的にかなり高い評価を受けているといえるだろう。

彼は『One Good Reason』や『Wanted』などのヒットシングルでカントリーアルバムチャートで1位、ビルボード200では7位を獲得している。先日には新曲『If You Change Your Mind』もリリースした(記事掲載時)。節目として特筆すべき機会が多いアーティストといえるだろう。そして、彼にとってその喜びを表現する手段のひとつが時計なのだ。
 現在29歳(記事掲載時)のヘイズ氏は10年前、カントリー歌手を目指してルイジアナからナッシュビルに初めて移り住んだ。当時の彼はフォッシルの時計をいくつか所有しており、今でもそのころの製品に愛着を感じているというが、現在はキャリアのハイライトごとに増やしてきた成熟したコレクションを持っている。ヘイズ氏が時計を購入するのは節目や目標を達成した時だけで、彼のコレクションにはそれぞれの物語がある。ここに紹介する時計も例外ではない。

彼の4本
ベル&ロスのパイロットウォッチ

ヘイズ氏は2013年にデビューアルバムである『The Four』がグラミー賞3部門にノミネートされたあとで、初めて時計を購入した時のことをはっきり覚えている。時計に大金を費やすことに抵抗がなかったのは、これが初めてだった。そして結果的に、グラミー賞の獲得時にその時計を身につけることとなった。この時計を購入する際、彼はベル&ロスのふたつのモデルで迷っていたという。ひとつはもう片方より約400ドル高かった。
マネージャーと時計の購入について話していると、マネージャーは「5年後には400ドルの差額については忘れるが、時計は残る。妥協すればその事実ものちに残る。この先も常に妥協することになるからだ」と言った。
そのため値段が高くても本当に欲しいモデルを購入することにした。ヘイズ氏によると、このときの購入体験はすぐに報われ、その後に続く大きな物語の一部となったという。
 「ジョン・メイヤー(John Mayer)が激励のためにグラミー賞の楽屋に駆け込んできたんだ。僕の時計に気付いてくれることを期待したけど気付かなかったから、自分から話題にしたんだよ。そしたら彼は『ああ、いや、確かに目の端で見ていたよ!』と言ったんだ」
メイヤー氏が続けて「その時計のことを聞こうと思っていたんだ。詳しく教えてくれ!」と言ったため、ふたりはグラミー賞の舞台裏でこの時計について約5分間ほど語り合った。

ロレックス チョコレートダイヤルのデイトナ Ref.116515

ヘイズ氏がロレックスに興味を持ち始めたのは、ロレックスの傘下ブランドであるチューダーが2014年に1日で10都市を巡る記録的なツアー用の時計をプレゼントしてくれたことがきっかけだった。その時計はツアー終了後にチャリティーオークションにかけられたが、この時を境に彼のロレックスへの関心が芽生えたのだという。「特別な機会につける時計を探していて、このローズゴールド(RG)製のデイトナにたどり着いたんだ。思い切って大きな夢を描いていたんだよ。そしてこの時計がどれだけ気に入ったかを友人に話したら、何の前触れもなく彼が突然プレゼントしてくれたのさ。彼とはいくつかのイベントで共演して知り合ったんだ」
ヘイズ氏は冗談混じりに「2年間警備員を雇っていたけど、それは僕のためじゃなくてデイトナのためだったんだよ!」と話してくれた。
ウブロ ビッグ・バン ジーンズ

履き古したジーンズほどカントリーっぽいものがあるだろうか? ただの常套句ではなく、ヘイズ氏は「ありとあらゆるデニムに夢中」だと語る。
 「2013年ごろはジーンズとデニムジャケットばかり着ていたよ」と彼は言う。「僕にとってはそれが制服みたいなものだったんだ」
そこで、そのスタイルに合う時計を買ったのだという。
ブライトリング ヴィンテージ コスモノート

「昔から航空関係に興味があって、ナビタイマーが好きだったんだ」とヘイズは言う。「でもこの時計が気に入った理由は、ナビタイマーではないからなんだ。コスモノート独自の24時間表示のダイヤルなんだよ」


ヘイズ氏はシドニーでロストバゲージを経験してユニクロでステージ衣装を調達することなった。その際、時計を買う予定はなかったもののひときわ目に留まったのだという。「この時計やベル&ロスのことを話題にしてくれる人がいると、航空分野が好きな仲間と話しているんだなってわかるんです」と彼は言う。そしてその会話がパイロット免許を取るまでの励みになっているのだという。

もうひとつ
マーティン 1958年製Size-5

 「ギターは僕の仕事道具だよ」とヘイズ氏は言う。「仕事に欠かせないものだから、ストーリーがあるとさらに魅力的なんだ」。彼のお気に入りは日本で入手した1958年製のマーティン Size-5だ。「壊れて修理されたギターを見つけるのが好きなんだ。そういったギターのほうが価値があって、弾きやすいことが多いからね」
 ヘイズ氏がこのマーティンを特に気に入っている理由には、見た目だけでなくもちろんその音色も含まれている。「年月とともに木材のコーティングが剥がれて、音色がより豊かでエキサイティングなものになるんだ。弾いていてもっと楽しくなる」。彼は曲作りの旅に出る時にはこのマーティンを持って行く。ユニークなチューニングが強みなのだという。「昔はこれらのギターは“練習用”として作られていたんだ」と彼は言う。「だからほかのギターにはない特別な演奏ができるんだ」

ルイ・エラー×ヴィアネイ・ハルター レギュレーターIIを発表した。

両者の最初のコラボレーションをまだご存じない方のために説明すると、2020年に登場した初代ルイ・エラール×ヴィアネイ・ハルター レギュレーターは、ハルター独特の美学を広く届けるための試みとして作られた。ルイ・エラールが製造を担当し、ハルターがデザインを手掛けたこのレギュレーターは、価格が3500スイスフラン(日本円で約59万2000円)に設定され、ハルターのオリジナル作品に小売市場やセカンダリーマーケットで一般的につけられる高額な価格とは一線を画していた。

2020年、ルイ・エラールとヴィアネイ・ハルターによる初のコラボレーションが実現した。
 両者において初のコラボレーションが、ハルターのモダンな美学を反映したものであったのに対し、今回の第2弾はハルター氏の代表作であるアンティコアからインスピレーションを得たものだ。スチームパンクを思わせるその独特のデザイン言語は、温かみのある金属の色合い、シャープに面取りされたフォルム、そして何よりも特徴的な(しかも大量の)リベットによって際立っている。今回のレギュレーターは、特異で魅力的なアンティコアのパーペチュアルカレンダーに見られる分割式の文字盤と精神的に通じるデザインを強く表現しているといえよう。

 このコラボレーションでは価格を抑えるために機能をシンプルにし、時計は時刻表示のみに絞ったレギュレーターモデルとして仕上げられている。ここにはハルターならではの複雑機構は存在しないが、その代わりにデザインが全面に押し出される形となった。文字盤上には、時・分・秒表示がそれぞれ分割され、独立したレイアウトで配置されている。これまでのルイ・エラールのレギュレーターは、基本的にセリタ製ムーブメントSW266-1を採用した対称的な配置が主流だったが、今回は大胆に非対称性を採用。ムーブメント自体を時計ケース内で数度回転させたデザインとなっている。その結果としてリューズが2時位置に配置されることになり、この小さな変更が大きな視覚的インパクトを生み出し、より“ハルターらしい”仕上がりとなっている。文字盤上で盛り上がったインダイヤルと外周のチャプターリングにはサーキュラーブラッシュ仕上げが施され、ダイヤモンドポリッシュによるシャープな面取りが加えられている。これらの立体的な要素は垂直にヘアライン仕上げが施された文字盤プレートの上に配置され、ハルターらしいブルースティール針がその美観を完成させている。



 時計のベゼルにもサーキュラーブラッシュ仕上げが施され、ポリッシュ加工された12個の“レッドギルト”(ブランドによると5NのPVDコーティングが施されたもの)のリベットが、事実上の時刻マーカーとして配置されている。ケースのサイズは直径43mmとかなり大きいが、厚みは10.95mmと適度に抑えられている。またラグ幅が22mm、ラグトゥラグの長さが49.6mmであることから、装着時には非常に力強い存在感を放つであろうと想像できる。さらに特筆すべきは、リューズを取り囲むリベットのデザインであり、時計愛好家ならフランスの時計職人によるものであることをひと目で見抜けるような際立った特徴を有している。

左のモデルはeコマース専用で、右のモデルは小売店専用である。
 今回のコラボレーションでは、実は2種の異なるモデルが発表されている。両モデルともレイアウトは同じだが、文字盤の配色が反転している。一方は公式eコマース限定で販売され、もう一方はパートナーである小売店専用で展開される予定だ。それぞれ178本限定となり、価格は4444スイスフラン(日本円で約75万円)に設定されている。

我々の考え
これは前述のとおり釘づけになる(リベットを使った=riveting)デザインである。冗談はさておき本作はルイ・エラールのレギュレーターモデルとして非常に魅力的なアプローチであり、アラン・シルベスタイン、クドケ、マッセナ LABなどと行ってきた強力なコラボレーションモデルのなかでも、現時点では特に私のお気に入りとなっている。
 近年、高級時計メーカーが有する強力なデザイン言語をより手ごろな価格帯のモデルに反映させようとする試みが数多く見られる。つい先日もグローネフェルド(Grönefeld)兄弟が自身の新ラインでこのコンセプトに即したモデルを発表したばかりであり、MB&Fから派生したM.A.D.エディションもここ数年話題の中心となっている。さらにはムーンスウォッチでさえも、このアイデアに当てはまる時計だと言えるだろう。

 ルイ・エラールとヴィアネイ・ハルターのコラボレーションにより誕生した今回の時計は、デザイナーとしてのヴィアネイ・ハルター(Vianney Halter)氏の美学に魅了されながらも、時計師としてのハルター氏が要求する価格には手が届かないという人々にとって非常に魅力的な一品となっている。今回のモデルは初回コラボレーション時の価格である3500スイスフラン(日本円で約59万2000円)よりも高額になっているが、新モデルは以前のモデルよりもはるかに洗練されていると感じられる。しかしケースサイズの大きさについては、個人的には気になる点のひとつである。というのも、ハルターの作品はこれまで一貫して比較的小振りなサイズ感を保ってきたからだ。特に時刻表示のみのモデルでは36mm程度が主流であった。しかしこの時計を実際に手に取って見たわけではないため、この点についての最終的な判断は保留としたい。

基本情報
ブランド: ルイ・エラール×ヴィアネイ・ハルター(Louis Erard x Vianney Halter)
モデル名: レギュレーターII(Le Régulateur II)
型番: 85246AA03.BVA172(小売店専用モデル)/85246AA02.BVA172(eコマース専用モデル)

直径: 43mm
厚さ: 10.95mm
ケース素材: SS
文字盤色: レッドゴールド(小売店専用モデル)/シルバー(eコマース専用モデル)
インデックス: プリント
夜光: なし
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: レザー


ムーブメント情報
キャリバー: セリタ SW266-1
機能: レギュレーター表示による時・分・秒表示
直径: 25.6mm
厚さ: 5.6mm
パワーリザーブ: 38時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 31

大塚ローテックが手がける最新作は、ワンダリングアワー機構を搭載した2025年新作モデルが登場

独立系時計ブランドは近年その存在感を強めていますが、日本発ブランドとして今最も注目を集めているのは、カーデザイナーを務めたのちプロダクトデザイナーとして独立した片山次朗氏による大塚ローテックの名を挙げる方も多いのではないでしょうか。昨年のGPHG2024では、ダブルレトログラードを搭載した6号でチャレンジウォッチ賞を受賞。また、オークションハウスのフィリップスが日本をテーマに開催したTOKI-刻-オークションでは、チャリティーとして出品されたユニークピースの6号 東雲 “SHINONOME”が約1100万円で落札されるなど、その勢いはとどまるところを知りません。

大塚ローテック 5号改
スーパーコピーn級品 代引きそんな大塚ローテックから2025年の新作モデルとして発表されたのが5号改です。同ブランドの時計といえば、6号で採用されたダブルレトログラードや、7.5号に搭載されたジャンピングアワー機構など、時分針を使った一般的なやり方ではなく独特な時刻表示が特徴。本作も例外ではなく、大塚ローテックとして初めてワンダリングアワー機構が採用されました。

ワンダリングアワー、別名サテライトアワーとも呼ばれるこの機構は、回転する数字盤と固定された目盛りを組み合わせて時間を表示する独特な仕組みです。一見その仕組みが分かりづらいかもしれませんが、一度その動作原理を理解すると、時刻表示が非常に直感的で効率的であることに気づくと思います。
時間と分をひとつのインジケーターで表現するこの方式は、視覚的にもユニークで、スイスの時計ブランドでもこの表示方式を採用しているモデルがあります。例えば、記憶に新しいモデルとしては、オーデマ ピゲのCODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ スターホイールやウルベルクのUR-100などです。

片山氏は、ワンダリングアワー機構を独自開発のモジュールをミヨタ製ムーブメントに組み込むことで実現しました。ワンダリングアワー機構は、見た目は複雑な仕組みに見えるものの、実際には非常に静的なメカニズムです。リューズで時刻を合わせたり、早送りされた動画ではディスクが次々と勢いよく回転する様子が確認できますが、通常の動作時にはそこまで派手な動きになりません。

しかし、5号改では、8時位置に配置されたローラーに時ディスクが直接当たる仕組みを採用することで、時ディスクが1時間に2回、瞬時に切り替わるダイナミックな動作を実現しています。この工夫により、メカニズムの動きを視覚的に楽しめるだけでなく、ジャンピングアワーのような時間の切り替わりを体感できる設計となっています。さらに、5時位置に配置された秒ディスクは、時ディスクの位置に影響されることなく常に動き続け、その一貫した動作を視覚的に楽しむことができます。

モデル名に5号“改”とあることからも分かるように、このモデルにはオリジナルである5号が存在します。2012年に登場した5号は、レギュレーターによる独特な時刻表示と日付表示機構を備えたモデルでした。興味深い点は、機構が異なるにもかかわらず5号の名を受け継いでいることです。これは、大塚ローテックがモデル名を決定する際に、デザイナーである片山氏が手掛けたケースデザインの順番を基準としているためです。

5号改のケースデザインは、オリジナルの5号をもとにリファインされています。また、両モデルにはいくつかの共通点も存在します。そのひとつが、どちらも2個のボールベアリングが正面から見える形で採用されている点です。そもそも片山氏にとってボールベアリングは、子供の頃に夢中になっていたラジコンの憧れのチューンナップパーツだったそうです。通常、腕時計のムーブメントの軸受けには赤い人工ルビーが使用されますが、片山氏は高精度の象徴として感じていたボールベアリングを敢えて視覚的に楽しめる位置に採用しようとオリジナルの5号を作ったのだと言います。

5号改には、ミネベアミツミ社による日本製の高精度ボールベアリングが搭載されており、そのうち時ディスク切り替え用には、このモデルのために特別に製作されたもの。さらに、秒ディスクの中心に使用されているボールベアリングは2015年に発表されたもので、2025年現在でも世界最小とされる直径わずか1.5mmの精密パーツです。

5号改の価格は税込みで74万8000円。大塚ローテックがこれまで販売してきたモデルのなかでは最も高額なモデルですが、同じ機構を備えた他ブランドのモデルを考えると競争力のある価格と言えます。2025年3月に抽選販売される予定で、他のモデルと同様に日本からのみ購入が可能となっています。

実は、以前に取材で東京・大塚にある片山氏の工房を訪れた際、この時計のプロトタイプを目にする機会がありました。その時、真っ先に感じたのは、「なんて片山さんらしい遊び心あふれるデザインなんだろう」ということです。ワンダリングアワー機構の起源は17世紀に遡ります。もともとはナイトクロック用に開発されたこの機構は、ローマの時計師カンパーニ兄弟がローマ法王のために設計したものがその始まりとされています。歴史のあるクラシックな機構ですが、片山氏の計器を連想させるようなデザインが落とし込まれた5号改は、まったく異なる印象を与えます。

デザイン上で興味深い点は、多くのワンダリングアワー機構を搭載したモデルでミニッツトラックは文字盤の上部または下部に配置されているのに対し、5号改ではそれが右端にデザインされていること。この工夫により、左手首に時計を装着した際、袖口で文字盤の一部が隠れてしまっても、時間表示部分がしっかり視認できるよう配慮されています。ケース径40.5mm、厚さは風防込みで12.2mmと決して小さな時計ではありませんが、視覚的な独自性と実用性を両立させた、5号改ならではの設計となっています。

そして、5号改では時ディスクが指し示す分表示のずれ(バックラッシュ)を防ぐために薄く加工した歯車を2枚重ね、それらをバネで支える構造を採用しています。片山氏のデザイン哲学が詰め込まれた5号改は、視覚的な面白さと実用性を兼ね備えた、まさに信頼できる計器のような時計です。

このモデルが誕生した背景には、大塚ローテックが浅岡肇氏率いる東京時計精密との提携を果たしたことが大きく関わっているようにも感じました。提携によって製造本数の増加が実現しただけでなく、片山氏がこれまで多くの時間を費やしていたネジの旋盤加工といった作業から解放されたことで、新たなクリエーションに集中する時間が生まれたと伺っています。

さらに、今回のモデルで重要な役割を果たしているボールベアリングの採用にも、この提携が一役買っています。浅岡氏がプロジェクトTでミネベアミツミ製のボールベアリングを採用していた経緯があり、そこからのつながりで今回の採用が実現したのだそうです。提携による時間の確保と新しい技術の導入機会が、このモデルの実現に繋がった重要な要素でしょう。
なお、新作の5号改は、2月6日(木)から2月12日(水)まで、10時から19時50分のあいだ、WITH HARAJUKU 1Fエントランスで実機が展示される予定です。大塚ローテックは、現在ブティックなどはなくオンラインでの販売のみのため、その魅力を実際に確認したい方はこの期間に訪れてみてはいかがでしょうか。

基本情報
ブランド: 大塚ローテック(Otsuka Lotec)
モデル名: 5号改(No.5 KAI)

直径: 40.5mm
厚さ: 7.6mm(風防込ケース厚:12.2mm)
ケース素材: ステンレススティール
夜光: なし
防水性能: 日常生活防水
ストラップ/ブレスレット: カーフレザー

ユニクロ:2025年秋冬コレクションが登場。

ユニクロ:シー25年秋冬メンズはこちらをチェック

機能性素材でつくるテーラリング

2025年秋冬シーズンは、機能性素材を活かしたエレガントなテーラリングアイテムを提案。フォーマルなエレガンスとカジュアルな快適さを融合させ、オールシーズン着用できるモダンなウェアを幅広く展開する。

<第1弾>晩夏から秋冬まで快適に
コットンコクーンシャツ 3,990円
第1弾として先行発売されるウィメンズアイテムは、晩夏から秋冬まで長いシーズンで着用できるのが魅力。中でも注目は、ふんわりとしたバルーンシルエットが上品さを演出するコットンコクーンシャツ。ボリュームのある袖は、コーディネートにアクセントを添えてくれること間違いなしだ。

ディオール スーパーコピースウェット風のセーターには新色が仲間入り
スムースコットンクルーネックセーター 3,990円
やわらかく肌触りの良いコットン100%素材のクルーネックセーターは、スウェットのように見える遊び心溢れるデザイン。スウェットやデニムとあわせて、さらっとカジュアルに着こなせる。2025年秋冬は、レッドやオレンジ、グリーンなど、豊富なカラーバリエーションで展開される。

ミディ丈のキュロット
キュロット丈短め 3,990円
2WAYストレッチ機能を持つ素材で着心地も抜群なキュロットは、短めクロップド丈が新鮮。ワイドな裾幅となっており、スカート感覚で履けるのがポイントだ。

<第2弾>上質素材のアウターが勢揃い
ツイードテーラードジャケット 9,990円
第2弾では、機能性素材を採用したアウターや、上質なカシミヤニットなど、素材や機能性の高さを実感できるアイテムがラインナップ。たとえば、あたたかみのあるウールブレンド素材を用いたツイードテーラードジャケット。肩パッド入りで、本格的に仕立てられている。

アシンメトリーなペプラムスコート
フレアスコート 3,990円
ツイードテーラードジャケットとあわせてスタイリングするなら、同様の素材を使用したフレアスコートがおすすめ。アシンメトリーなペプラムデザインが目を惹く1着だ。パンツ型ライニング付きなので、安心して着用できる。

すっきりIラインシルエットのロングコート
ダブルロングコート 12,900円
ダブルロングコートは、すっきりとしたIラインシルエットが特徴。ダブルブレストや内ポケットなど、本格仕様のコートとなっている。左右どちらにもボタンホールを配したジェンダーレスアイテムだ。

天然羽毛を再現した"機能性中綿"を使用した機能性素材「パフテック」のジャケットも。手洗いOKな「パフテック」は、ダウンと同等の保温性を備えているのがグッド。ふわふわのフリース襟を配したマット素材のジャケットで、厳しい寒さも平気で乗り越えられそう。

“重ねてもかわいい”ワッフルニットベスト&セーター
ワッフルニットフーデッドベスト 3,990円、ワッフルニットクルーネックカーディガン 4,990円
ふくらみのあるワッフルの編み地がポイントのフーデッドベストとクルーネックカーディガンは、重ねて着こなすのがおすすめ。ベストを下に着て、フードだけ出したスタイリングを楽しんで。

ヒートテックカシミヤ&スカーフ付きセーターなど
カシミヤリラックスVネックセータースカーフつき 14,900円
軽くて暖かく、極上な肌触りのカシミヤ100%のアイテムも豊富。シアーなのに暖かい極暖ヒートテックカシミヤのトップスや、取り外し可能なスカーフ付きで、1枚でも着やすいよう小さめVネックで仕上げたセーターなどが揃う。

“クリーンもカジュアルもOK”フレアパンツ
フレアパンツ 5,990円
足元にフレアパンツをあわせれば、よりエレガントなルックに。ダブルブレストのテーラードジャケットと合わせればクリーンに、Tシャツやゆったりとしたトレーナーなどと合わせれば、カジュアルな印象に仕上がる。

パフィーバッグやベルトなどアクセサリー
ソフトパフィーショルダーバッグ 2,990円
※ネイビーの日本展開なし。
ちょっとした旅行にも最適な大容量パフィーショルダーバッグや、レザーベルトなど、アクセサリー類も用意。加えて、レースアップシューズやTストラップバレエシューズといったレザーシューズも豊富に揃うので、トータルコーディネートを楽しんでみて。

【詳細】
ユニクロ:シー 2025年秋冬コレクション〈ウィメンズ〉
第1弾発売日:2025年7月18日(金)~順次
第2弾発売日:9月5日(金)
販売場所:フルラインナップ 店舗、ユニクロオンラインストア予定
※一部商品を国内全店舗で展開。
商品ラインナップ:ウィメンズ 22アイテム 、メンズ 15アイテム 、アクセサリー 8アイテム
価格帯:
・アウター 7,990円~12,900円
・スカート&パンツ 3,990円~5,990円
・シャツ 3,990円
・ニット 3,990円~14,900円
・インナー 2,290円
・ドレス 4,990円~5,990円
・バッグ&シューズ&ベルト 2,990円~5,990円

G-SHOCK 新たな機能やシェイプの提案があるたびにさまざまなモデルが誕生してきた。

G-SHOCKにおいて“定番”として位置付けられ、大きく形状を変えず長く製造され続けてきたシリーズがある。ORIGINの血を色濃く受け継ぐ“5000/5600”、3つ目のインジケーターを持つラウンドフォルムの“6900”、ビッグフェイスにデジアナ表示を備えた“110”、特徴的なオクタゴンベゼルの“2100”。これら5つのシリーズはIconic Stylesと呼ばれ、ブランドを象徴する存在として重要な役割を担っている。

そして今年、6900シリーズが周年を迎える。25周年の際には偏光グラデーション蒸着のガラスにスケルトンケースを備えたスペシャルなモデルがリリースされていたが、30周年の節目に登場したのは同シリーズのルーツも感じさせる3色のアニバーサリーウォッチだ。

G-SHOCKにおいて初めて3つ目のインジケーター(トリグラフ)を導入した1992年のDW-5900C-1、印象的なフロントボタンで好評を得ていた1994年のDW-6600-1Vのエッセンスを受け継ぐ形で、1995年2月に6900シリーズの1作目であるDW-6900-1Vは誕生した。その同年、スラッシャーモデルと呼ばれるブラック・イエロー・レッドの3色で構成されたDW-6900Hが登場。本作のカラーバリエーションは、このDW-6900Hをかなり忠実に再現している(当時ELバックライトを意味していたFOX FIREの文字こそないが)。当時6900シリーズを愛用していた人々からすると、うれしい仕様ではないだろうか。

一方で現代的な変更が見られる箇所もある。それがベゼル・バンドへのバイオマスプラスティックの採用と、6900のデザインアイコンであるフロントボタンのメタル化だ。前者は昨年12月のDW-5000R(DW-5000Cの復刻)の際にもあったアップデートで、環境負荷の低減を掲げる昨今のG-SHOCKにおいては欠かせない。後者はエリックヘイズコラボをはじめとした過去の6900シリーズでも見られたもので、ミラー仕上げの素材表面に刻まれた力強い“G”マークが抜群の存在感を放っている。

1995年に登場したDW-6900H-9。当時のスポーツカルチャーの象徴的存在であった若者“スラッシャー”を意識して、樹脂製のストラップには“G-SHOCK is dedicated to the soulfootinmotion(このG-SHOCKをスラッシャーに捧げる)”とプリントされていた。

機能面では、20気圧防水に加えて100分の1秒ストップウォッチ、タイマー、マルチアラーム、報音フラッシュ機能、LEDバックライト(フロントボタンで点灯)を装備。価格はいずれも1万6500円(税込)で、2025年2月の発売を予定している。

僕は残念ながら、6900シリーズが巻き起こした熱狂にリアルタイムで触れた世代ではない。しかしストリートで広く受け入れられ、世界的なビッグネームとコラボレーションを繰り返してきたのをひとりのG-SHOCKファンとして興味深く見てきた。そんなG-SHOCKを象徴するシリーズの原点を再現し、リファインしたモデルを30周年という節目に手にできるというのは感慨深い。かつて2009年にもスラッシャーモデルをアレンジしたGW-6900A-9がリリースされていたが、3色ともに揃うのは初めてではないだろうか?

Iconic Stylesの30周年ということもあり、バックライトを点灯した際に浮かび上がる“SINCE 1995”の文字、ケースバックに刻まれた30個の星などアニバーサリーイヤーを飾るデザインも落とし込まれている。しかしそのどちらも、通常使用しているなかで表に出てくるものではない。周年モデルでありながら、オリジナルのデザインを楽しみたいというファンの期待に応える気の利いた仕様だ(個人的には、SINCE 1995のフォントにも30年前の雰囲気を感じている)。

2025年にはこの後も6900シリーズのリリースが続くと踏んでいる。しかし、このリリースは周年のスタートとして素晴らしい。レギュラーモデルから逸脱しない価格帯もあり、6900シリーズのルーツを表現しながら既存ファンから新規層にまで幅広くアプローチするモデルとなるだろう。

しかしDW-5000R、ORIGINのカラーリングを踏襲したIconic Stylesに続くG-SHOCKの原点にフォーカスする流れは今後も続くのだろうか? G-SHOCKは2023年に40周年を迎えたブランドだ。もしかしたら、ユーザーの世代交代も意識した動きなのかもしれない。その答え合わせは今年15周年を迎える110シリーズでなされるかもしれないが、とりあえず今はこの目の前のモデルを存分に楽しみたいと思う。(まだ手にできていないが)DW-5000Rとともにコレクションに加える予定だ。

基本情報
ブランド: G-SHOCK
モデル名: 6900シリーズ30周年記念モデル
型番:DW-6900TR-1JR(ブラック)/DW-6900TR-4JR(レッド)/DW-6900TR-9JR(イエロー)

直径: 50mm
厚さ: 18.7mm
ケース素材: バイオマスプラスチック
文字盤色: ブラック
夜光: LEDバックライト(スーパーイルミネーター)
防水性能: 20気圧
ストラップ/ブレスレット:バイオマスプラスチック
追加情報: 100分の1秒ストップウォッチ、タイマー、マルチアラーム、報音フラッシュ機能

伝説的レーシングドライバー、ハーレイ・ヘイウッドの時計コレクション

モーターレース、特に耐久レースが好きなら、ハーレイ・ヘイウッド(Hurley Haywood)氏についてくどくど紹介する必要はないだろう。シカゴ生まれのこのレーシングドライバーは、デイトナ24時間レースで5勝、セブリング12時間レースで総合優勝2回、ル・マン24時間レースで3勝を挙げるなど、レーサー志望なら誰もが憧れるようなキャリアを歩んできた。つまり、“耐久レースの三冠”のうちふたつを制したことになる。しかもこれは彼のキャリアのほんのハイライトに過ぎない。ヘイウッドはロードレース界のレジェンドであり、耐久レースの世界で重要なふたつのブランド、ポルシェとロレックスとのパートナーシップを50年にわたり享受してきた。

フロリダ州ジャクソンビルにあるブルーモスコレクションの本拠地で、ハーレイ・ヘイウッド氏に話を聞いた。緑豊かな低地の森にひっそりと佇むブルーモスコレクションは、約3万5000平方フィート(約3252㎡)の博物館で、実際に稼働する施設でもある。1959年にポルシェの輸入を開始したブランデージ・モーターズの歴史を紹介する施設だ。1960年代半ば、レーシングドライバーのピーター・グレッグ(Peter Gregg)がブルーモスの事業とブルーモス・レーシングチームを引き継いだ。60年代後半、グレッグはオートクロスイベントでヘイウッド氏と出会い、そこでヘイウッドが勝利を収めた。その走りに感銘を受けたグレッグは、ヘイウッド氏に次のレースへの出場枠を提供し、これがヘイウッド氏のレーシングキャリアの始まりとなった。ふたりは1973年、きわめて過酷なデイトナ24時間レースでブルーモスチーム初の勝利を手にする。

ブルーモス・レーシングのポルシェ911 カレラRSRを駆り、ピーター・グレッグとともに1973年のデイトナ24時間レースを制したヘイウッド氏。

ハーレイ氏は2012年にプロレースから引退し、トランスAMとSuperCarのタイトル、3度のノレルコ・カップ・チャンピオンシップ、インディカーでの18戦出走など、上記のような輝かしい勝利とともにキャリアを閉じた。ベトナム戦争への従軍やLGBTQコミュニティの支援活動など、彼の驚くべき人生についてさらに詳しく知りたい方は、パトリック・デンプシー(Patrick Dempsey)がプロデュースしたハーレイの人生を紹介する2019年の映画『Hurley』をぜひご覧いただきたい。

予想どおり、ハーレイ氏のレース時代は時計の世界と深く結びついていた。彼は長年にわたり、とても魅力的なコレクションを築き上げてきたが、その多くはロレックスとの長年の関係から生まれたものだ。彼はいまもロレックスのアンバサダーを務めており、モータースポーツの世界におけるロレックスの存在感を示し続けている。ハーレイ氏が披露した時計はレースでの素晴らしい成功の証しであり、また彼のキャリアと私生活における思い出深い瞬間と結びついた証しでもある。


この動画を楽しんでもらえたらうれしい。ハーレイ氏、ポルシェの友人たち、そしてこの動画の制作に協力してくれたブルーモスコレクションの素晴らしい人々に、僕自身とHODINKEEのスタッフ全員から心からの感謝を伝えたい。もしあなたも僕と同じようにクルマと時計、そしてこのふたつの世界の交わるところに魅力を感じるなら、ハーレイ氏と話し、彼のレースや時計、そしてミュージアムのクルマについて聞くのは、言葉では言い表せないほど楽しい時間だったことを想像してもらえるだろう。

1991年デイトナ24時間レース優勝を記念して贈呈されたコンビのロレックス デイトナ Ref.16523

デイトナ(という時計)は数あれど、これは別格だ。ハーレイ氏は1991年のデイトナ24時間レースで優勝し、このコンビのロレックス Ref.16523を手に入れた。これ以上にクールなトロフィーはないし、こんなにも実用的なトロフィーもそうそうない。


ホワイトダイヤルに赤い文字がアクセントとして添えられたこのデイトナ Ref.16523は、ゼニス時代のモデルだ。ハーレイ氏はフランク・ジェリンスキー(Frank Jelinski)、アンリ・ペスカロロ(Henri Pescarolo)氏、ボブ・ウォレック(Bob Wollek)、ジョン・ウィンター(John Winter)とともにヨースト・レーシングのポルシェ962Cを駆り優勝を果たし、その功績を称えてこの時計が贈られた。

ハーレイ氏がデイトナで総合優勝を果たしたのは1991年で5回目(すごい)だったが、ロレックスのデイトナが優勝賞品として贈られたのはこれが初めてだった。当時、優勝者に贈られる時計は通常スティール製だったが、ハーレイの輝かしい経歴を考慮してロレックスは特別にコンビモデルを用意した。


使い込まれたケースバックには “Rolex 1991 24 Hours of Daytona Award(ロレックス 1991、デイトナ24時間レース賞)”と記されている。これ以上の栄誉はないだろう。

ロレックス デイトジャスト Ref.16220

Talking Watchesの撮影で彼が手首にしていたのがこの時計だ。ホワイトダイヤル、ローマンインデックス、SS製エンジンターンドベゼルを備えた、上品で洗練された36mmのロレックス デイトジャスト Ref.16220。最近ハーレイ氏はこの時計をおそろいのオイスターブレスレットで愛用しているが、もともとの仕様とは違う。


その全容はぜひ動画で確かめて欲しい。レースで着用したタイメックス、当時ロレックスUSA会長だったローランド・プートン(Roland Puton)氏からの電話、そして意外なストラップの組み合わせなど、興味深いエピソードが詰まっている。
 

ニバダ グレンヒェン 150本限定の特別仕様として鮮やかなカラーを採用した。

ニバダ グレンヒェンが2023年にアンタークティック ダイバーを発表して以来、そのラインナップは一貫して変わらず、ヴィンテージにインスパイアされたブラックダイヤルがスキンダイバーシリーズの唯一のSKUとして君臨していた。しかし同ブランドの動向を追っているならば、創業者のギヨーム・ライデ(Guillaume Laidet)氏が常にアーカイブやウェブサイト、さらには個人コレクションを探索し、ブランドの歴史的オマージュや復刻のインスピレーションを探し続けていることを知っているだろう。今回ギヨーム氏が参考にしたのは、ヴィンテージウォッチショップで見つけた1970年代のニバダ アンタークティック シーだ。オリジナルはよりユニークなクッションケースを採用していたが、そのエメラルドグリーンのダイヤルは現代版アンタークティック ダイバーのプラットフォームに受け継がれ、新たな限定モデルとして登場することとなった。

今回は、すべてがダイヤルに集約されている。とても鮮やかなグリーンであり、その彩度の高さによって暗い環境でも色が損なわれることはない。サンバースト仕上げが際立ち、明るい光の下ではダイヤルのメタリックな質感が、はっきりと見て取れる。この仕上げの強調により、暗い場所でもダイヤルは単調になることなく明暗のコントラストが生まれ、常に表情を変え続ける。正直に言うと、このカラーリングはチープに見えてしまうのではないかと心配していたが、実物を手に取るとその仕上がりは期待以上に印象的だった。
 ダイヤル周囲には、プリントされたホワイトの分目盛りが配されており、その内側には大型の横長な長方形のインデックスが並ぶ。3・6・9・12時位置には厚みのあるファセット加工が施されたメタル製アプライドインデックスが採用され、それ以外の時間帯には、ブランドが“クリームラテカラーのパティーナ”と称する夜光インデックスが配置されている。だが実際に見るとコーヒーのような色味はなく、むしろグリーンイエローに近い印象を受ける。それでもすべてのインデックスは分厚くワイドに設計されており、このデザイン特有のユニークなプロポーションに貢献している。

これらのインデックスを引き立てるのはきわめてワイドな針だ。私がこれまで見たなかでも最も幅広い針であり、小振りな38mm径のケース内でその存在感が一層際立っている。時・分針は四辺が面取りされているものの、中央部分にはファセット加工が施されておらず、そのためダイヤル上での視認性が非常に高い。オリジナルのヴィンテージモデルから受け継がれたデザインとしては適切な選択だが、もしケースがラウンド型のクッションケースだったならば、このブロック状の針とのバランスがさらによくなったのではないかとも思う。ちなみに、これらの針は現行のアンタークティック ダイバーの標準的なブラックダイヤルモデルにも採用されている。しかし、今回のモデルでは長方形のインデックスと組み合わさることで、そのデザインがより効果的に機能しているように感じられた。
 ヴィンテージからのインスピレーションはこれだけにとどまらず、オリジナルのタイポグラフィもこの現代版に受け継がれている。ニバダ グレンヒェンのブランドロゴ上に配置されたアイコンは、ヴィンテージのカタログリストに掲載されていたデザインを踏襲しており、6時位置の上には筆記体でAntarctic-Diver(南極ダイバー)とプリントされている。今回、自分が手に取ったのはノンデイト仕様だったが、ギヨーム氏はよりオリジナルに忠実なフレーム付きの日付表示モデルも展開している。ブラックダイヤルとは異なりこのモデルには、幸いにもサイクロップスレンズが付いていない。

それ以外の点は、基本的に標準モデルのアンタークティック ダイバーと同じだ。ステンレススティール製のケースは直径38mm、厚さ12.9mmで、ケースサイドはポリッシュ仕上げ、トップとボトムはヘアライン仕上げとなっている。ニバダの多くのモデルはエッジがシャープで明確なラインを持つことが多いが、このモデルはケースのトップからサイドへの移行がより滑らかで、人によってはややポリッシュが強すぎると感じるかもしれない。一方でCNC加工直後のような無機質な印象はなく、適度な仕上がりにまとまっている。ベゼルにはセラミックを採用し、この価格帯で一般的なアルミニウム製よりも高級感のある仕上がりだ。ベゼルは圧接式で、クリック機構のない双方向回転式。適度な抵抗があり、しっかりと固定されている。しかしこの時計を本格的なダイビングツールとして使用する人は、実際にはほとんどいないだろう。
 この時計の全体的なサイズ感は非常に装着しやすく、200mの防水性能を備えた実用的なダイバーズウォッチとなっている。さらにトロピックラバーストラップが手首にしっかりとフィットし、快適なつけ心地を実現している。ムーブメントにはニバダの標準仕様であるソプロード製PO24キャリバーを搭載し、パワーリザーブは約38時間。ノンデイト仕様だと、ゴーストデイトポジションが生じる点は理想的と言えない。裏返すとペンギンの刻印が施されたデザインが現れる。こんな楽しいデザインなら文句はない。

今回のアンタークティック ダイバーは150本限定で、ノンデイト仕様とデイト表示付きモデルがそれぞれ75本ずつ製造される。販売価格は標準モデルと同じ995ドル(日本円で約15万円)に据え置かれており、グリーンダイヤルは限定モデルとしての個性を際立たせるユニークなカラーバリエーションとなっている。これが画期的かつ革新的なモデルかと言われれば、答えはノーだ。しかしニバダが手がけたハイパースタイライズドなデザインと鮮やかな発色は、定番とはひと味違うモデルを求める人にとってよい選択肢となるだろう。
ニバダ グレンヒェン アンタークティック ダイバー グリーン。ステンレススティールケース、直径38mm、厚さ12.9mm。ノンデイト仕様とデイト表示付きのグリーンダイヤル、ダブルドーム型サファイアクリスタル、両方向回転式セラミックベゼル、200m防水。ソプロード製自動巻きCal.PO24搭載。ストラップやブレスレットのバリエーションあり。価格は995ドル~(日本円で約15万円~)。