G-SHOCK 新たな機能やシェイプの提案があるたびにさまざまなモデルが誕生してきた。

G-SHOCKにおいて“定番”として位置付けられ、大きく形状を変えず長く製造され続けてきたシリーズがある。ORIGINの血を色濃く受け継ぐ“5000/5600”、3つ目のインジケーターを持つラウンドフォルムの“6900”、ビッグフェイスにデジアナ表示を備えた“110”、特徴的なオクタゴンベゼルの“2100”。これら5つのシリーズはIconic Stylesと呼ばれ、ブランドを象徴する存在として重要な役割を担っている。

そして今年、6900シリーズが周年を迎える。25周年の際には偏光グラデーション蒸着のガラスにスケルトンケースを備えたスペシャルなモデルがリリースされていたが、30周年の節目に登場したのは同シリーズのルーツも感じさせる3色のアニバーサリーウォッチだ。

G-SHOCKにおいて初めて3つ目のインジケーター(トリグラフ)を導入した1992年のDW-5900C-1、印象的なフロントボタンで好評を得ていた1994年のDW-6600-1Vのエッセンスを受け継ぐ形で、1995年2月に6900シリーズの1作目であるDW-6900-1Vは誕生した。その同年、スラッシャーモデルと呼ばれるブラック・イエロー・レッドの3色で構成されたDW-6900Hが登場。本作のカラーバリエーションは、このDW-6900Hをかなり忠実に再現している(当時ELバックライトを意味していたFOX FIREの文字こそないが)。当時6900シリーズを愛用していた人々からすると、うれしい仕様ではないだろうか。

一方で現代的な変更が見られる箇所もある。それがベゼル・バンドへのバイオマスプラスティックの採用と、6900のデザインアイコンであるフロントボタンのメタル化だ。前者は昨年12月のDW-5000R(DW-5000Cの復刻)の際にもあったアップデートで、環境負荷の低減を掲げる昨今のG-SHOCKにおいては欠かせない。後者はエリックヘイズコラボをはじめとした過去の6900シリーズでも見られたもので、ミラー仕上げの素材表面に刻まれた力強い“G”マークが抜群の存在感を放っている。

1995年に登場したDW-6900H-9。当時のスポーツカルチャーの象徴的存在であった若者“スラッシャー”を意識して、樹脂製のストラップには“G-SHOCK is dedicated to the soulfootinmotion(このG-SHOCKをスラッシャーに捧げる)”とプリントされていた。

機能面では、20気圧防水に加えて100分の1秒ストップウォッチ、タイマー、マルチアラーム、報音フラッシュ機能、LEDバックライト(フロントボタンで点灯)を装備。価格はいずれも1万6500円(税込)で、2025年2月の発売を予定している。

僕は残念ながら、6900シリーズが巻き起こした熱狂にリアルタイムで触れた世代ではない。しかしストリートで広く受け入れられ、世界的なビッグネームとコラボレーションを繰り返してきたのをひとりのG-SHOCKファンとして興味深く見てきた。そんなG-SHOCKを象徴するシリーズの原点を再現し、リファインしたモデルを30周年という節目に手にできるというのは感慨深い。かつて2009年にもスラッシャーモデルをアレンジしたGW-6900A-9がリリースされていたが、3色ともに揃うのは初めてではないだろうか?

Iconic Stylesの30周年ということもあり、バックライトを点灯した際に浮かび上がる“SINCE 1995”の文字、ケースバックに刻まれた30個の星などアニバーサリーイヤーを飾るデザインも落とし込まれている。しかしそのどちらも、通常使用しているなかで表に出てくるものではない。周年モデルでありながら、オリジナルのデザインを楽しみたいというファンの期待に応える気の利いた仕様だ(個人的には、SINCE 1995のフォントにも30年前の雰囲気を感じている)。

2025年にはこの後も6900シリーズのリリースが続くと踏んでいる。しかし、このリリースは周年のスタートとして素晴らしい。レギュラーモデルから逸脱しない価格帯もあり、6900シリーズのルーツを表現しながら既存ファンから新規層にまで幅広くアプローチするモデルとなるだろう。

しかしDW-5000R、ORIGINのカラーリングを踏襲したIconic Stylesに続くG-SHOCKの原点にフォーカスする流れは今後も続くのだろうか? G-SHOCKは2023年に40周年を迎えたブランドだ。もしかしたら、ユーザーの世代交代も意識した動きなのかもしれない。その答え合わせは今年15周年を迎える110シリーズでなされるかもしれないが、とりあえず今はこの目の前のモデルを存分に楽しみたいと思う。(まだ手にできていないが)DW-5000Rとともにコレクションに加える予定だ。

基本情報
ブランド: G-SHOCK
モデル名: 6900シリーズ30周年記念モデル
型番:DW-6900TR-1JR(ブラック)/DW-6900TR-4JR(レッド)/DW-6900TR-9JR(イエロー)

直径: 50mm
厚さ: 18.7mm
ケース素材: バイオマスプラスチック
文字盤色: ブラック
夜光: LEDバックライト(スーパーイルミネーター)
防水性能: 20気圧
ストラップ/ブレスレット:バイオマスプラスチック
追加情報: 100分の1秒ストップウォッチ、タイマー、マルチアラーム、報音フラッシュ機能

伝説的レーシングドライバー、ハーレイ・ヘイウッドの時計コレクション

モーターレース、特に耐久レースが好きなら、ハーレイ・ヘイウッド(Hurley Haywood)氏についてくどくど紹介する必要はないだろう。シカゴ生まれのこのレーシングドライバーは、デイトナ24時間レースで5勝、セブリング12時間レースで総合優勝2回、ル・マン24時間レースで3勝を挙げるなど、レーサー志望なら誰もが憧れるようなキャリアを歩んできた。つまり、“耐久レースの三冠”のうちふたつを制したことになる。しかもこれは彼のキャリアのほんのハイライトに過ぎない。ヘイウッドはロードレース界のレジェンドであり、耐久レースの世界で重要なふたつのブランド、ポルシェとロレックスとのパートナーシップを50年にわたり享受してきた。

フロリダ州ジャクソンビルにあるブルーモスコレクションの本拠地で、ハーレイ・ヘイウッド氏に話を聞いた。緑豊かな低地の森にひっそりと佇むブルーモスコレクションは、約3万5000平方フィート(約3252㎡)の博物館で、実際に稼働する施設でもある。1959年にポルシェの輸入を開始したブランデージ・モーターズの歴史を紹介する施設だ。1960年代半ば、レーシングドライバーのピーター・グレッグ(Peter Gregg)がブルーモスの事業とブルーモス・レーシングチームを引き継いだ。60年代後半、グレッグはオートクロスイベントでヘイウッド氏と出会い、そこでヘイウッドが勝利を収めた。その走りに感銘を受けたグレッグは、ヘイウッド氏に次のレースへの出場枠を提供し、これがヘイウッド氏のレーシングキャリアの始まりとなった。ふたりは1973年、きわめて過酷なデイトナ24時間レースでブルーモスチーム初の勝利を手にする。

ブルーモス・レーシングのポルシェ911 カレラRSRを駆り、ピーター・グレッグとともに1973年のデイトナ24時間レースを制したヘイウッド氏。

ハーレイ氏は2012年にプロレースから引退し、トランスAMとSuperCarのタイトル、3度のノレルコ・カップ・チャンピオンシップ、インディカーでの18戦出走など、上記のような輝かしい勝利とともにキャリアを閉じた。ベトナム戦争への従軍やLGBTQコミュニティの支援活動など、彼の驚くべき人生についてさらに詳しく知りたい方は、パトリック・デンプシー(Patrick Dempsey)がプロデュースしたハーレイの人生を紹介する2019年の映画『Hurley』をぜひご覧いただきたい。

予想どおり、ハーレイ氏のレース時代は時計の世界と深く結びついていた。彼は長年にわたり、とても魅力的なコレクションを築き上げてきたが、その多くはロレックスとの長年の関係から生まれたものだ。彼はいまもロレックスのアンバサダーを務めており、モータースポーツの世界におけるロレックスの存在感を示し続けている。ハーレイ氏が披露した時計はレースでの素晴らしい成功の証しであり、また彼のキャリアと私生活における思い出深い瞬間と結びついた証しでもある。


この動画を楽しんでもらえたらうれしい。ハーレイ氏、ポルシェの友人たち、そしてこの動画の制作に協力してくれたブルーモスコレクションの素晴らしい人々に、僕自身とHODINKEEのスタッフ全員から心からの感謝を伝えたい。もしあなたも僕と同じようにクルマと時計、そしてこのふたつの世界の交わるところに魅力を感じるなら、ハーレイ氏と話し、彼のレースや時計、そしてミュージアムのクルマについて聞くのは、言葉では言い表せないほど楽しい時間だったことを想像してもらえるだろう。

1991年デイトナ24時間レース優勝を記念して贈呈されたコンビのロレックス デイトナ Ref.16523

デイトナ(という時計)は数あれど、これは別格だ。ハーレイ氏は1991年のデイトナ24時間レースで優勝し、このコンビのロレックス Ref.16523を手に入れた。これ以上にクールなトロフィーはないし、こんなにも実用的なトロフィーもそうそうない。


ホワイトダイヤルに赤い文字がアクセントとして添えられたこのデイトナ Ref.16523は、ゼニス時代のモデルだ。ハーレイ氏はフランク・ジェリンスキー(Frank Jelinski)、アンリ・ペスカロロ(Henri Pescarolo)氏、ボブ・ウォレック(Bob Wollek)、ジョン・ウィンター(John Winter)とともにヨースト・レーシングのポルシェ962Cを駆り優勝を果たし、その功績を称えてこの時計が贈られた。

ハーレイ氏がデイトナで総合優勝を果たしたのは1991年で5回目(すごい)だったが、ロレックスのデイトナが優勝賞品として贈られたのはこれが初めてだった。当時、優勝者に贈られる時計は通常スティール製だったが、ハーレイの輝かしい経歴を考慮してロレックスは特別にコンビモデルを用意した。


使い込まれたケースバックには “Rolex 1991 24 Hours of Daytona Award(ロレックス 1991、デイトナ24時間レース賞)”と記されている。これ以上の栄誉はないだろう。

ロレックス デイトジャスト Ref.16220

Talking Watchesの撮影で彼が手首にしていたのがこの時計だ。ホワイトダイヤル、ローマンインデックス、SS製エンジンターンドベゼルを備えた、上品で洗練された36mmのロレックス デイトジャスト Ref.16220。最近ハーレイ氏はこの時計をおそろいのオイスターブレスレットで愛用しているが、もともとの仕様とは違う。


その全容はぜひ動画で確かめて欲しい。レースで着用したタイメックス、当時ロレックスUSA会長だったローランド・プートン(Roland Puton)氏からの電話、そして意外なストラップの組み合わせなど、興味深いエピソードが詰まっている。
 

ニバダ グレンヒェン 150本限定の特別仕様として鮮やかなカラーを採用した。

ニバダ グレンヒェンが2023年にアンタークティック ダイバーを発表して以来、そのラインナップは一貫して変わらず、ヴィンテージにインスパイアされたブラックダイヤルがスキンダイバーシリーズの唯一のSKUとして君臨していた。しかし同ブランドの動向を追っているならば、創業者のギヨーム・ライデ(Guillaume Laidet)氏が常にアーカイブやウェブサイト、さらには個人コレクションを探索し、ブランドの歴史的オマージュや復刻のインスピレーションを探し続けていることを知っているだろう。今回ギヨーム氏が参考にしたのは、ヴィンテージウォッチショップで見つけた1970年代のニバダ アンタークティック シーだ。オリジナルはよりユニークなクッションケースを採用していたが、そのエメラルドグリーンのダイヤルは現代版アンタークティック ダイバーのプラットフォームに受け継がれ、新たな限定モデルとして登場することとなった。

今回は、すべてがダイヤルに集約されている。とても鮮やかなグリーンであり、その彩度の高さによって暗い環境でも色が損なわれることはない。サンバースト仕上げが際立ち、明るい光の下ではダイヤルのメタリックな質感が、はっきりと見て取れる。この仕上げの強調により、暗い場所でもダイヤルは単調になることなく明暗のコントラストが生まれ、常に表情を変え続ける。正直に言うと、このカラーリングはチープに見えてしまうのではないかと心配していたが、実物を手に取るとその仕上がりは期待以上に印象的だった。
 ダイヤル周囲には、プリントされたホワイトの分目盛りが配されており、その内側には大型の横長な長方形のインデックスが並ぶ。3・6・9・12時位置には厚みのあるファセット加工が施されたメタル製アプライドインデックスが採用され、それ以外の時間帯には、ブランドが“クリームラテカラーのパティーナ”と称する夜光インデックスが配置されている。だが実際に見るとコーヒーのような色味はなく、むしろグリーンイエローに近い印象を受ける。それでもすべてのインデックスは分厚くワイドに設計されており、このデザイン特有のユニークなプロポーションに貢献している。

これらのインデックスを引き立てるのはきわめてワイドな針だ。私がこれまで見たなかでも最も幅広い針であり、小振りな38mm径のケース内でその存在感が一層際立っている。時・分針は四辺が面取りされているものの、中央部分にはファセット加工が施されておらず、そのためダイヤル上での視認性が非常に高い。オリジナルのヴィンテージモデルから受け継がれたデザインとしては適切な選択だが、もしケースがラウンド型のクッションケースだったならば、このブロック状の針とのバランスがさらによくなったのではないかとも思う。ちなみに、これらの針は現行のアンタークティック ダイバーの標準的なブラックダイヤルモデルにも採用されている。しかし、今回のモデルでは長方形のインデックスと組み合わさることで、そのデザインがより効果的に機能しているように感じられた。
 ヴィンテージからのインスピレーションはこれだけにとどまらず、オリジナルのタイポグラフィもこの現代版に受け継がれている。ニバダ グレンヒェンのブランドロゴ上に配置されたアイコンは、ヴィンテージのカタログリストに掲載されていたデザインを踏襲しており、6時位置の上には筆記体でAntarctic-Diver(南極ダイバー)とプリントされている。今回、自分が手に取ったのはノンデイト仕様だったが、ギヨーム氏はよりオリジナルに忠実なフレーム付きの日付表示モデルも展開している。ブラックダイヤルとは異なりこのモデルには、幸いにもサイクロップスレンズが付いていない。

それ以外の点は、基本的に標準モデルのアンタークティック ダイバーと同じだ。ステンレススティール製のケースは直径38mm、厚さ12.9mmで、ケースサイドはポリッシュ仕上げ、トップとボトムはヘアライン仕上げとなっている。ニバダの多くのモデルはエッジがシャープで明確なラインを持つことが多いが、このモデルはケースのトップからサイドへの移行がより滑らかで、人によってはややポリッシュが強すぎると感じるかもしれない。一方でCNC加工直後のような無機質な印象はなく、適度な仕上がりにまとまっている。ベゼルにはセラミックを採用し、この価格帯で一般的なアルミニウム製よりも高級感のある仕上がりだ。ベゼルは圧接式で、クリック機構のない双方向回転式。適度な抵抗があり、しっかりと固定されている。しかしこの時計を本格的なダイビングツールとして使用する人は、実際にはほとんどいないだろう。
 この時計の全体的なサイズ感は非常に装着しやすく、200mの防水性能を備えた実用的なダイバーズウォッチとなっている。さらにトロピックラバーストラップが手首にしっかりとフィットし、快適なつけ心地を実現している。ムーブメントにはニバダの標準仕様であるソプロード製PO24キャリバーを搭載し、パワーリザーブは約38時間。ノンデイト仕様だと、ゴーストデイトポジションが生じる点は理想的と言えない。裏返すとペンギンの刻印が施されたデザインが現れる。こんな楽しいデザインなら文句はない。

今回のアンタークティック ダイバーは150本限定で、ノンデイト仕様とデイト表示付きモデルがそれぞれ75本ずつ製造される。販売価格は標準モデルと同じ995ドル(日本円で約15万円)に据え置かれており、グリーンダイヤルは限定モデルとしての個性を際立たせるユニークなカラーバリエーションとなっている。これが画期的かつ革新的なモデルかと言われれば、答えはノーだ。しかしニバダが手がけたハイパースタイライズドなデザインと鮮やかな発色は、定番とはひと味違うモデルを求める人にとってよい選択肢となるだろう。
ニバダ グレンヒェン アンタークティック ダイバー グリーン。ステンレススティールケース、直径38mm、厚さ12.9mm。ノンデイト仕様とデイト表示付きのグリーンダイヤル、ダブルドーム型サファイアクリスタル、両方向回転式セラミックベゼル、200m防水。ソプロード製自動巻きCal.PO24搭載。ストラップやブレスレットのバリエーションあり。価格は995ドル~(日本円で約15万円~)。

ルイ・ヴィトン×カリ・ヴティライネンによる新作LVKV-02 GMR 6が新登場。

レジェップ・レジェピから始まった5本限定シリーズの第2弾であるこの時計は、単なるGMTをはるかに超えた芸術品である。

タイのプーケットにて、ジャン・アルノー(Jean Arnaul)氏指揮のもと、ルイ・ヴィトンは現代を代表する独立時計師たちとの5部構成のコラボレーションの第2弾となる時計を発表した。今回ルイ・ヴィトンがタッグを組んだのはカリ・ヴティライネンで、ウォッチメイキングの技術と芸術性を融合させた作品に仕上がっている。その名もLVKV-02 GMR 6。ダイレクトインパルス式のデュアル脱進機を備えたGMTであり、ラ・ファブリク・デ・アール ルイ・ヴィトン(La Fabrique des Arts Louis Vuitton)の職人によるミニアチュール彩絵エナメル装飾と、ヴティライネンの工房による手仕上げのギヨシェ装飾が特徴だ。ケース素材にはタンタルとプラチナを組み合わせている。ブランドはこの時計を、シンプルにLVoutilainen(ルヴティライネン)と呼んでいる。

ルイ・ヴィトンとレジェップ・レジェピによるLVRR-01 クロノグラフ ア ソヌリでこのシリーズが幕を開けてから、1年半が経過した。今年1月、LVMH Watch Weekに際し、再編成されたルイ・ヴィトンが本格的にハイエンドウォッチブランドとしての地位を確立した瞬間だと述べたばかりである。しかしラ・ファブリク・デュ・タン(LFdT)は、レジェピとのコラボレーションに限らず複雑なオートマトンウォッチなどを通じて、すでに長きにわたりハイエンドな時計製造を実践してきた。

こちらは、LVRR-01の発表時にお届けしたレポートから引用した。
スーパーコピー時計 代引きLVRR-01 クロノグラフ ア ソヌリはきわめて多機能かつ特異なハイブリッドモデルであった。限定本数は10本、価格は45万スイスフラン(日本円で約7600万円)。セミスケルトン仕様で両面に表示を持ち、トゥールビヨンによって調速されるソヌリ・オ・パッサージュ・デ・ミニュット・ドゥ・クロノグラフ(拙いフランス語が正しければ)、つまりクロノグラフ作動中に経過する各分をチャイムで知らせる機構を備えている。ムーブメントはツインバレルで駆動し、ケースはジャン-ピエール・ハグマン(Jean-Pierre Hagmann)が設計したタンブールに着想を得た39.5mm×11.9mmサイズを採用している。表側にはスモークサファイアを用いた表示が配されており、これはブランドのスピン・タイムモデルからインスピレーションを得たもの。一方で裏側は、より伝統的なディスプレイでクロノグラフ機能が表示される。

今回発表されたウォッチコンセプトは、伝説的な時計師の技術を最大限に引き出すという点で変わっていない。しかしこの1年半で、ルイ・ヴィトンのラ・ファブリク・デュ・タンを取り巻く環境には大きな変化があった。再始動したダニエル・ロートとジェラルド・ジェンタのブランドはすでに本格的に動き出しており、タンブールもスティール、貴金属、セラミックといった多彩な素材を用いた完全なコレクションラインへと進化した。そこにはタンブール コンバージェンスや、きわめて複雑なタンブール・タイコ・スピン・タイムといったサブカテゴリも含まれる。ルイ・ヴィトン全体の売上における時計部門の比率はごくわずかであるため、ジャン・アルノー氏はリスクを取り、大胆な挑戦を行う自由を手にしているのだ。


今回のコラボレーション相手は、私が時計作品のみならずそのビジネス感覚や人柄においても深く敬愛している時計師、カリ・ヴティライネン(Kari Voutilainen)氏である。彼は年間製造本数が100本未満という小規模な独立時計師でありながら、ケースやダイヤルなども手がける複数の会社を擁するブランドへと成長させてきた。昨年にはGPHGでの受賞や、自身初のトゥールビヨンへの20周年オマージュ作品の発表など華々しい活躍を見せたばかりだが、2025年はさらに飛躍の年となる可能性がある。というのもヴティライネン氏が共同CEOを務める人気ブランド、ウルバン・ヤーゲンセンの再始動が今年半ばに予定されているからだ。
ヴティライネン氏は、伝統的でありながら卓越したウォッチメイキング技術で知られる存在となっている。彼の時計は現在でもやや厚みのある地板やブリッジを採用しており、これによりほかメーカーが接着剤を用いるような箇所でもすべてネジでパーツを固定できる。これによって、数百年先まで整備が可能な時計を実現しているのだ。また、傘下企業であるコンブレマイン社(Comblémine SA)を通じて、ダイヤル製作においても確固たる地位を築いており、数多くのブランドや独立時計師たちにダイヤルを供給する柱的存在となっている。その一方で、KV20iのようにダイヤル自体を廃した作品も手がけており、表裏反転という“インバース/リバース”コンセプトも、彼のブランドにおけるもうひとつの柱となっている。
ヴティライネン氏が複雑機構の真の達人であるという事実を、時計愛好家の新参者たちはまだ十分に理解していないのではないかと思う。ミニッツリピーターパーペチュアルカレンダーのような1点物や、わずか数本しか存在しないミニッツリピーターGMTなど、まさに夢のような時計を手がけてきたのだ。ルイ・ヴィトンとの次なるコラボレーションがヴティライネンだと聞いたとき、平凡な時計になるはずがないとは思っていた。しかし自分が見落としていた最大の要素は、芸術性だった。

LVKV-02 GMR 6はその名が示すとおり、本質的にはGMTウォッチである(“GM”がそれを示している)。一見するとシンプルに思えるかもしれないが、それはカリ・ヴティライネンが手がけるGMTに限っての話ではない。今回のモデルは、ルイ・ヴィトンのトランク製造の歴史(世界を旅する人々のためのラゲージ)へのオマージュというコンセプトに基づいている。“R”は12時位置に配されたレトログラード式パワーリザーブインジケーターを意味し、“6”はダイヤル上にある24時間表示のGMTインダイヤルの位置(6時)を指している。
GMTディスクは24時間で1回転し、着用者の“ホームタイム”を表示するように設定される。一方で時針は、旅先でのローカルタイムを示すために独立して調整可能であり、これはリューズを押すことで簡単に操作できる仕組みとなっている(この操作により巻き芯とGMT機構が連動して作動する)。カリ・ヴティライネンはこれまでにも、GMRやGMT-6といったGMT機能搭載モデルを手がけてきたが、それらはGMTインダイヤルのほうを調整する仕様であった。今回のモデルではその方式が逆転しており、時針を調整する新たなバリエーションとなっている。これは完全新設計のキャリバーを搭載したレジェップ・レジェピ LVRR-01とは対照的だ。今回のLVKV-02 GMR 6におけるコストの大部分は、ラ・ファブリク・デュ・タンとヴティライネン氏による手仕事の装飾工芸にある。とはいえまずは時計全体の構成を見ていこう。
 GMTウォッチにふさわしく、本作には“エスカル”ケース(フランス語で寄港地、経由地の意)が採用されている。ケース素材はタンタルで、サイズは40.5mm×12.54mm。ベゼル、裏蓋、ラグ、リューズ、バックルにはプラチナが用いられている。各ラグの仕上げには約1時間を要し、まずはカブロナージュ(紙やすりをスティックにしたもの)によって整形し、そのあとポリッシュとエッジ出し(研ぎ)が行われる。さらにタンタル製ケースは手作業によるサテン仕上げで、これに追加で4時間がかかる。裏蓋には“Louis cruises with Kari(ルイはカリと旅をする)”というフレーズが刻まれており、この彫刻には12時間を要するという。この刻印は独立時計師との本シリーズにおける共通タイトルとなっている。
リューズボタンによるGMTという機能的な特徴に加え、このムーブメントはほかのヴティライネン作品と同様に、高度に洗練された技術仕様を備えている。2011年以降ヴティライネン氏が採用しているように、本作にも大型のテンプと、外側にフィリップスオーバーコイル、内側にグロスマンカーブを持つヒゲゼンマイが用いられている。これによりヒゲゼンマイの内側と外側の曲率に等しい張力を与えることができ、最高レベルの精度を実現している。さらにこの時計ではふたつの脱進輪が、止め石を介して直接テンプにインパルスを与えるダイレクトインパルス方式が採用されている。これはスイスレバー脱進機よりも効率的かつ安定的に動作するよう設計されており、1時間あたり1万8000振動/時で作動、パワーリザーブは約65時間に向上している。地板とブリッジにはジャーマンシルバー(洋銀)が使われており、ムーブメントを構成する254個すべてのパーツが極限までていねいに仕上げられている。
ムーブメント側(ヴティライネン作品において常に個人的なお気に入りポイントのひとつ)はダイヤル側への流れとしても絶好の導入部である。なぜなら前面と背面をつなぐ、精緻なエナメル装飾がそこに共通して存在しているからだ。香箱にはラ・ファブリク・デ・アール ルイ・ヴィトン(ラ・ファブリク・デュ・タンのメティエ・ダール部門)所属の職人マリナ・ボッシー(Maryna Bossy)氏による多色のミニアチュール彩絵が施されている。素材はホワイトゴールド製のラチェットアップリケで、27色を描くのに16時間、焼成は5回に分けて行い、合計8時間にもおよぶ。
ダイヤル正面には、ルイ・ヴィトンとカリ・ヴティライネンという両ブランドのダイヤル製作アトリエが持つ最高峰の技術が、ほぼすべて投入されている。マリナ・ボッシー氏はミニアチュール彩絵とダイヤモンドポリッシュが施されたアワーサークルを担当。デザインは古代のステンドグラスに着想を得たもので、28色を用い、1本あたり32時間をかけて描かれている。ゴールド製のダイヤル中央にはヴティライネン氏の工房による手仕上げのギヨシェ装飾が施されており、これはルイ・ヴィトンの“ダミエ”モチーフへのオマージュである。使用されたのは18世紀にさかのぼるギヨシェ機械で、ヴティライネン氏によれば完成までに4日間を要したという。
ヴティライネン氏のアトリエはまた、GMTインダイヤルに配されたデイ・ナイト表示用の太陽と月のモチーフも手がけている。このインダイヤルは手彫りによる装飾が施されており、ルイ・ヴィトンを象徴するサフランとブルーのカラースキームで彩られている。さらに微妙なグラデーションのなかには、ルイ・ヴィトンのモノグラム・フラワーのシェイプがさりげなく隠されている。最後の“ルイ・ヴィトンらしい仕上げ”として、ブランドはダイヤルとムーブメントの両方にLVロゴとヴティライネン氏の姓の頭文字“K”を組み合わせたモノグラムを配している。LVRR-01と同様に、各時計には特注のルイ・ヴィトン製トラベルトランクが付属し、ダイヤルのモチーフやシリアルナンバー、そして“Louis cruises with Kari”のフレーズが、ルイ・ヴィトンの職人によってハンドペイントされている。

カルティエが再びオートマティックに、数十年ぶりに自動巻きキャリバーが搭載された。

カルティエはその節目を記念して、新たなモデルをコレクションに加えた。長い歴史を誇るタンク LC(ルイ カルティエ)の新作で時計界を驚かせるのは容易ではないが、今回のタンク LC オートマティックは、その難題を見事にクリアしてみせた。

© Cartier
昨年発表されたミニモデルによって、タンク LCコレクションはすでに完成の域に達したようにも見えた。だが予想を裏切るかたちで、カルティエはこの最もコピーされたデザインをサイズアップし、自動巻きキャリバーの搭載を実現した。私の記憶が正しければ、タンク LCに自動巻きムーブメントが搭載されるのは、1974年に登場し、いまや高いコレクターズバリューを誇るオートマティック“ジャンボ”のデュオ以来、初めてのことである。


2025年、新たに登場するタンク LC オートマティックは、縦38.1mm×横27.75mm、厚さ8.18mmのケースサイズ。ローズゴールドとイエローゴールドの2種展開で、ダイヤルにはサンバーストにも似た独特の表情が与えられている。


カルティエコピー 激安はタンク LCの美学に対して非常に慎重であり、そのデザインから大きく逸脱することは滅多にない。現在のラインナップではクォーツモデルにグレイン仕上げのダイヤルが採用され、手巻き式のタンク LCにはカルティエのクラシックなギヨシェ模様を模したビーズ仕上げのダイヤルが用いられている。ただ今回の新作では、針の軸を中心として放射状に広がる、いわばサンバースト仕上げ風のダイヤルパターンが採用されており、その模様はダイヤルの縁にまで達している。この仕上げは、私たちがこれまで見てきたカルティエのダイヤルとは明らかに異なっており、フルローターの自動巻きキャリバーをさりげなく想起させる、隠れたオマージュとも受け取れる表現である。

© Cartier
外観のディテールにおいて、新作タンク LC オートマティックはこれまで親しまれてきた従来のタンク LCにほぼ準じている。ブルースティール製のソード型時・分針、タンク LCらしく秒針は非搭載、そしてセミマット仕上げのクラシックなアリゲーターレザーストラップが組み合わされる。ケースと同色のビーズ装飾付きリューズには、サファイアカボションがあしらわれている。
搭載されるCal.1899 MCは、2023年に刷新されたタンク アメリカンで初登場したもの。当時カルティエは、この新しい自動巻きムーブメントが従来のものより薄型であり、新モデルを以前よりもおよそ1mm薄くすることを可能にしたと説明していた。

我々の考え
タンク LCを語るうえで、サイズは非常に重要な要素である。世紀にわたるデザインに幾度となく手を加えてきたカルティエは、常にあらゆる好みや手首のサイズに応える多彩なバリエーションを展開してきた。タンク LCのサイズを拡大するという試みもひとつの進化だが、今回の新作で特筆すべきはラインナップの拡充と同時に、自動巻きの復活を果たしたことだ。

© Cartier
1974年に発表されたオートマティック仕様のタンク LC“ジャンボ”は、ここ数年で一層注目を集めており、ヴィンテージカルティエ全体への関心の高まりを差し引いてもその人気ぶりは際立っている。“ジャンボ”と呼ばれるモデルは実は2種類存在し、小さいほうは33.5mm×25.5mm、大きいほうは34.5mm×28mmのケースサイズとなっている。これに対して、今回のタンク LC オートマティックは38.1mm×27.75mmと、両者よりも大きいものの、カルティエ現行のタンク マスト XLが41mm×31mmであることを考えると、極端な大型化とはいえない。このような背景を踏まえると新作タンク LC オートマティックにふさわしいサイズ呼称を与えるとすれば、ジャンボが適切だろう。LMの呼称は、ルイ カルティエには似合わない。
時計メディアや“インフルエンサー”たちがこぞって小径時計回帰を叫ぶなかで、今回の新作はその潮流に逆らうかのようにも見える。あるいはカルティエがトレンドを読み違えたのでは...そんな辛口の見方もできるだろう。だが、ここでリー・コルソ(Lee Corso)氏の言葉を借りよう。“ちょっと待った、友よ”。私の見解だとカルティエは今回、現代的な過剰サイズに陥ることなく、タンク LCにおける大きめの選択肢を見事に提示してみせた。正直、プレスリリースを開いたとき、ケース径の数値が4で始まっているのではと身構えたものだ。

© Cartier
このリリース自体にはもちろん驚かされたが、そのサイズ感がXLに走らず、抑制の効いたものであったことにも意外性を感じた。ただ振り返ってみると2023年のタンク アメリカン ラージと、それに搭載された新型の薄型自動巻きキャリバーを経て、この展開は予兆として存在していたのかもしれない。昨年のタンク ミニで巧妙に煙に巻かれた感はあるが、このムーブメントがタンク アメリカンに適しているのであれば、いずれタンク LCにも搭載されることは予見できたはずなのだ。

基本情報
ブランド: カルティエ(Cartier)
モデル名: タンク LC LM オートマティック(Tank Louis Cartier Automatic)
型番: CRWGTA0346(RG)/CRWGTA0357(YG)

直径: 38.1mm×27.75mm
厚さ: 8.18mm
ケース素材: ローズゴールドまたはイエローゴールド
文字盤: シルバー(サンレイ風仕上げ)
インデックス: ローマ数字
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: セミマット仕上げのアリゲーターレザーストラップ

© Cartier
ムーブメント情報
キャリバー: 1899 MC
機能: 時・分表示
巻き上げ方式: 自動巻き
パワーリザーブ: 約38時間
振動数: 2万8800振動/時