スーパーコピー時計

オリエントスターから、秋の田沢湖をイメージしたM45 F7 メカニカルムーンフェイズ Ref.RK-AY0120Aが登場

今年、オリエントスター(Orient Star)は従来のラインナップを3つのコレクションに分類し、それらをまとめてMコレクションズ(M Collections)と名付けた。Mは星団、星雲を表し、星団すばる、プレアデスを表すM45コレクション、ペルセウスの名を冠したM34コレクション、海神ポセイドンの子であるオリオンからとったM42コレクションが並ぶ。元来オリエントスターは“輝ける星”と呼ばれる機械式時計を作りたいというコンセプトを持っていたが、今回のリニューアルで従来のクラシック、コンテンポラリー、スポーツの3つのコレクションについてより宇宙にフォーカスし、情緒的に表現した形になる。

今回紹介するのは、そのなかでもM45に属するモデルだ。星団すばるをイメージした今年4月リリースの“メカニカルムーンフェイズ M45”と同じ名前を持ち(ブランドとして同モデルを意識したかは聞いてみたいところだ)、伸びやかなラグやローマンインデックスによりフォーマルな美観を表現するコレクションで、現状ではメカニカルムーンフェイズを中心に構成されている。その新作であるM45F7 メカニカルムーンフェイズ Ref.RK-AY0120Aは、工房の位置する秋田県湯沢市、そこにある秋の田沢湖の情景がモチーフとなっている。

夜、月の下で静かに揺蕩う湖面を、オリエントスターは白蝶貝(MOP)と裏打ち塗装により表現した。外周に向かって暗く落ちていくようなグラデーションは、ひっそりとした月明かりをノスタルジックに描いている。ローマンインデックスに12時位置のパワーリザーブ表示、6時位置のムーンフェイズとデイト表示など、要素的な面で変更は見られない。センター部分に見られる、オリエントスターロゴの透かしデザインもしっかり踏襲されている。ストラップは光沢感の強いダークブラウンのワニ革に、プッシュ三つ折式バックルを採用した。

ケース径は41mmで、厚さは13.8mm。ムーブメントには2万1600振動/時で駆動し、約50時間のパワーリザーブを有するCal.F7M65を搭載している。オリエント時計時代から誇る、いわゆる46(ヨンロク)系に属するものだ。その姿はスケルトンバックから確認することができる。

今作は2023年10月に22万円(税込)で発売を予定している。また、国内のみで350本限定での展開となっている。

白蝶貝とグラデーションダイヤルの掛け合わせによる“田沢湖”モデルは、今回が初ではない。2022年秋冬リリースのRef.RK-AY0113Aでは冬も近い晩秋の田沢湖の湖面を、Ref.RK-AY0114Aでは湖面に映る新緑と星空をMOPダイヤル上で表していた。オープンワークが施されておらず、ダイヤルを全面活用できるメカニカルムーンフェイズを下地にしたことで、今作を含むどのモデルもムーンフェイズの月が際立つ非常に趣のある表情に仕上がっている。

しかし、Mコレクションズとして1本目のメカニカルムーンフェイズのリリースにあたり、オリエントスターはもう少しだけロマンチックな表現を行ったように思う。紅葉と月明かりを思わせるダイヤルの中心から、メッキを施したベゼルとリューズ、ダークブラウンのストラップまでを含めた、トータルのグラデーションが実に美しい。同じく秋をテーマとしたRef.RK-AY0113Aでは凛とした静けさや夜の緊張感が強調されていたが、今作はより温かみがある表情になっている。田沢湖をテーマとしたメカニカルムーンフェイズのなかで、高級感を演出するにあたってのアプローチが変わったように見える。

過去2作と同様、Ref.RK-AY0114Aにもプッシュ観音式のバックルとスモールアジャスト機能を搭載したSS製のメタルバンドが付属する。だが、もし僕が実際に身につけるなら、まずはワニ革ストラップのままがいい。せっかく秋夜の田沢湖をそのまま持ち出したような時計なのだから、その情緒を素直に味わってみようと思う。

基本情報
ブランド: オリエントスター(Orient Star)
モデル名: M45 F7 メカニカルムーンフェイズ(F45 F7 Mechanical Moon Phase)
型番: RK-AY0120A

直径: 41mm(ラグからラグまでの長さは47.3mm)
ラグからラグまで: 49mm
厚さ: 13.8mm
ケース素材: ステンレススティール(SUS316L)
文字盤色: ブラウングラデーション
インデックス: ローマンインデックス
夜光: なし
防水性能: 5気圧
耐磁性能: 1種
ストラップ/ブレスレット: プッシュ三つ折式クラスプ付きワニ革ストラップ、プッシュ観音式バックルとスモールアジャスト機能付きSS製メタルバンド

ムーブメント情報
キャリバー: F7M65
機能: 時・分・秒表示、12時位置にパワーリザーブインジケーター、デイト表示とムーンフェイズ
パワーリザーブ: 50時間以上
巻き上げ方式: 自動巻き(手巻き付き)
振動数: 2万1600振動/時
石数: 22
追加情報: 秒針停止機能付き

価格 & 発売時期
価格: 22万円(税込)
発売時期: 2023年10月発売予定
限定: 国内限定350本

シチズン 原子時計の標準電波を用いた超高精度ムーンフェイズモデル。

これは毎日自動的にムーンフェイズを調整する新しいエコ・ドライブムーブメントだ。

シチズンが、ソーラーウォッチとしては初めてのアナログ式ムーンフェイズキャリバーを搭載した、新しい“ツキヨミ A-T”コレクション発表した。この3つの新作は(10万年に1秒の誤差と言われる)原子時計の標準電波を使ったエコ・ドライブCal.H874を採用する。この新しいムーブメントは、原子時計(の標準電波)を使って毎日表示を調整する正確なムーンフェイズ機能を特徴に持つ。

 同キャリバーは電波を受信した信号に基づいて毎日月の満ち欠けを計算し、6時位置のムーンフェイズ表示が自動的に調整される。また北半球、南半球のどちらから見えているかによって、月の満ち欠けを切り替えることができる“NSシフト”機能も搭載する。この新しいムーンフェイズ機能のほか、シチズンによると同キャリバーの精度は月差±15秒だという。
 エコ・ドライブムーブメントは光を動力源とし、低電力モードだと最長2年半使用できる。Cal.H874は原子時計からの信号を受信するマルチバンド無線受信機能を備えており、原子時計の精度と設定を一定に保つ。原子時計は非常に正確で、原子の共振周波数を監視して時間を測定する。これは原子の電子状態が異なるエネルギー準位を持ち、これらの状態のあいだを遷移するとき、ごく特定の周波数の電磁波と相互作用するためである。原子時計はその精度の高さから衛星ネットワークやGPSに使用され、そして今では新しいツキヨミ A-Tの6時位置にあるアナログ式ムーンフェイズ表示にも使用されている。

 このコレクションは43mm径×10.9mm厚のチタン製ケースおよびチタン製ブレスレットを組み合わせた。シチズンは1970年に最初のチタンウォッチを作ったが、今日ではチタンにデュラクトコーティングを施し表面の耐傷性を高めている。
 ツキヨミ A-Tにはブルー、シルバー、ディープレッドの3種類のダイヤルオプションがあり、最後のディープレッドモデルはブラックDLCコーティングのベゼルが組み合わされている。価格はそれぞれ850ドル(日本円で約12万7000円)だ。

 30年前、シチズンは初のマルチバンド原子時計をリリースしたが、原子時計の歴史はもっと古い。同ブランドのもうひとつの特徴的な技術であるエコ・ドライブと組み合わせることにより、光を追加するだけで究極の精密計時が実現する。原子時計(の標準電波)を使って自動的にムーンフェイズを調整するという新しいムーブメントの開発は、この分野へのシチズンの貢献の最新形である。それ自体が科学の革新であり、それ自身のための精密な計時であり、常に興味深いものなのだ。


基本情報
ブランド: シチズン(Citizen)
モデル名: ツキヨミ A-T(Tsuki-yomi A-T)
型番: BY1010-57L(ブルー)、BY1010-57H(シルバー)、BY1018-55X(ディープレッド)

直径: 43mm
厚さ: 10.9mm
ケース素材: スーパーチタニウム
文字盤: ブルー、シルバー、ディープレッド
夜光: あり、針とインデックス
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: スーパーチタニウム製ブレスレット

ムーブメント情報
キャリバー: エコ・ドライブ H874
機能: 時・分・センターセコンド、日付・曜日表示、ワールドタイム(24タイムゾーン)、永久カレンダー、月齢自動計算機能(ルナプログラム)
パワーリザーブ: エコ・ドライブはフル充電で約2.5年間使用可能
追加情報: シチズンが開発した“ルナプログラム”は、電波発信器の信号から毎日の月の満ち欠けを計算し、自動的に調整する

価格 & 発売時期
価格: 850ドル(日本円で約12万7000円)

グラスヒュッテ・オリジナルは新たなコラボレーションによる3本の新作を発表した。

このコラボレーションは、ドイツ(そしてヨーロッパ)初の磁器メーカーとして1710年に創業したマイセンとのものである。

ご想像のとおり、この新作であるトリオは3種類の新しいポーセリンダイヤルで構成されている。ケースは直径40mmのレッドゴールド製で、厚さは10.23mm、ラグ・トゥ・ラグは47.09mm。3種のダイヤルはいずれも薄いポーセリンの板からつくられ、1400℃というきわめて高い温度で焼成される。釉薬にはホワイトまたはセラドングリーンを使用している。この過程では割れが生じやすいが、無事に焼成を終えたダイヤルには特徴的なローマ数字やレタリングなど、すべての装飾が職人の手作業で1層ずつ描き加える。各層が仕上がるたびにダイヤルは再び高温で焼成し、定着させる。
3本の限定モデルのうち2本は、マイセンのシグネチャーである“ミスティックメゾン”の装飾を採用している。ホワイトまたはセラドングリーンのダイヤル中央に描かれた輪郭の内側に、手描きによる華やかな花のモチーフを配している。それぞれ150本の限定生産だ。そして3本目は最も大胆で、そしてわずか8本限定の最も希少なモデル。ローマ数字は姿を消し、代わりにマイセンのクレーター花瓶“Dekorwelten”に着想を得た、きわめて鮮やかなコラージュが広がる。カラフルな動物、花、果実がセラドングリーンの背景の上に描かれ、すべてが職人の手によって彩色されている。

これら3本の限定モデルはいずれも、グラスヒュッテ・オリジナル自社製の自動巻きCal.36-16を搭載している。現代的な設計のムーブメントで、パワーリザーブは100時間、両方向巻き上げ機構を備え、シリコン製ヒゲゼンマイを採用している。ダイヤルのデザインこそブランドとしてはきわめて異色だが、ムーブメントはクラシックなグラスヒュッテ・オリジナルの真髄と言える仕上がりで、必要なジュネーブストライプ、手彫りのテンプ受け、そして多くの面取りや青焼きのネジがすべて施されている。
セネタ・マイセン エディションは、グラスヒュッテ・オリジナルの全ブティックおよび世界各国の一部正規販売店で取り扱われる予定だ。ミスティックメゾン ダイヤルの2モデルは423万5000円(税込)、コラージュ ダイヤルは3万6400ドル(日本円で約550万円、日本での価格は要問い合わせ)となっている。

我々が知っていること
今年のグラスヒュッテ・オリジナルのラインナップはきわめて強力だと私は感じている。そしてこの3つのモデルは一般向けのアピール力は限定的でありながらも、コラボレーションとして実に興味深く、ふたつの異なるドイツのクラフツマンシップの世界をつなぐ架け橋として理にかなっている。完璧なプリント精度を求める人は、別のモデルを探したほうがいいだろう。これらは、人間の不完全さを楽しむことにすべてがあるのだ。

言うまでもなく、“ミスティックメゾン”装飾を施したホワイトポーセリンダイヤルは、このトリオのなかでも最も控えめな存在だろう。おそらくいずれのモデルもすぐに完売すると予想されるが、なかでもホワイトダイヤルは最も早く姿を消すに違いない。グラスヒュッテ・オリジナルの時計全般に言えることだが、このダイヤルもまた“知る人ぞ知る”という絶妙なさりげなさを備えた仕上がりだ。しかしもしこの3本のうちから1本を選ぶとしたら私は迷わず、自然界の豊かさをそのまま表現したコラージュダイヤルを選ぶだろう。このモデルは、このラインナップのなかで最も突飛なものであり、すでにすべてを持っている人々のコレクションに加わることは間違いない。

基本情報
ブランド: グラスヒュッテ・オリジナル(Glashütte Original)
モデル名: セネタ・マイセン(Senator)
型番: 1-36-16-03-05-01(ホワイトのミスティックメゾン)、1-36-16-02-05-01(セラドングリーンのミスティックメゾン)、1-36-16-01-05-01(コラージュ)

直径: 40mm
厚さ: 10.23mm
ケース素材: レッドゴールド、シースルーバック
文字盤色: ポーセリン
インデックス: 手描き
夜光: なし
防水性能: 5気圧
ストラップ/ブレスレット: ダークブルーのルイジアナ・アリゲーター・ストラップ

ムーブメント情報

キャリバー: 36-16
機能: 時・分表示
パワーリザーブ: 100時間
巻き上げ方式: 自動巻き、両方向巻き上げ
振動数: 2万8800振動/時
クロノメーター認定: なし
追加情報: シリコンヒゲゼンマイ

価格&発売時期
価格: ミスティックメゾンダイヤルは423万5000円(税込)、コラージュダイヤルは3万6400ドル(日本円で約550万円、日本での価格は要問い合わせ)
発売時期: グラスヒュッテ・オリジナルブティックおよび一部の正規取扱店にて発売中
限定: あり、ミスティックメゾンは各色150本限定、コラージュは8本限定

ランゲの最も貴重な貴金属ふたつを使用した、各200本限定のサイズアップモデル。

A.ランゲ&ゾーネからリリースされた34mmの1815は、時・分・秒というシンプルな表示ながらWatches & Wondersにおける今年最高の時計のひとつであり、そのサイズにもかかわらず、万人に愛されているようだった。しかしサクソニア・フラッハには長年のファンがおり、より大きなドレスウォッチを求める声もあった。今回発表されたハニーゴールド(HONEYGOLD®)750とプラチナ950の新しいサクソニア・フラッハのペアモデルはどちらもオニキスをあしらった925シルバーダイヤルを備え、このギャップを効果的に埋める、きわめて魅力的なふたつの限定モデルだ。

 直径40mm、厚さ6.2mmの本作に搭載される直径28mmの手巻きCal.L093.1は、ケースバックから見るとやや小さく見える。厚さわずか2.9mmながら、このムーブメントは72時間という驚くべきパワーリザーブを誇り、2万1600振動/時で駆動。21石、3つのねじ留めのゴールドシャトン、耐衝撃性のスクリューテンプ、そして自社製ヒゲゼンマイを備えている。

 このムーブメントは2011年に発表されたもので、これほどのパワーリザーブと信頼性が証明されているため、その成功に代わるものや改善する必要はまったくない。そしてご覧のとおり、時計は信じられないほど薄いままなのである。



 新しいサクソニア・フラッハのモデルはどちらも素晴らしい。ハニーゴールドのケースは常にコレクターにとって魅力的な選択肢であり、ブラックオニキスをあしらったシルバーダイヤルとの組み合わせはさらに魅力を高めている。プラチナとオニキスの組み合わせもまた、ホワイトメタルの選択肢を好む人にとっては堅実な選択だ。どちらの時計も200本限定で、価格は4万5000ユーロ前後(日本円で800万円前後、日本での価格は要問い合わせ)だ。


我々の考え
興味深いことに、優れたブラックダイヤルとゴールドケースのドレスウォッチは市場にほとんど出回っていない。特に、ほとんどのコレクターが、それがヴィンテージウォッチにおける究極の組み合わせだと語ることを考えればなおさらだ。現代の文脈では重厚すぎるかもしれないが、ハニーゴールドとオニキスストーンの組み合わせは本当に素晴らしい。ランゲのプロダクト・ディベロップメント・ディレクターであるアントニー・デハス(Anthony De Haas)氏は、オニキスダイヤルとあらゆるケース素材の組み合わせを試した結果、このふたつに落ち着いたと私に語った。ホワイトゴールドはこの特別感を出すには物足りず、A.ランゲ&ゾーネは以前にもホワイトゴールドのサクソニアにブラックダイヤルを組み合わせたモデルを製造している。しかしハニーゴールドとプラチナはテストでうまく機能した。ハニーゴールドのケースとブラックダイヤルはケースの色をよりホワイト寄りに押し出すが、それでもわずかにイエローとローズの色合いを保っている。

ハニーゴールドバージョン。

プラチナバージョン。

 しかしながらハニーゴールドの魅力のひとつは、ブランドがこの素材をめったに使わないことだ。最近では、ダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨン・ハニーゴールド “ルーメン”や、オデュッセウス ハニーゴールドなど近年勢いを増しているように見えるが、デハス氏は使いすぎを心配する必要はないと私に語った。ハニーゴールドは加工がきわめて難しいため、オデュッセウス ハニーゴールドのブレスレットの課題はさておき、製造できるケースの数には限界があるのだ。彼らはまた、この素材の美しさの一部が光によって色合いが変化するだけでなく、その希少性にあることを理解している。今後、この素材がこれほど頻繁に使われることを期待すべきではないが、今あるうちに楽しむことはできるだろう。

基本情報
ブランド: A.ランゲ&ゾーネ(A. Lange Söhne)
モデル名: サクソニア・フラッハ(Saxonia Thin)
型番: 211.052, 211.062

直径: 40mm
厚さ: 6.2mm
ケース素材: ハニーゴールド(HONEYGOLD®)750とプラチナ950
文字盤色: 925シルバー、ブラックオニキス張り
インデックス: ゴールド750、ロジウム仕上げ
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ブラックでグロッシーなアリゲーターレザーストラップ、ケースと同素材のピンバックル


ムーブメント情報
キャリバー: L093.1
機能: 時・分表示
直径: 28mm
厚さ: 2.9mm
パワーリザーブ: 72時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 21
クロノメーター認定: なし
追加情報: 未処理のジャーマンシルバー製プレートとブリッジ、手彫りのテンプ受け

価格&発売時期
価格: 約4万5000ユーロ(日本円で約800万円、日本での価格は要問い合わせ)
発売時期: 発売中
限定: あり、各200本限定

オリスとコレクティブ・オロロジーによる70年代風ウォッチが登場。

コレクティブ・オロロジー(Collective Horology)は、モンブランとコラボした1858 ミネルバ モノプッシャー クロノグラフのリリース後、大盛り上がりを見せている。今回のコラボ相手はオリスだ。1970年代にタイムスリップしたような新作を紹介しよう。

オリス ダイバーズ65 キャリバー400 C.04
ベースはほかのオリス ダイバーズ65と同じ、40mm径×12.8mm厚のステンレススティールケースを採用(少なくともCal.400ムーブメントを載せたモデルと)。今回の時計は1975年までさかのぼり、ブロンズのアクセントと、1970年代のキッチン(今まで想像したなかで最も派手なタイプ)から飛び出してきたような配色をまとう。本作はブロンズ製逆回転防止ダイビングベゼル、センターリンクにブロンズを配したブレスレットを備え、さらにイエローの夜光塗料を塗布したブロンズ針が、同じくイエロー夜光塗料のインデックスとマッチしている。文字盤はオレンジとイエローの夜光、そして赤みがかったオレンジが混ざり合っていて、70年代を生きたことがなくても直感的に70年代風だと思える。

オリス ダイバーズ65 キャリバー400 C.04
前述したように、時計は自社製ムーブメントのCal.400を搭載しており、約120時間のパワーリザーブを確保する。シースルーバックを備えたケースは100mの防水性を備えるなど、ほとんどの用途には十分なスペックだ。価格は4500ドル(日本円で約67万8000円)だが、これは自社製ムーブメントを考慮したものだ。本当に悔しいのは、これが連続生産されるわけではなく、250本しか製造されないことである。

我々の考え
我慢できない。言わせてくれ。これはグルーヴィー(超イイもの)だ。

オリス ダイバーズ65 キャリバー400 C.04のリストショット
コレクティブ・オロロジーのチームは、初期のダイバーズ65で様式化された夜光インデックスをうまく利用している(それ自体がヴィンテージオリスへの回帰である)。そこにブロンズの逆回転防止ベゼル、70年代らしいカラーリング、ブロンズ&SSのブレスレットでパンチを効かせており、今年発表されたオリスのなかでいちばん好きなモデルかもしれない。

ある時点で私は、オリスが旧来の非自社製ムーブメントをやめ、ダイバーズ65のラインナップをCal.400ムーブメントに完全移行するだろうと思っていた。結果は、ふたつの異なる価格帯を展開することで、ブランドを身近なものにさせた。しかしコレクティブ・オロロジーは少し高級なものにして、約120時間パワーリザーブを持つムーブメントをチョイスした。これは正しい選択だと思う。確かに、“ダイバー”と名を冠しているのに100mの防水性能しかないため、ダイビングに適した時計ではないが、カジュアルなスキンダイバースタイルの時計としては、とても楽しい選択肢であることは間違いない。

オリス ダイバーズ65 キャリバー400 C.04
コレクティブ・オロロジーのガーベ・レイリー(Gabe Reilly)氏が指摘しているように、ほかのブランドがブレスレットやベゼルに温かみのある色合いを出すときは、ゴールドキャップ(金メッキ等)を採用していたのに対し、オリスはラインナップの大部分をブロンズが占めている。多少の経年変化は起こるものの、ケース全体がブロンズで作られていないため、ヴィンテージの金無垢モデルや金メッキ時計で見られるパティーナのような雰囲気を演出し、しかもそのパティーナを得るのに50年もかからないという長所が、本当にクールに感じるのだ。

基本情報
ブランド: オリス × コレクティブ・オロロジー(Oris × Collective Horology)
モデル名: オリス ダイバーズ“75” キャリバー400 C.04(Divers "Seventy-Five" Calibre 400 C.04)
直径: 40mm
厚さ: 12.8mm
ラグからラグまで: 48mm
ケース素材: ステンレススティール、ブロンズベゼル
文字盤: オレンジ、イエロー、レッドのマルチカラー
インデックス: 70年代風のオーバーサイズプリント
夜光: あり、インデックスと針
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ブロンズ&SSブレスレット

オリス ダイバーズ65 キャリバー400 C.04に搭載されたCal.400
ムーブメント情報
キャリバー: 400
機能: 時・分・センターセコンド
直径: 30mm
厚さ: 4.75mm
パワーリザーブ: 約120時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 21

価格 & 発売時期
価格: 4500ドル(日本円で約67万8000円)
発売時期: 現在生産中で、2023年12月に出荷予定
限定: 世界限定250本、コレクティブ・オロロジー公式ECサイトで販売

ゾディアック×ローイングブレザーズ いくつかの都市を変更した新しいワールドタイム GMTが登場

80年代…ディスコトップ、パンクロック、レザーブレザー、グラムロック。この時代にはすべてがあった。そして、もし本当にその時代をぜいたくに暮らしたいと思うなら、唯一無二の時計、彫刻のようなデザイン、スイスで手作りされた時計が欲しいはずだ。モンテカルロ、ビバリーヒルズ、ロンドン、パリ、ローマ、グシュタードの時間を同時に教えてくれる時計を。まあ、数十年遅れてしまったが、ゾディアックとローイングブレザーズは、まさにそんなシナリオにぴったりの時計をつくってくれた。

映画『大逆転(原題:Trading Places)』にてダン・エイクロイド(Dan Aykroyd)が嫌味なほど堅苦しく話していたロシュフコー(映画内で登場したブティックブランド)のような、ある種の薄さと彫刻のようなエレガンスはないが、ゾディアックとローイングブレザーズの新しいコラボレーションは、40mm径×13.6mm厚のステンレススティール製ケースとブルーベゼルを採用し、そこに映画で登場する重要な都市をすべて配した、新しいGMTワールドタイムウォッチだ。

内部には、ソプロード社製キャリバーをゾディアックがSTP7-20にアップグレードした、時・分・センターセコンド、日付表示を備えたコーラー(独立したGMT針)GMTを搭載する。ブラック文字盤にホワイトの24時間トラック、スーパールミノバ、文字盤にはローイングブレザーズのサインが入っており、5リンクのSSブレスレットが付いている。新しいゾディアックをつけて(ダン・エイクロイド演じる)ルイス・ウィンソープ3世のコスプレをしたければ、2195ドル(日本円で約31万9000円)かかる。彼が映画のなかで買った時計よりははるかに安いが、質屋で50ドルで買うよりかは高い。

我々の考え
恣意的であり知る人ぞ知る限定版ということで、これはこれでなかなかおもしろい。スーパーシーウルフGMTは、私のお気に入りの手頃なヴィンテージウォッチのひとつだが、ヴィンテージウォッチの堅牢性を心配していて、かつ新しくて信頼性が高くて楽しいものを求めているなら、ゾディアックとローイングブレザーズの新コラボ以上のものはないだろう。

実機を見たことがないので、新しいSTP7-20ムーブメントが使用中にどのような動きをするのかはわからない。自社製で(というよりゾディアックとSTPを所有するフォッシルグループとそのグループ内)、シリコンとアップグレードされたコンポーネントを追加することにより、強度の高いムーブメントを実現すると同時に、外部の業界プロバイダーに依存するサプライチェーンの問題を取り除くことができる。

それはそれでいいことだし、前モデルのスペックから少し価格が上がったことも正当化されるだろう。結局のところ、この時計は楽しさがすべてであり、私にとってはその条件を満たしている。さて、(映画のデューク兄弟のように)誰かジュースの先物取引をしたい人はいるだろうか?


基本情報
ブランド: ゾディアック×ローイングブレザー(Zodiac × Rowing Blazers)
モデル名: ワールドタイム GMT(World Time GMT)

直径: 40mm
厚さ: 13.6mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: ブラック
インデックス: アプライド、ワールドタイムベゼル
夜光: スーパールミノバ
防水性能: 200m
ストラップ/ブレスレット: 5リンクのSS製ブレスレット、NATOストラップ付属

Zodiac x Rowing Blazers World Timer
ムーブメント情報
キャリバー: STP7-20
機能: 時・分・センターセコンド、日付表示、コーラーGMT(独立GMT針)
パワーリザーブ: 約40時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 26
クロノメーター: なし
追加情報: 1980年代のホットスポットの都市に入れ替えたローイングブレザーズのシグネチャーブルーのワールドタイムベゼル

価格 & 発売時期
価格: 2195ドル(日本円で約31万9000円)
発売時期: すぐに
限定: あり、世界限定282本

ドイツの有名なカメラメーカーから発売された貴重な腕時計の、超限定バージョンだ。

ライカが新しいZM 11モデルを発表してからわずか数カ月後、ブランドはオリジナルのZM 1をベースにした最初のリミテッドモデルを正式ローンチした。新しいモデルはZM 1 ゴールド リミテッドエディションで、オリジナルのZM 1(以前のL 1)を踏襲しており、18Kレッドゴールド製ケースと、ブラウンのグラデーションダイヤルが特徴だ。

50本限定のZM 1 ゴールド リミテッドエディションは、オリジナルのZM 1の機能はそのままに、ケースとダイヤルを変更し、より温かみのある貴重なカラーリングに仕上げた、ブランドの最も熱心なファンのための特別なモデルだ。スタンダードモデルがブラック文字盤、赤のアクセント、スティールケースを備えているのに対し、ZM 1 ゴールドは特別な素材、特にゴールドとチタン(ムーブメントに使用)を使って表現する既存のライカ製品を再現している。

 ZM 1(これはこの記事でL2としてレビューしたZM 2の姉妹モデル)はレーマン・プレシジョン社(Lehmann Präzision)のカスタムムーブメントを採用した41mm径の時計で、時刻、日付、パワーリザーブインジケーターを提供。またパワーリザーブの巻き上げと時刻合わせのどちらを行うか、コントロールする特別な機能も備えている。この機能は第3のリューズに設定された赤いキャップのボタンで制御される。ボタンを押すとムーブメントが停止し、秒表示がゼロに帰零してリューズを回して時刻を合わせることができる。

 リューズの上にあるプッシャーで日付を進め、ワインディングモード(作動中)の場合は白、セッティングモードの場合は赤の小窓が開く。最後にカメラをテーマにしたもうひとつの演出として、ZM 1はカメラのシャッターのブレードを模した中央から開くパワーリザーブインジケーターを備えている。

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 リューズとプッシャーはチタン製で、ZM 1 ゴールド リミテッドエディションはブラウンのアリゲーターに18KRGのデプロワイヤントクラスプが付いており、価格は2万8000ドル(日本円で約411万8000円)となっている。

我々の考え
ZM 1 ゴールド リミテッドエディションは、ゴールドとブラックのカラーバリエーションを施した1929年発表のカメラ、“IA Luxus”へのオマージュとして製作された。しかし時計製品という観点から見ると、ZM 1とZM 2が発売されたときには感動したものの、時計がカメラのM 11と同等かそれ以上の価格で販売されることに、僕は純粋に疑問を感じていた。さて、数カ月前にライカ本社でZM 1 ゴールドエディションを見たとき、僕はいくつかの数字(とカラスのプレート)も手に入れた。

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 結局のところ、ライカはZM 1とZM 2を合わせて年間約500本しか生産しておらず、そのうちの30%はライカ以外の顧客に販売される。ということは、ライカのカメラを持っていない人たちが購入しているということだ。これは特筆すべきことであり、このリミテッドエディションがZM 1と2の年間生産本数の約10%を占めていることを意味する。すでに同意している人から賛同を得ようとしているようなものだ。

 時計のなかでも、ZM 1は非常に印象的なモデルだ。よくできていて、ライカのデザイン言語を踏襲し、カメラ関連のギミックを搭載しているが、それをまったく感じさせない。ケースと文字盤はデザインの顕著な表現であり、特に本当に特別なものを求めるライカコレクターのためのものである。とはいえ、ブラウン文字盤が僕の好みに合っているとは言えない。個人的にはやはりベゼルベースのGMT機能があるブラックとSSのZM 2を今でも気に入っているのだ。

 主な争点は価格だろうが、SS製のZM 1がおよそ1万2000ドル(日本円で約176万6000円)という値段を考えると、このゴールドとチタン製リミテッドエディションのライカからの提示価格には驚かない。50本しかないし、通りすがりの人に提供するような商品でないことは間違いない。この種のライカ製品は、あらかじめ購入資格がある可能性が高く、その魅力はフォーマットと極めて限定された生産数にある。私がヴェッツラー(またしても賛同を得よう)にいたとき、私は少なくともふたりの深いライカコレクターと話をしたが、彼らはゴールド製ZM 1のリストに名前が載ったことをとてもよろこんでいた。

leica ZM 1 gold
 ZM 1、ZM 2が発売されてから(2022年春以降に発売)、極めて短期間で成功を収めたことを考えると(最近のZM 11によるライカウォッチファミリーの拡大は言うまでもない)、ZM 1 ゴールド リミテッドエディションはライカからの真っ当な試みであり、本質的にはブランドの最もアクティブなコレクターのための特別なモデルとして機能するように感じられるのだ。

基本情報
ブランド: ライカ(Leica)
モデル名: ZM 1 ゴールド リミテッドエディション(ZM 1 Gold Limited Edition)

直径: 41mm
厚さ: 14.5mm
ラグからラグまで: 48mm
ケース素材: 18Kレッドゴールド
文字盤: アルミニウム、グラデーションブラウン仕上げ、ゴールドアクセント
インデックス: ゴールドプレートとダイヤモンドカット
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: アリゲーターレザーストラップ、18KRG製ディプロワイヤントクラスプ

leica ZM 1 gold
ムーブメント情報
キャリバー: LH-1001
機能: 時・分表示、スモールセコンド、日付表示、パワーリザーブインジケーター
パワーリザーブ: 約60時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 26
追加情報: リューズプッシャーで時刻設定モードを起動

価格 & 発売時期
価格: 2万8000ドル(日本円で約411万8000円)
発売時期: 本日より世界各地のライカストアで販売
限定: あり、世界限定50本

唯一無二の時計、彫刻のようなデザイン、スイスで手作りされた時計が欲しいはずだ。

モンテカルロ、ビバリーヒルズ、ロンドン、パリ、ローマ、グシュタードの時間を同時に教えてくれる時計を。まあ、数十年遅れてしまったが、ゾディアックとローイングブレザーズは、まさにそんなシナリオにぴったりの時計をつくってくれた。

映画『大逆転(原題:Trading Places)』にてダン・エイクロイド(Dan Aykroyd)が嫌味なほど堅苦しく話していたロシュフコー(映画内で登場したブティックブランド)のような、ある種の薄さと彫刻のようなエレガンスはないが、ゾディアックとローイングブレザーズの新しいコラボレーションは、40mm径×13.6mm厚のステンレススティール製ケースとブルーベゼルを採用し、そこに映画で登場する重要な都市をすべて配した、新しいGMTワールドタイムウォッチだ。

内部には、ソプロード社製キャリバーをゾディアックがSTP7-20にアップグレードした、時・分・センターセコンド、日付表示を備えたコーラー(独立したGMT針)GMTを搭載する。ブラック文字盤にホワイトの24時間トラック、スーパールミノバ、文字盤にはローイングブレザーズのサインが入っており、5リンクのSSブレスレットが付いている。新しいゾディアックをつけて(ダン・エイクロイド演じる)ルイス・ウィンソープ3世のコスプレをしたければ、2195ドル(日本円で約31万9000円)かかる。彼が映画のなかで買った時計よりははるかに安いが、質屋で50ドルで買うよりかは高い。


我々の考え
恣意的であり知る人ぞ知る限定版ということで、これはこれでなかなかおもしろい。スーパーシーウルフGMTは、私のお気に入りの手頃なヴィンテージウォッチのひとつだが、ヴィンテージウォッチの堅牢性を心配していて、かつ新しくて信頼性が高くて楽しいものを求めているなら、ゾディアックとローイングブレザーズの新コラボ以上のものはないだろう。

実機を見たことがないので、新しいSTP7-20ムーブメントが使用中にどのような動きをするのかはわからない。自社製で(というよりゾディアックとSTPを所有するフォッシルグループとそのグループ内)、シリコンとアップグレードされたコンポーネントを追加することにより、強度の高いムーブメントを実現すると同時に、外部の業界プロバイダーに依存するサプライチェーンの問題を取り除くことができる。

それはそれでいいことだし、前モデルのスペックから少し価格が上がったことも正当化されるだろう。結局のところ、この時計は楽しさがすべてであり、私にとってはその条件を満たしている。さて、(映画のデューク兄弟のように)誰かジュースの先物取引をしたい人はいるだろうか?

基本情報
ブランド: ゾディアック×ローイングブレザー(Zodiac × Rowing Blazers)
モデル名: ワールドタイム GMT(World Time GMT)

直径: 40mm
厚さ: 13.6mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: ブラック
インデックス: アプライド、ワールドタイムベゼル
夜光: スーパールミノバ
防水性能: 200m
ストラップ/ブレスレット: 5リンクのSS製ブレスレット、NATOストラップ付属


ムーブメント情報
キャリバー: STP7-20
機能: 時・分・センターセコンド、日付表示、コーラーGMT(独立GMT針)
パワーリザーブ: 約40時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 26
クロノメーター: なし
追加情報: 1980年代のホットスポットの都市に入れ替えたローイングブレザーズのシグネチャーブルーのワールドタイムベゼル

価格 & 発売時期
価格: 2195ドル(日本円で約31万9000円)
発売時期: すぐに
限定: あり、世界限定282本

古い機械式時計の特徴は、ほかのものと一緒に販売されていたことだ。

世の中の販売には商品のほかに広告、付帯サービス、そして、フィルムをプリントしているあいだの待ち時間をつぶすキオスクのように、すでに廃れてしまったものの、さまざまな方法・サービスがあった。生き残っているブランドや製品は、多かれ少なかれ、また高価であろうとなかろうと、時計に対するウォルター・ミティ(自身を有能だと勘違いする)的アプローチとでも呼ぶべきものをサポートするためのサービスを提供していた。機械式時計には、実用的なニーズがないにもかかわらず、我々の“こうありたい”、“こう見られたい”というさまざまな空想を満たすために存在しているのだ。

クォーツ以前が黄金時代だったとは言わないが、1969年以前もそれと同じように、狡猾で、貪欲で、道徳に反する小売業者やいわくつきのブランドはたくさんあったが、平均的な時計所有者の実用的なニーズに対する確かな答えを、大した額にはならない程度の価格で提供することを意図した製品を大量に生産している会社もたくさん存在していた。そのような会社のひとつがシュパイデル(Speidel)社だった。1970年代にテレビを見ていた人は、同社のテレビコマーシャルを覚えているかもしれないが、彼らは有名人を宣伝マンとして起用し、刺激的で記憶に残るようなジングルを見つけるとよろこんで使っていた。そこにいるのは、フリッツ・ラング監督の『M』に登場する子どもを狙った連続殺人犯のハンス・ベッケルト役、あるいは『マルタの鷹(原題:The Maltese Falcon)』に登場するエレガントで反社会的なジョエル・カイロ役を務めたピーター・ローレだ。今、彼を時計ストラップの“破壊者”として見て欲しい。彼はツイスト・オー・フレックス(Twist-O-Flex)ブレスレットで勝負に出たのか? 詳しく見ていこう。

エクスパンションブレスレットはかつての時計製造の定番だった。オメガ 1039、そしてスピードマスターに初めて採用されたスティール製ブレスレットの7077と7912など、オメガ スピードマスターを手首につけておくための最初のソリューションのひとつがエクスパンションブレスレットだったのだ(イアン・フレミングはジェームズ・ボンドに、無名のメタルエクスパンションブレスレットを合わせたロレックスをつけさせたが、ジェームズ・ボンドがすべての決断を正当化してくれるのを待っていたら、我々は1日中ここにいることになる)。フルレングスのエクスパンションブレスレット(伸縮性のある部分はクラスプに近い数本のリンクにだけ採用している)ではないが、Twist-O-Flexブレスレットがそれに近いと思った。そのとき、実はシュパイデルがまだ運営しているのかどうか知らなかったことに気づいた。でも、彼らは営業していたのだ。

これはシュパイデル社製の230186WL エクスパンションブレスレットで、シュパイデルが1959年に提供を開始したTwist-O-Flexブレスレットに似ている。そのころには会社はかなり大きくなっていて、年間数百万ドルの売り上げがあったが、会社の創業はそれよりもっと前のことだった。フリードリッヒ・シュパイデルがドイツのプフォルツハイムで起業したのは、1867年のことである。その後、ロードアイランド州プロビデンスに拠点を移し、Twist-O-Flexだけでなくそのほかの多くのブレスレットや製品を製造し、一時はメンズフレグランスの製造にまで手を広げた(テキストロンの傘下に入っていた時期もあった)。

現在、同社は2009年に買収したチェルシーキャピタルコーポレーション(Cerce Capital LLC)が所有しており、現在もTwist-O-Flexブレスレットの製造と販売を続けている。オメガのブレスレットではないものの、スピードマスターにつけると非常にシャープに見え、1950年代のスピードマスターのデザインにもふさわしい。私の7インチ(約17.7cm)の手首に装着しているのだが、手を加えなくても本当に快適だし、バネ式のエンドピースが付いているため18mmから20mmのラグスペースへも装着できる。私はAmazonで12ドル弱(正確には11.95ドルという超低価格)で購入したのだが、今まで見たレトロウォッチオタクのキットのなかでは最高の部類に入る(編集注記:現在のAmazonでは約1万円、公式サイトだと30ドル前後で販売している)。

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タフで長持ちしそうだし、ぜひ試してみて欲しい(実際、チューダー ブラックベイにもう1本つけて様子を見てみるつもりだ)。これは単なるヒップスター(流行に従う人)の皮肉なウォッチアクセサリーではない。アメリカや時計製造の歴史に残る超クールなアイテムであり、12ドルという価格を出せば誰でもそれを自分の目で確かめることができるのだ。これは素晴らしい再発見であり(父はそれ以外のものにはほとんど時計をつけなかった)、時計アクセサリーとしては最高の価値提案である。

ロンジン コンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブ

ヘリテージへのオマージュを大切にしつつも、現代的な感覚を取り入れてアップデート。その歴史にあぐらをかくことのない、進取果敢な今のロンジンらしい新作だ。

ロンジン初の名前を冠するコレクションとして誕生したコンクエストが、1954年にスイス・ベルンのFederal Intellectual Property Office(連邦知的財産庁)にその名が保護されてから今年で70周年を迎えた。これを記念して、歴代コレクションのなかでも特徴的なダイヤルデザインが異彩を放つロンジン コンクエスト パワーリザーブへのオマージュモデル、コンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブが発表された。

ロンジン コンクエスト パワーリザーブ(1959年製)。

インスピレーションの源になったのは、1959年に登場したRef.9028のロンジン コンクエスト パワーリザーブだ。この時計はダイヤル中央にふたつの回転ディスクでパワーリザーブを表示するユニークなインジケーターシステムを採用するが、これはロンジンが開発したものであり、現在でも同ブランドでのみで使用される歴史的遺産である。

新作のコンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブのダイヤルは、バトン形のパワーリザーブインジケーターを配置した中央巻き戻しディスク、64から0までの数字とドットによる目盛りを設けた外周の巻上げディスク、そして一番外側の固定されたアウターダイヤルの3つで構成されている。

ユニークなのはパワーリザーブを表示する仕組みだ。リューズ、もしくは手首を動かして回転ローターで香箱車を巻き上げると、バトン形のパワーリザーブインジケーターを配置した中央ディスクはそのままの位置で固定され、外周の目盛りディスクが64を最大値として時計回りに回転する。そして通常時は外周の目盛りディスクの0に向かってバトン形のパワーリザーブインジケーターを持つ中央ディスクのみが時計回りに回転し、パワーリザーブ残量、つまり時計の残り駆動時間を表示する。64から0までの目盛りでパワーリザーブ残量を読み取るこの外周ディスクは、任意の場所でバトン形のインジケーターと合わせることができるが、その動きは動画を見るとより理解しやすいので、こちらもぜひご覧いただきたい。

本作は通常コレクションとして展開されるもので、下地のサーキュラー装飾が透けた絶妙な色合いのアンスラサイトをはじめ、上品で温かみのあるシャンパン、精悍なブラックの3色ダイヤルをラインナップする。

歴代コレクションにも見られ、アイコニックなモチーフでもある細いサークルが彫られたアウターダイアルには、12個の立体的なファセット加工のアプライドアワーマーカー、特徴的なスカイクレーパー(超高層ビルのような形状からこう呼ばれる)形の時・分針をセット。アンスラサイトダイヤルにはローズゴールドカラー、シャンパンダイヤルにはイエローゴールドカラー、ブラックダイヤルにはシルバーカラーのものをそれぞれ合わせて、12時位置には同じカラーリングで台形型の日付表示窓をレイアウトした。

既存のコンクエスト ヘリテージコレクション同様、ケースはサテン仕上げとポリッシュ仕上げを交互に施した38mm径のステンレススティール製だ。ヴィンテージ感を高めるボックス型サファイアクリスタル風防を合わせるが、両面に多層反射防止コーティングを施すことで視認性にも配慮。3モデルはすべて新しいSS製ピンバックル付きのアリゲーターストラップ仕様で、アンスラサイトダイヤルにはグレー、シャンパンダイヤルとブラックダイヤルにはブラックカラーとすることで時計全体の統一感を確保した。


 そんな小振りなケースに収まるのは、ロンジンの新たなエクスクルーシブ自動巻きキャリバーとなるL896.5。前述の伝統的でユニークなパワーリザーブインジケーターシステムに加えてシリコン製ひげゼンマイを持つこのムーブメントは、ISO764規格が定める耐磁性基準(4800A/mの磁気にさらされても日差±30秒以内を維持)を大きく上回る耐磁性を備えており、ねじ込み式のシースルーバック越しにその動きを見ることができる。


Photo by Yuki Matsumoto

 3モデルとも価格はすべて共通で59万5100円(税込)。すでに発売を開始しているが、これに合わせてコンクエスト 初代モデル(1955年製)や、コンクエスト パワーリザーブ(1959年製)をはじめとする貴重なアーカイブモデルを展示するフェアが銀座三越 新館4階 ウォッチと阪急うめだ本店 6階 インターナショナルブティックス ウォッチギャラリーにて期間限定で開催される。

 期間中は新作はもちろんのこと、銀座三越 新館4階 ウォッチではコンクエストやコンクエスト ヘリテージコレクションの多彩なモデルをラインナップ。阪急うめだ本店 6階 インターナショナルブティックスウォッチギャラリーでは、ヘリテージにルーツを持つベストセラーコレクションが揃うという。

銀座三越 新館4階 ウォッチ ロンジン フェア
期間:2024年1月31日(水)~2月20日(火) ※アーカイブモデルの展示は2月12日(月・祝)まで
場所:銀座三越 新館4階 ウォッチ

阪急うめだ本店 6階 ウォッチプロモーション ロンジン ヘリテージウォッチ フェア
期間:2024年月15日(木)~2月27日(火)
場所:阪急うめだ本店 6階 インターナショナルブティックス ウォッチギャラリー

ファースト・インプレッション
今回、オリジナルと新作を同時に見る機会が得られたので断言したい。新作は決して忠実な復刻を狙ったモデルではない。プレスリリースのなかで、“画期的モデルにオマージュを捧げ、デザインとテクノロジーを進化させたのが、この新作”と評しているが、まさにその通り。オリジナルに敬意を払いつつも、現在でき得る最善を盛り込んだ挑戦的なモデルだ。


Photo by Yuki Matsumoto

 まずはダイヤル。新作はオリジナルの特徴をよく捉えている。6時位置のコレクション名を表すフォントは、オリジナルにほぼ忠実で見事な再現度である。一方で、ボンベダイヤルのカーブは新作のほうがより強く、オリジナルではダイヤルに彫られた細いサークルを分断して埋め込まれるようにアプライドインデックスがセットされているのに対し、新作ではインデックスが溝の上をまたがり浮いているように見える。

 加えて、新作では彫られたサークルにも処理が施され、インデックスの立体感がより強調されている。時・分針、そして3・6・9時位置の一部にもスーパールミノバ®を塗布することで暗所でも見やすく視認性が高い。また新作ではオリジナルになかったハック機能と日付の早送り機能が実装されており、実用性が確実にアップデートされている。

 あえて難点を言えば、ラグ幅が19mm(オリジナルは18mm)とスタンダードな数字ではないこと、それと特別な工具なしに簡単にストラップ交換ができるイージークリックが付いていないところだろう。頻繁にストラップ交換をしたいという人は注意しておきたいポイントだ。


左が新作、右は元となったオリジナルだ。並べて見比べると違いがよくわかる。Photo by Yuki Matsumoto

 オリジナルのケース径が35mmであるのに対して、新作は38mmだ。ヴィンテージ好きからはオリジナルと同サイズにして欲しいという声が聞こえてきそうだが、筆者が新作でもっとも感心したのは、その優れたバランスである。確かに3mmほど径が大きくなっているため、手首に乗せると新作のほうが存在を主張する。パッと見のサイズ感はかなり大きくなったが、ラグ・トゥ・ラグは新作が約45mm、オリジナルは約43mmで、ケース厚は前者が約12.3mm、後者が約10mm(新作のケース厚のみ公式による。それ以外は筆者の計測値)。新作はラグを太く短くすることで、オリジナル全体のサイズ感から逸脱しないように配慮されている。

 また、どちらも手首に巻いてみたが、重量バランスがほぼ同じだったのも感心したところだ。これは筆者の私感だが、オリジナルはクローズドケースバックであるのに対して、新作では重いサファイアクリスタルのシースルーバックとすることで手首側の重量が増して時計の重心を下げ、フィット感を高めているように感じた。本作で採用されているシースルーバックは単にムーブメントを見せるというだけでなく、フィット感を高めるのにも効果的で意味のある仕様なのだと思う。


Photo by Masaharu Wada

 ちなみにシャンパンとブラックダイヤルは下地の仕上げが見えないマットな質感だが、これも針とインデックスの存在感を強調し、視認性を高めているようだ。なお、アンスラサイトダイヤルはオリジナルのような下地のサーキュラー装飾が感じられる質感を持つため、オリジナルの雰囲気が好みに近いならアンスラサイトダイヤルをおすすめしておく。

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基本情報
ブランド: ロンジン(Longines)
モデル名: コンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブ(Conquest Heritage Central Power Reserve)
型番:L1.648.4.78.2(シャンパン)、L1.648.4.62.2(アンスラサイト)、L1.648.4.52.2(ブラック)

直径: 38mm
厚さ: 約12.3mm
ケース素材: SS
文字盤色: シャンパン(L1.648.4.78.2)、アンスラサイト(L1.648.4.62.2)、ブラック(L1.648.4.52.2)
インデックス: ファセット仕上げの12のアプライドインデックス(L1.648.4.78.2は2Nイエローゴールドカラー、L1.648.4.62.2は5Nローズゴールドカラー、L1.648.4.52.2はシルバーカラー)
夜光: 時・分針、3・6・9時位置にスーパールミノバ®
防水性能: 5気圧
ストラップ/ブレスレット: SS製バックル、L1.648.4.78.2とL1.648.4.52.2はブラックアリゲーター、L1.648.4.62.2はグレーアリゲーターストラップ

ムーブメント情報
キャリバー: L896.5(ロンジン エクスクルーシブ)
機能: 時・分表示、センターセコンド表示、12時位置に台形型の日付表示、ダイヤルセンターに2枚の回転ディスクによるパワーリザーブインジケーター
パワーリザーブ: 約72時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万5200振動/時
石数: 21
クロノメーター認定: なし
追加情報: シリコン製ひげゼンマイ採用

価格 & 発売時期
価格: 59万5100円(税込)