しかし時計を選ぶなら、間違いなく“赤”が欲しくなるだろう。

いいレストランを見つけることは、秘密を発見するようなものだ。あまり多くの人に教えたくないが、知っていることに価値があるからこそ、その秘密を守る楽しさがある。F.P.ジュルヌも同様であり、彼らのファンもまた、まさにその楽しみを共有している。しばしば顧客は公式発表前に新作の情報を耳にすることがある。ジュルヌ愛好家にとってこの時計は“隠されているけれど、ほとんどの人が知っている秘密”のひとつかもしれない。そして今回、ひっそりとリリースされてすでに届けられているものの、正式には発表されていなかった時計についての公式情報を初めてお伝えする。

これはブティックでは購入できないF.P.ジュルヌのエレガントだ。フランソワ-ポール(François-Paul)氏やアメリカのゼネラルマネージャーであるピエール・ハリミ(Pierre Halimi)氏、そしてほかの誰かに頼んでも割り当てをもらうことはできない。しかし、もし昨年ジュネーブに移り住み、豪華で贅沢な、そしていまやミシュラン星も獲得した料理を楽しむ食生活に身を投じていたなら、この時計を手にするチャンスが巡ってきたかもしれない。この時計は、今年最も楽しくて“美味しい”話題のひとつだ。名前はF.P.ジュルヌ エレガント “レストラン(Le Restaurant)”だ。いや、少し話を戻そう。最信頼性の日本スーパーコピー時計代引き専門店!正確にはF.P.ジュルヌ レストランだ。

その名のとおり、このレストランはフランソワ-ポール・ジュルヌ氏と時計製作をテーマにしたもので、2023年11月1日に正式オープンした。ジュネーブのローヌ通りに面し、川の南側に位置する歴史的な建物のなかにある“レストラン”は、期待どおり洗練された雰囲気を漂わせている。ジュルヌや時計製造に関する演出は控えめだが、ジュルヌ氏によるムーブメント設計図や、ジュルヌブランドのアクセサリー(手ごろなものから高価なものまで)がさりげなく配置され、各テーブルには著名な時計師の名前が記されたプレートが置かれている。まさにこのレストランは、時計師による時計師とその顧客のための場所と言える。

レストランの壁には、17世紀の天文時計“ジョヴァンニ・ブルジェル ヴェネツィア”サイン入りの時計が掛けられていた。

F.P.ジュルヌ アラームクロック・スヴラン。

1912年、元薬剤師のアドルフ・ナイガー(Adolphe Neiger)はこの建物内に(この時点ですでに築60年以上が経過していた)ドイツビール専門のビアホールを開業し、バイエルンと名付けた。しかしここで起こった出来事は特別なものだった。1919年、設立間もない国際連盟が、バイエルンから徒歩数分のサル・ド・ラ・レフォルマシオン(Salle de la Réformation、ジュネーブにかつて存在した多目的ホール)で定例会議を開いていたが、会議後に集まる場所がなかったため、このビアホールが彼らのシュタム(stamm、スイスで“行きつけの場所”を意味する用語)となり、世界でも有数の影響力を持つ人々が集う場となった。1942年、このビアホールは現在の姿となる暗いオーク材のパネルと鏡を取り入れた装飾を採用し、ジュネーブ市によって歴史的に保護された内装となっている。そして国際連盟創設からちょうど100年後の2019年3月、フランソワ-ポール・ジュルヌ氏はレストランを閉鎖し、シェフのドミニク・ゴーティエ(Dominique Gauthier)氏のもと、大規模な修復を経て再びオープンさせた。

レストランで2度(ランチとディナー)食事をしたのだが、シェフのゴーティエ氏はまさに天才だと言える。ゴーティエ氏は30年間、ボー リヴァージュ内のル・シャ ボテで料理長を務め、ミシュランの星を獲得した。F.P.ジュルヌでのコースディナー料理は、まさに素晴らしい内容だった。“エレガント”メニューより少しボリュームがある“スヴラン”を選んだが、今思えば“アストロノミック”はさすがに量が多すぎただろう。


いくつかの前菜を楽しんだあと、ピエール・ガレイのズッキーニの花を使った料理をいただいた。ズッキーニの花にはナスとブラータチーズが詰められ、バターで柔らかく仕上げられた鶏肉も絶品だった。最後にシャルトリューズでフランベしたスフレで締めくくった。一方で、フランソワ-ポール氏お気に入りの料理を楽しむこともできる。たとえばリニョン農場の卵を使った、ソフトでカリッとした食感の卵料理(キャビアは追加で70スイスフラン日本円で約1万2000円)や、シメンタール牛をマダガスカル産のワイルドペッパーとグリルしたエシャロットとともにいただくこともできる。レストランが開業初年度でミシュランの星を獲得したのも納得だ。さらにスタッフの手元に目を凝らすと、赤いダイヤルの時計の存在に気付くだろう。

F.P.ジュルヌ エレガント “レストラン”のアイデアは、もともとスタッフ用の時計として始まった。とはいえ、ウェイターとして働けば2週間で辞める際にエレガントがもらえるなどと期待してはいけない。仮に本当にスタッフ専用の時計のままだったとしても、それはそれで十分におもしろいアイデアであっただろう。しかしバイエルンが、かつて国際連盟のシュタムとなったように、F.P.ジュルヌ レストランもブランドの顧客や時計業界全体にとってのシュタムとなっている。私がディナーに訪れた時には、コレクターやセカンダリーマーケットの大手ディーラーが、友人や顧客と食事を楽しんでいる姿を見かけた。それが私が認識できた顔ぶれだけであったことを考えると、エレガント “レストラン”がスタッフ専用の時計として留まれるはずがなかったのも納得できる。ウェイターの手元から買い取ろうとする人が続出していただろう。つまり、この時計が購入可能になったのはある意味で必然だったが、もちろん簡単には手に入らない条件がある。

このエレガントは単なる赤いダイヤルを持つだけでなく、定番の“Invenit et Fecit(発明し、製作した)”の代わりに“Le Restaurant”の文字が書かれている。これだけでも十分におもしろい趣向だ。F.P.ジュルヌは赤いダイヤルの時計を過去にも手がけており、その一例がサンティグラフ・スヴラン Fの特別仕様、通称フォーミュラ・ジャン・トッド”エディションである。これはフェラーリとF1界の伝説、そしてジュルヌ初期からの友人であり支援者であったジャン・トッド(Jean Todt)氏のために製作されたもので、きわめて限定的なリクエストモデルであった。ほかにもミハエル・シューマッハ(Michael Schumacher)氏が所有していたヴァガボンダージュ1のユニークピースなどがあるが、この時計の赤いダイヤルは、下にあるInstagramで見られるロッソ・コルサ色と完全に一致するわけではなく、少し異なる色味を持っている。

本モデルのレッドダイヤルはどちらかといえばマット調のレッドで、完全にバーガンディというわけではないものの、F40で見られる赤よりもややそちらに近い色合いだ。またストラップも同じ色で統一されており、スポーティかつカジュアルな印象を与える。さらに、暑く汗ばみがちで多少汚れが付きやすいキッチンのような環境にもよくなじむデザインだ。ただしエレガントのオーナーが季節や気分に合わせてストラップ(それとチタリットのデプロワイヤント)を交換するのは一般的であるため、少なくともこのケースにおいては、ストラップが時計の印象をすべて決定するわけではない。

基本的には48mmのチタリット エレガントとほぼ同じであり、冷やかし半分で“ただのクォーツウォッチ”と呼ばれるかもしれない。だが毎年エレガントシリーズ全体で約500本が製造されるにもかかわらず、10年以上のウェイティングリストがあるとされるエレガントは、もはや“ただのクォーツウォッチ”以上の存在だ。

F.P.ジュルヌがどの時計にも“スイス製”と表示しないにもかかわらず、エレガントはその基準に合致している。実際、数年前にこの時計のクォーツムーブメントもスイス製だと知って驚いたものだ。理論上、電子製品で知られる遠方の国に製造を外注することも(簡単とはいかないかもしれないが)可能だったかもしれないが、あえてスイスで製造している。時計のコンセプトは、実際の構造の複雑さに反してシンプルだ。時計には回転するセンサーが内蔵されており、35分間着用されないと判断すると針がその場で止まり、内部メモリが時刻を記憶し続ける。そして時計を再び着用すると、センサーが動きを検知し、モーターが作動。針が最短ルートで現在の時刻に戻るという仕組みだ。この機構によりバッテリー寿命は日常的に着用して8~10年、スタンバイモードでは最大18年に達する。

エレガントの“スリープ”モードに用いられる重り。
エレガントの最後の“見せ場”はおなじみの夜光ダイヤルだ。鮮やかな赤いダイヤルながら、UVライトを当てると自社製のダイヤルが美しく発光し、これまで見たどの類似ダイヤルよりもムラが少なく均一に光り輝く。この点は、F.P.ジュルヌの“夜光チーム”にとって大きな誇りである。彼らはブランドのレ・カドラニエ工房内に、まるでスカンクワークス(秘密の開発部門)のようなラボを構えている。彼らがてがける他ブランド向けの仕事も非常に興味深いものだが(そのブランド名は残念ながら言えない)、私の言葉を信じていただきたい。

さて、この時計を購入するための“落とし穴”(いや、だからこそ私はこの時計とその背景が大好きなのだが)について説明しよう。フランソワ-ポール氏は単純な方法で満足する人物ではなく、この時計はVIP顧客に提供されるべきだと決めたが、そのVIPが必ずしもF.P.ジュルヌの顧客である必要はなかった。そう、新しいエレガントを手に入れたいのであれば、ワインを数杯と素晴らしい料理をともにしながら、ある人物と親しくならなければならなかった。その人物とはシェフのドミニク・ゴーティエ氏である。時計の割り当てはすべて、F.P.ジュルヌ レストランのVIP顧客のためにゴーティエ氏を通じて行われ、最終的な承認はフランソワ-ポール・ジュルヌ自身が下していた。価格や製造本数は非公開であったが、これはすべて過去の話である。というのも、時計はレストランの1周年に先立つ10月下旬にすべて割り当てが完了し、ひっそりと顧客に届けられていたからだ。

このレストランVIPルールに例外があったかって? おそらく多少はあっただろうが、できるだけ少数であって欲しいものだ。この楽しい話を掘り下げるなかで聞いたのは、この時計はレストランを支援する人々のためのものであり、新しいエレガント “レストラン”を手にする顧客の多くは、ジュネーブ在住か、頻繁にビジネスで訪れる人々に集中しているだろうということだ。それは実に公平なことだと思う。

数週間前、私はソーホーにあるF.P.ジュルヌブティックで、ブランドをほとんど知らない人々を対象にトークイベントを開催した。F.P.ジュルヌを購入できる余裕がある人の多くは、十分なお金さえあれば好きなものが手に入るという考えに慣れている。だが、F.P.ジュルヌはそうはいかない。たとえば、クロノメーター・ブルーは需要が高まりすぎたために、現在は名前すらリストに載せてもらえない状況だ。またもっとも手ごろなエレガントに関しても、リストに載るのは難しいだろう。個人的にはそれでまったく問題ないと思っている。ただ時計が欲しいだけなら、セカンダリーマーケットで買うのもいい選択肢だ。こうした時計は単なる物語の一部ではなく、ワインのボトルを囲んで語られるジョークやディナーを通じて築かれる友情、そして最後に手に入るユニークな時計としての意味を持っている。お金で買えるお土産をお探しなら、F.P.ジュルヌのムーブメントの廃材を使った6本セットのステーキナイフはいかがだろうか? このナイフも、そもそもムーブメント部品の製造コストが高いため(さらにナイフ職人の製作費も加わるため)決して安価ではない。ある顧客は自宅用に24本をオーダーしており、その価格はなんと1セットあたり4100スイスフラン(日本円で約72万円)にものぼる。